韓国のサムスン電子が17日、米メモリー大手サンディスクに買収を提案したと発表した。成長鈍化に悩むサムスンがNAND型フラッシュメモリーのシェアで猛追する東芝を突き放し、世界トップを確保する狙いだ。サンディスクと生産面で提携する同2位の東芝にとって、戦略の見直しを迫られかねない。
サムスンの提案では、サンディスク株式を1株26ドルですべて買う計画で、買収総額は約58億5千万ドル(約6200億円)。一方で、サンディスクは「提案は非常に過小評価」として提案を拒否したとするコメントを発表した。
サムスンは「提案は正当で株主に公開すれば必ず支持される内容だ」(広報)と、サンディスクに再考を迫る考えだ。交渉停滞を打破するため公表に踏み切った。NAND型は携帯音楽プレーヤーや携帯電話などに使われ、世界で需要が急拡大している成長製品。サムスンは、サンディスクが抱える独自技術や知的財産と、生産能力を一緒に取り込む狙いがある。
一方、東芝は99年、サンディスクとNAND型の開発や生産で提携。四日市工場(三重県)で、建物は東芝が建設し、生産設備は共同出資会社が運営する方式で増産を続けてきた。1兆円以上を投じて09年春にも着工する新工場2棟も、1棟の設備はサンディスクと共同で整備する。
東芝にとって不可分のパートナーが、競争相手であるサムスンにのみ込まれると、サンディスクとの関係見直しは必至だ。東芝は半導体事業を、原子力発電と並ぶ2大柱の一つと位置づけており、注力してきた屋台骨を揺るがす恐れがある。サムスンの出方によっては、東芝もサンディスクの買収に動くなど対応を迫られそうだ。
(湯地正裕、ソウル=稲田清英)