【ナイロビ=古谷祐伸】アフリカ南部ジンバブエからの報道によると、ムガベ大統領(84)と最大野党「民主変革運動(MDC)」のツァンギライ議長(56)は15日、連立政権作りの合意文書に署名した。ツァンギライ議長が首相として内閣を指揮する。ムガベ氏が権力の一部を自らの敵対勢力に委ねるのは、80年の独立以来初めて。
合意では、31ある閣僚ポストのうち、15閣僚を与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU―PF)」が、残り16閣僚をMDCとMDCの分派が分け合う。ムガベ氏は大統領のままだが、ツァンギライ氏が事実上、閣僚を束ねて政策を作っていく役割を担う。ムガベ氏の土地改革で土地を接収された白人農場主に対する補償を、植民地として同国を支配した英国に求めている。
署名式でツァンギライ議長は「国民の統合が必要。分裂は過去のことだ」と語り、食糧供給を最優先課題に挙げた。一方、会場の外では、双方の支持者が互いに投石するなどして衝突した。
両党の関係は依然微妙とみられ、欧州連合や米国は「合意の今後を見守っていきたい」などとして、援助再開には慎重姿勢を見せている。
今後は、崩壊した経済の立て直しが緊急の課題となる。国際赤十字によると、干ばつによる食糧不足などの影響で、食糧援助が必要な人口は09年初頭にかけて500万人に達すると予想される。モノ不足が物価上昇に拍車をかけ、最新の物価上昇率(6月)は、政府発表で年率1120万%。8月から通貨ジンバブエ(Z)ドルを100億分の1に切り下げるデノミネーションを実施した。