ホーム > きょうの時鐘


2008年9月18日

 昔の手押しポンプは、水が出ないと上から水を注いだ。低い水位が上の水とつながってよみがえる。日本の金融危機で公的資金投入の際に使われた「呼び水」の例えである

この「呼び水」を注ぐ判断が難しい。水を注いでも無駄になる枯れ井戸があるからだ。米国の「呼び水」は大手証券リーマン・ブラザーズには投入されず、大手保険会社AIGには注がれた。判断の差は分かり難かった

負の連鎖拡大を防ぐやむをえない措置と認める一方で「場当たり的」「政府の迷走」と疑問視する専門家もいた。プロでさえ十分仕組みが理解できないとされるサブプライムローンに端を発した混乱ぶりを象徴するような話だろう

その複雑怪奇な世界経済の現実は、リーマン向け投融資の企業一覧に北陸の金融機関名があったことでもわかった。市場経済の一体化が身近に迫っている証明だった

「井戸を掘り、あと一尺で出る水を、掘らずに水が出ぬという」の例えもある。政治空白などと言ってはおれまい。今こそ、複雑な経済に惑わされず、汗して井戸を掘り続ける人を助ける明快な政治の出番だろう。


ホームへ