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私たちは何ゆえに結婚するのだろう(2)

イラスト・伊藤理佐
イラスト・伊藤理佐

◇未婚でも産む北欧、中絶を選ぶ日本の女性

 一方で、婚外子が5割近くを占めるスウェーデン(01年55.3%)やデンマーク(同44.6%)などでは、結婚という制度によらなくても一緒に暮らし、子どもを産み育てているといいます。これらの国々で婚外子の割合が高いのは、結婚していなくても法律的な平等が保障され、社会的信用が失墜することもないなどの点にあるのかもしれません。生まれてきた子どもについても同様で、社会が認知し、嫡出子と同じような社会的・経済的サポートを受けられるというのは大きいですよね。

 結婚はしたものの男性は企業戦士と化し、実質「母子家庭」となる日本とは大きな違いではないでしょうか。ちなみに日本の婚外子率は1.7%。少子化の一因はここにもあるのではないでしょうか。

 つい先だっても、26歳の女性が妊娠したと相談にやって来ました。相手は28歳ですし、大学時代につき合いだしてから、すでに5年近くが経過していたのですから、もはや選択肢は一つしかないと僕は確信しました。しかし、彼女から返ってきた言葉は「中絶」。

「だって、彼が自分と生涯を分かち合う伴侶であるかどうかに自信が持てない」と言うのです。僕自身は、人工妊娠中絶を女性の健康と権利として位置づけ、前向きにとらえているつもりですが、その答えにどうも釈然としません。「今はわからないけれど、将来は結婚する可能性があるのだろう。としたら、妊娠がわずかに早まっただけ、とは考えられないだろうか。いつか2人の間に子どもができた時、『あなたには、この世に生を受けなかったけれどお兄ちゃんかお姉ちゃんがいたのよ』なんて言いたい気持ちが起こらないとも限らない。しかも、誰が強要したわけではなく、セックスしているのは君自身の選択じゃないのか」と興奮気味に迫ったのですが、あっさりと却下される始末です。

◇変わる結婚生活への意識 あなたは満足ですか?

 最近、ちまたで耳にする離婚の原因は性格の不一致と価値観の違い。「性格の」と書きましたが、じつはセックスの不一致である可能性が高いようで、身近に生活している相手の欲求を十分に汲み取れないで身勝手な行動をとり続けていると「ハイ、それまでよー」となってしまうのです。お宅ではいかがですか?

 9月29日、内閣府の調査で「夫は仕事、妻は家庭」に反対する人が初めて半数を超えたことが明らかにされました。この質問は92年の調査から数えて今回で5回目。92年には賛成60.1%、反対34.0%だったのですから、賛成の割合が年々下がっていることになります。従来型の結婚生活をひょっとして夢見て来られた読者の皆々様。あなたは思いどおりの結婚生活を営んでいらっしゃいますか。「ん?」と首を傾げられた方、どこが納得いかないのですか。

 そういう僕自身も50代半ばを超えた今、若いころに思い描いた結婚の条件が色あせてきた感は否めません。性的能力は衰え、子どもたちも巣立ち、マンネリ化しかねない家庭生活。だからまかり間違うと「熟年離婚」などという物騒な事件が起こるのかもしれません。くわばらくわばら。

 人の恋路をネタに原稿を書くのもなんですが、とにかく「理佐ちゃん、ご結婚おめでとう。お幸せに」。

2007年11月29日

北村邦夫(きたむら・くにお)
日本家族計画協会クリニック所長。1951年生まれ。自治医科大医学部卒。日本人の性を研究して30年の「性の語りべ」。『幸せのSEX』『ピル』『カラダの本』など著書多数。
※「スローライフ スローセックス」は『毎日らいふ』(毎日新聞社刊)に連載中。
 

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