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【健康】

乳幼児に呼吸器感染症 RSウイルス 早産児は要注意

2008年9月19日

 毎年秋から春に流行するRSウイルス感染症。乳幼児が二歳までに一度はかかるといわれる呼吸器の病気で、特に在胎三十五週以下で生まれた早産児がかかると、細気管支炎や肺炎などを起こし、入院や最悪の場合は死に至るケースも。流行期を前に危険性や予防法をまとめた。 (福沢英里)

 RSウイルスは乳幼児に呼吸器感染症を引き起こす原因ウイルスの一つ。成人がかかると軽い鼻風邪程度で済むが、乳幼児がかかると、せき、鼻水などの風邪の症状から、気管支炎や肺炎などの下気道炎へと重症化しやすい。

 特に重症化するリスクが高いのは、在胎三十五週以下の早産児や慢性肺疾患など、生まれつき呼吸器や心臓に病気を持つ乳幼児。異物が体内に侵入したときの免疫システムや気道、肺が未発達であるのが主な理由だ。

 八月末に名古屋市で開かれた日本外来小児科学会でも、RSウイルス感染予防をテーマにしたセミナーが開かれた。座長を務めた倉敷中央病院(岡山県倉敷市)の渡部(わたべ)晋一小児科部長は「早産児の中でも比較的元気な在胎三十三−三十五週で生まれた子どもが、予防対象から見落とされやすく問題になっている」と指摘する。

 冬期に流行するインフルエンザとはどう違うのか。潜伏期間一−三日の後、発熱や関節症状などが三−五日続き、回復するのがインフルエンザ。RSウイルスは四−五日の潜伏期間の後、上気道炎が二−三日、下気道炎が一週間以上続くなど、回復まで二、三週間かかるのが通常だ。

 また、インフルエンザには治療薬タミフルがあるが、RSウイルスには治療薬はなく、人工呼吸管理や気管支拡張薬の投与など対症療法しかない。

 そこで予防が重要。早産児で流行期に十二カ月齢以下の新生児などには「シナジス」と呼ばれる抗体を月一度、注射する。シナジスは体内に侵入したウイルスと結び付き、ウイルスの増殖を抑える。完全に防ぐのは難しいが重症化は予防できる。

 持続的な免疫ができにくいため「毎年六−八割の小児が再感染する」と渡部部長。乳幼児期にRSウイルスによる下気道炎にかかると、思春期にかけて喘(ぜん)息などの慢性的な呼吸器障害を起こしやすくなることが最近分かった。

 ウイルスの感染力は強く、皮膚や衣服に付いて、長い場合六時間ほど感染力を保ち、接触感染する。家庭での予防には、風邪をひいた家族との接触、人ごみを避ける、喫煙者に近づかない、手洗いとうがいの励行を心がけたい。

 セミナーでは、地域連携の必要性も議題に。そもそも冬の寒い時期に毎月通院するのは、子どもにも家族にも大きな負担となる。地域のかかりつけ医でシナジスを注射できるように、連携に取り組む病院も出てきた。

 「小児も診る内科医や一般の産科医がRSウイルスの怖さ、予防の手だてがあることを知ってほしい」と渡部部長。「周産期センターなど大きな施設では患者が集中してとても対応しきれない。かかりつけ医との連携はなくてはならない」と訴える。

 

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