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保管庫

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賢者の贈り物

父は農家の出だ。

山間のおよそ30戸程度の小さな集落の一番端に祖父の家はあった。
今で言う限界集落のような村、といったらわかり易いだろうか。
父は次男だったので子供のころから邪魔者扱いだった、とよく話していた。
お前は出て行くのだから、と常に母親からいわれ、長男とは扱いに格段の差があったという。
だから母親のことは嫌いだった、いや、母親が自分を好いてくれなかった、ともこぼしていた。

とはいえ私が物心ついた頃は当然父も独立していたのでそのような確執は一見なく、
繁忙期にはあちこちの親戚が手伝いに集まらねばならなかったので当然我が家も総出で
手伝いに行っていた。

今回は最も敬愛する祖父の話。

祖父は皺の奥まで日に焼けた小さな男だった。
ごつごつした手と、まんまるごま塩の坊主頭。にっこり笑うとお地蔵さんのようだった。
いつも無口で、農作業が終って親戚中があつまって酒盛りが始まると、
囲炉裏端の定位置にちんまり座って黙ってコップ酒をちびりちびりと飲んでいた。
いとこ達と大騒ぎしてふと気がつくといつも祖父は消えている。

「太陽といっしょだからね。」と母が教えてくれた。

どんなに早く目が覚めても祖父はもういなかった。日の出前にごそごそ起きだして
私たちが朝食の仕度を始めた頃に一仕事終えて戻ってくる。
そしてたとえお祭りの日であっても日が暮れるとすぐ寝てしまうのだ。

作物のこと、植物のこと、昆虫のこと、山のことで祖父が知らないことはなかった。
「あれはなあに?」「これはどうすればいいの?」
一番短い言葉で何でも教えてくれた。

稲刈りの頃、山肌にある小さな田んぼ目指してくねくねとあぜ道をたどっていたとき、
曲がり角に大きな蛇がとぐろをまいているのに遭遇した。
びっくりして声を上げると、「青大将だ、じゃましちゃ悪い」といって祖父は違う道をとった。
しばらく歩くと足元でかさかさ草が揺れた。祖父は黙って草むらに入っていき、
戻ってきたときには蛇の首を押さえていた。
「このあたまが三角なのはまむしだから。毒があるから気をつけるように」
そういうと持っていたかまで首を切り落とし、残った胴体をきゅ、と結んで草むらに放り投げた。
小さい私は二度も蛇に遭遇して固まっていたが、かまわず祖父は上っていったので
わたしはあわてて追いかけた。小さな祖父は角を曲がるとすぐ見えなくなってしまうのだ。

冬の間は農作業はないけれど、雪かきを手伝いにやはりよく祖父の家に行っていた。
玄関を開けると祖父はコンクリートの土間に腰を下ろして、稲藁を木ずちでとんとんと叩いていた。
藁を柔かくして草鞋やわら沓を編むのだ。みのやかさ、かごなども冬の間に作っておく。
ごつごつした指が藁をたばね、沓を編み上げてゆく様は魔法のようだった。
もう少し大きくなったら教えてもらおう、と心に決め、邪魔しないように正面に座って
じっと見ているのが好きだった。

ある冬、祖父は私用にわら沓を編んでくれた。あまりに嬉しく、履くのがもったいなかったので
ガラスケースにいれて大事にしまっておいた。
祖父が亡くなってから取り出してみると、もらったときには気がつかなかったのだが
小さな絣のリボンがついていた。おそらく祖母のもんぺをほどいた生地だろう。
祖父は私を好いてくれていたのだろうか、と少し嬉しくなった。

私が中学生の冬に風呂場で倒れ、祖父は帰らぬ人となった。
救急車ではこばれた祖父の病室に叔父叔母、私の両親らが集まって最後を看取った。
父は7人兄弟だ。病室に入りきらない、という理由で私は連れて行ってもらえなかった。
豪快な叔母が最後に祖父の耳元で叫んだという。「何か言い残すことはないかね」
祖父は目を見開いてこう答えたそうだ。「おお。屋根でも柱でも好きなもの剥いでもっていけ」

