◎失速の県内地価 重要度増す2014年対策
今年七月一日時点における石川県の地価調査結果は、景気の後退局面入りを敏感に映し
出している。景気の悪化に伴って、県内の地価改善をけん引してきた金沢駅周辺も勢いが鈍り、「新幹線効果」が市中心部などに十分及ばないうちに、再び地価の下落率が拡大する兆しがある状況は、効果的な景気対策の早期実行と、人や投資を呼び込む魅力的な地域づくりを急ぐ必要性を示している。県や金沢市など各自治体は、北陸新幹線金沢開業に備える「二〇一四年」対策のピッチを上げてもらいたい。
今年三月に発表された一月一日時点の公示地価は、金沢市内の商業地平均が十六年ぶり
に上昇に転じた。また、同じく一月一日時点の調査で七月公表の路線価も、県内標準宅地の平均額が十六年ぶりに下げ止まり、バブル崩壊後の地価の下落にようやく歯止めがかかる期待感を抱かせた。しかし、両調査の発表前から既に景気は停滞しており、今回の基準地価調査に正直に表れたといえる。
戦後最長の景気拡大は、内需に点火する前に終わり、それに呼応して、改善傾向が続い
ていた地価も下げ止まる前にまた下落幅が拡大し始めたということであり、地方でいつまでも地価下落が止まらない現状を、政府はもっと深刻に受けとめなければなるまい。
県内では商業地の下落率の縮小がなお続いていることが救いとはいえるものの、新幹線
開業をにらんだ金沢駅周辺の開発、投資に一服感がみられるのが気掛りである。自治体にとっては、まさに地域づくりの踏ん張りどころであり、二〇一四年対策の重要性が一段と増していると認識してほしい。
新幹線の開業効果を最大限に引き出すための県の戦略会議が先に設置され、県は年度内
にアクションプランを作る予定であるが、金沢駅の駅舎整備や無電柱化による美しい県都づくりなど、限られた期間内になすべきことは山積している。また、企業の設備投資の動向がストレートに地価を左右することは、コマツの例があらためて示している。企業誘致や新たな産業創出などの産業政策にもさらに力を入れてもらいたい。
◎たばこ増税論議 健康増進の視点加えたい
来年度税制改正の焦点の一つになっているたばこ税の増税で、厚生労働省の研究班が、
一箱千円なら今後十年で約九兆円、五百円でも約三兆九千億円の税収増が見込めるとの試算を公表した。たばこの大幅値上げをめぐっては、消費量が減るため税収は減少するとの試算も相次ぎ、評価は真っ二つに分かれているが、今のままでは不毛の議論に陥る可能性がある。ここは健康増進の視点を加え、喫煙率を減らすという政策実現の手段であることをもっと前面に打ち出す必要があろう。
一箱千円にしろ、五百円にしろ、三百円前後のたばこをこれだけ思い切って引き上げる
のは前例がなく、皮算用も喫煙率がどこまで下がり、消費量がどの程度、減少するかという前提によって大きく変わってくる。増税効果の判断は極めて難しい面がある。
いずれにせよ、大胆な値上げは喫煙者を禁煙に導く最も効果的な方法ではある。期待し
たほど税収が増えなかったとしても、それは喫煙者が確実に減った証しであり、医療費の抑制につながる。やってみる価値はあるだろう。たばこ増税の一番の目的は直接的な税収を増やすこと以上に、健康増進にあることを認識したい。
厚労省研究班の試算は、従来の小幅値上げが消費実績に与えた影響をそのまま当てはめ
るのではなく、値上げでいったん禁煙しても再び喫煙する人がいることなども考慮したのが特徴だ。税収減になるという大学研究者らの試算では、禁煙の意思を示した人のほとんどが成功することを前提にしていた。今回の厚労省の試算はそうした主張に反論した形だが、喫煙者の意識の変化を予測するのは容易でないことも確かである。
「たばこ一箱千円」については日本財団の笹川陽平会長が提案し、超党派の「たばこと
健康を考える議員連盟」が発足するなど一気に論議に火がついた。だが、実際には消費税先送りのためとか、消費税を上げるまでのつなぎ財源であるとか、税制改革と絡めた思惑が入り乱れている。財源論に傾斜しすぎては、まとまる話も複雑になるばかりである。