事故原因究明・再発防止で試案−全医連
全国医師連盟(黒川衛代表)は9月18日、医療事故の原因究明・再発防止に関する試案を公表した。内閣府の外局に創設する「医療安全調査委員会」(医療安全調)が、医療関連死や医療行為に伴う健康被害の原因究明と再発防止策の検討を担うなどの内容で、被害者救済策の一環として、「医療被害補償基金」の設立も提案している。全医連は、試案の骨子を1日に公表しているが、今回は制度の骨格について、より詳細に考え方を示した。全医連では、厚生労働省案や民主党案への反対意見にとどまらない医療側からの初の本格的な対案だとしている。
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試案によると、医療安全調は医療関係者の責任追及ではなく、医療安全の向上を目的に、内閣府の外局に創設する。さらに、全国の高裁の所在地と「人口100万人以上の政令指定都市」に「地方委員会」を設置。地方委員会の下に設ける「調査チーム」が事例ごとに調査を実施する。医療安全調や地方委員会、調査チームには医療従事者や法律関係者、有識者らが参加。調査チームは、死亡時画像病理診断(Ai)や解剖結果、関係者の意見、診療録などを基に議論し、再発防止策を盛り込んだ調査報告書をまとめ、患者や遺族、医療機関などに提出する。
試案では、医療安全調や地方委員会に、医療機関への立ち入り調査や診療録の提出命令、医療従事者からの聞き取り調査などをする権限を付与することも打ち出した。
また、医療過誤による死亡が否定できない場合、医療機関や医療従事者に医療安全調への24時間以内の届け出を義務付け、医療安全調は患者側からの調査依頼にも応じる。調査の結果、医療行為が「医学的に大変不適切で刑事手続き相当」と判断した場合には、捜査機関に通知するとしている。
一方、事故調査と刑事手続きの関係を整理するため、特別法を制定し、▽医療に関する業務上過失致死傷罪を「親告罪」に位置付け、「刑事手続き相当」とする医療安全調からの通知と、遺族による告訴の両方を起訴要件にする▽患者や遺族から被害届があった場合、捜査機関は事件を医療安全調に知らせ、医療安全調が「刑事手続き相当」と判断するまでは捜査を停止する―ことを規定するとしている。
医師法21条については、医療関連死の警察への届け出対象を、過失犯を除く刑法犯によるものに限定するよう改正を提案した。
また、「医療被害補償基金」の設立も提案。医療安全調が医療側に過失がないと認定した場合、患者や家族は、医療機関への損害賠償請求権など「一切の請求権」を放棄することを条件に、法令で定める額を補償金として受け取ることができるとしている。
一方、調査の結果、医療側の過失が認められた場合には、▽医療機関に損害賠償を請求する▽損害賠償請求権を放棄した上で補償金を受け取る―のどちらかを選択できるとした。
更新:2008/09/18 16:46 キャリアブレイン
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