土地も田畑も祖父のものではない。建てた家だけが祖父のものだった。
農地改革で権利を与えられたが「いままで世話になった地主さんに悪いから」
という理由で断ってしまったという。祖父は最後まで小作人だった。
やはり人の持ち物の山に二本だけ杉の木を植えさせてもらっていた。
「おまえが大人になる頃はこの杉はひと財産だ」
といって下草を刈って手入れしていたのを思い出す。

祖父は貧しかった。何も持ってはいなかった。
しかし自分の力で人生を切り開き、7人の子を設け倍以上の孫を得、
ささやかな一族を束ねる長として生をまっとうした。
生きていく為の知恵と愛情はあふれるほど持った人だった。

私は祖父が新聞を読むのを見たことがない。
おそらく読むことも書くことも習うことはなかったのだろう。

知恵と知識は違う。
知識があっても知恵がなければそれを真に生かすことはできない。
知恵者は同時に賢者でもあるが知識人にかえって愚者が多いのはその所以だ。

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行動を起こされた方の書き込みを拝見し、勇気を持って書き込みます。

もう耐えられません。皆さん、助けてください。

私はD氏にレスを返したことは一度もありません。
初めのころ、掲示板の使い方が良く判らず、投稿するときは
そのカテの一番終わりの投稿に対し返信する、という形で書いていました。
ですので便宜上D氏に返信している形になっている投稿もあるかもしれませんが
内容を読んでいただければD氏への返信ではないことは明らかです。
にもかかわらず私が投稿するたびに例のまとめ、とやらを投稿してきます。

私の投稿に対し、該当のトピ内で批判するのはかまいません。
また、D氏が新たにトピを立ててご自分の意見を世に問うのならば
何もいいません。
もし、D氏がトピをたてるならば私も直接聞きたいことは山ほどあります。

しかし、現在のようにHNを変え、関係のないほかのトピにも出て行くのは
やりすぎです。

わたしは(再三書きましたが)ネット初心者です。パソコンにも詳しくありません。

2008/8/10(日) 午後 11:31 [ kyoumohared ]

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やり方を教えていただいたので、ヤフーに対し、
「自分に対し、はっきり悪意を持っていると書き込む人物がいて、
現実に被害を受けるのではないかと恐怖におびえている。なんとかして欲しい」
といくつかの書き込みに対し、違反報告を行いました。
すべて別のHNでしたが、昨日ヤフーがその投稿を削除してくれました。

この投稿を書くのも随分迷いました。でも、もう私は今の状況に耐えられません。
皆さん、助けてください。
D氏は、私に悪意を向けています。
私が耐え切れずにカテの皆さんにまで助けを求めているということも、
是非同時にヤフーに訴えてください。

これで状況が改善されるのを祈っています。

http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=SP&action=5&board=1835594&tid=0kfa3a4dfa4ia4j&sid=1835594&mid=1637

2008/8/10(日) 午後 11:32 [ kyoumohared ]

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ドゲちゃんわしのとこヘ(^_^) おいで

2008/8/10(日) 午後 11:44 バルタントモゾウ

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くやしそうだねw

2008/8/10(日) 午後 11:46 [ phishing_dogeza ]

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mamakumaさん、

農家の人はみんな苦労人で、いい人ばかりですよね。

農家の人を悪く言うなんて、最低だと思います。

2008/8/11(月) 午前 0:04 [ tondemoiii ]

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体操情報更新しました。

2008/8/11(月) 午前 0:11 バルタントモゾウ

Yahoo!アバター

私は農家の話をしているつもりはないのだが。

2008/8/11(月) 午前 6:49 [ mamakuma3gou ]

Yahoo!アバター

最後の3行

2008/8/11(月) 午前 7:10 [ barutantomozooo ]

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知識と教養と知恵

コンピューターで補完できるのは、知識だけかな。

2008/8/13(水) 午前 8:54 [ radish_comedian ]

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知識と知恵

>知恵と知識は違う。 知識があっても知恵がなければそれを真に生かすことはできない。 知恵者は同時に賢者でもあるが知識人にかえって愚者が多いのはその所以だ。< 大まかには納得できるのだけど、職業柄少し反論。 >知識があっても知恵がなければそれを真に生か

2008/8/11(月) 午後 11:40 [ バルタントモゾウの徒然草 ]

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