社会保険庁がコンピューターで管理する年金記録の一部が、入力ミスで原簿(紙台帳)と一致していない問題で、社保庁は17日、10年度から国民年金と厚生年金の紙台帳約8億5千万件すべてとコンピューター上の記録を照合する方針を明らかにした。これまでは、本人から申し出があった場合に照合する方針だったが、批判を受けて転換した。
同日あった自民党厚生労働部会などの合同会議で報告した。社保庁が行った厚生年金記録を約2万件抽出した調査では、紙台帳からコンピューターへの記録の入力ミスは1・4%あった。単純計算すると厚生年金全体で受給漏れの恐れのある記録は推計約560万件にのぼる。国民年金の抽出調査でも、0・13%の記録で年金受給額にかかわるミスが見つかっている。
社保庁はこれまで「時間と金がかかる」として10、11年度は申し出のある場合のみ照合、12年度以降は「受給者について計画的に照合する」としていた。
だが、自民党は、厚生年金のミスが想像以上に多かったことをふまえ、きめ細かい対応が必要と判断。「最後の1人まで正しい年金を支給する」という政府・与党の公約を達成するためにもすべての記録をきちんと照合するべきだ、との主張が相次ぎ、社保庁は方針を転換した。
09年度中にすべての紙台帳を画像ファイル化して、基礎年金番号で検索できるシステムを整備。10年度から申し出のある場合に加えて、受給者、加入者の順にすべての記録を照合する。作業期間は10年間、費用は1900億〜2300億円かかると見込まれる。人員も年間約5800〜7100人が新たに必要になる。このため、社保庁の後継組織「日本年金機構」の人員計画(正規・有期雇用職員で計1万4470人程度)は、大幅な見直しを迫られる可能性もある。
厚労部会などは作業を早めるため、08年度補正予算にシステム整備費として200億円程度を盛り込むよう求めている。