北島康介選手の競泳二種目連覇など、幾多のドラマが生まれた北京五輪。その感動と興奮がいまだまぶたに焼き付いて離れない。郷土勢では、陸上女子マラソンの中村友梨香選手が十三位。強豪に臆(おく)さない堂々とした走りに、確かな将来性を感じ取った。
中村選手が所属する天満屋女子陸上部からは、シドニー、アテネ、北京と五輪三大会連続のマラソン代表入り。女子の実業団チームでは例のない快挙だ。その力の源について、元部員の坂本(旧姓・松尾)和美さん=千葉市在住=が近著「『天満屋』強さの秘密」(文芸社)で紹介している。
松尾さんといえば、北海道、ベルリン、名古屋国際とマラソン三大会連続優勝を果たし、世界選手権にも出場した名選手。私も運動部記者時代に約四年間、お付き合いさせてもらった。
本は、朝練習やミーティングなど、日々の積み重ねを重視する“天満屋流”の一端を紹介。中でも武冨豊監督についての記述は興味深い。「常に選手と同じ目線で対話し、年ごろの女子の理不尽な意見であっても、正面から受け止めてもらった」。小出義雄さんに代表される“カリスマ系”とは異なる名指導者の実像が伝わると同時に、選手とのきずなが「チーム」としての強さを生んでいる―と読み取れた。
五輪女子マラソンの実況を自宅で見た松尾さんは「天満屋OGとして純粋に応援していた」と言う。私も全く同感。次回ロンドン大会にも代表を送り出し、世界レベルのチームが地元にある喜びを感じ続けさせてもらいたい。
(高梁支局・神辺英明)