舛添厚労相、「介護と医療の一体化を」
来年4月の介護報酬改定の方向性を左右する舛添要一厚生労働相の「安心と希望の介護ビジョン会議」(座長=前田雅英・首都大学東京都市教養学部教授)の第3回会合が9月17日に開かれ、高齢者介護をめぐる問題に取り組む6人の有識者が各分野の立場から意見を述べた。舛添厚労相は「皆さんのお話で共通しているのは、医療と介護を分けて考えられないということ」と感想を述べ、保険制度の一本化も視野に入れながら、「介護と医療の一体化」に中期的な課題として取り組む意向を示した。
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舛添厚労相「介護ビジョン」会議設置へ この会議は、医学部定員の増加などを打ち出した「安心と希望の医療確保ビジョン会議」の“介護版”で、来年度の介護報酬改定などに向けて、年内に最終報告書をまとめる予定。前回は、東京都杉並区の小規模多機能ホームを視察し、施設の運営者らから意見を聞いた。
この日は、高齢者の在宅介護にかかわるテーマを中心に取り上げた。国立長寿医療センター研究所の大川弥生氏は、「介護の理念に立った専門性の確立」と題して、高齢者の自己決定権や自立支援などを重視した介護の理念を再構築する必要性と、生活機能の向上など、その理念を実現するための課題について述べた。
東京都品川区の「こだまクリニック」の院長として、認知症の訪問診療を手掛ける木之下徹氏は、認知症に伴って発症する暴力や幻覚などの周辺症状(BPSD)に向き合う医師が不足している現状を伝え、「認知症を診るために訪問診療する医師がいなければ、医療と介護の連携は不可能だろう」と指摘。「BPSDにおいて、医療と介護を切り離さないでほしい」と訴えた。
木之下氏はまた、在宅のBPSD患者が“薬漬け”になっている実態を紹介し、「医師が適切にかかわることで、相当良い効果が期待できる。しかし、介護との連携が必須」と強調した。
■高齢者の新しい住環境の提案も
東京都小平市の「ケアタウン小平クリニック」の院長・山崎章郎氏は、在宅緩和ケア医(在宅ホスピス医)の立場から、「安心して暮らせるコミュニティーケア」の在り方を提案。デイサービスや訪問看護ステーション、子育て支援、ボランティア育成など、運営主体の違う事業体を一か所に集約した「ケアタウン小平」を通じた医療と介護のネットワークを紹介した。
新潟県長岡市の「高齢者総合ケアセンターこぶし園」の総合施設長・小山剛氏は、高齢の夫婦が共に移り住む仕組みを支援する必要性を指摘。「特別養護老人ホームという名称の住宅と、小規模多機能型居宅介護という名称の定額在宅サービスを一括して地域単位に提供できれば、介護保険施設や短期入所、通所介護、訪問看護、訪問介護が統合され、不要になる」とした。そのための課題としては、一般住宅のような広さや設備に加え、職員の配置基準の規制緩和などを挙げた。
明大理工学部建築学科助教授で一級建築士の園田眞理子氏は、「大都市郊外の高齢化に対応した介護環境の構築―新しい住まいの可能性―」と題して、高齢者のライフサイクルに合わせた住環境を提案。55歳から85歳までの30年間を10年ごとに「引退期後半」「老後期」「要介護期」に分け、それぞれに合わせた高齢者住宅として、「シニア・ハイツ」(老老介護)、「シニア・リビング」(女性のシングル)、「シニア・ホーム」(介護居住施設) を示した。
山口県内にある国内最大規模の通所介護拠点「夢のみずうみ村」を運営する藤原茂氏は、施設を設立するまでの経緯や事業資金の状況について説明。高齢者の自立促進を図るためのプログラムとして、「緊張を生まない環境づくり」(家庭に近づくこと)、「社会で暮らすための“バリアあり”のすすめ」を紹介した。
これらの意見に対し、舛添厚労相が個別にコメントした上で、次のように抱負を語った。
■「医療と介護のすき間を埋める」
中期的な課題として、「介護と医療の一体化」ということをやらざるを得ない。「長期的課題ですよ」と以前から言ってきたが、もう長期ではなく、わたしが政治家をやっている間に考えないといけない。例えば、介護保険の負担は40歳以上だが、医療はそうではない。皆さんのお話で共通しているのは、医療と介護を分けて考えられないということ。「制度上、難しいからやらない」ということを役人は言える。だが、われわれはそういうことを言ってはいけない。難しくても、新しい制度設計をやるのが政治家の仕事だ。
優秀なスタッフがわが省にいる。中期的課題として、医療と介護のすき間を埋めるにはどうすればいいのか。保険制度の一体化も(選択肢の)一つだが、「そろそろ考える時期に来てるな」と、きょうは痛切に感じた。
政治が混乱している状況で、近く総選挙もあると思うが、次の政権がどうであれ、これは国民的な課題としてやらなければいけない。どの政党が政権を取ろうと、われわれがここで議論したことを踏まえてやりたいと思う。限られた時間だが、そういう大きなアンビションを持って臨みたい。
更新:2008/09/17 21:23 キャリアブレイン
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