(cache) 1043 チャート事典

  [1043] ベクトル


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意味

グラフは1601 帝石 の13日ベクトルを描画したものです。ベクトルは一定期間(例は13日)の株価がどのような角度で上昇し下落しているかを見るチャートです。角度は1日当り+0.4%の割合で上昇しているとか、-1.1%の割合で下落しているとかで表されます。

図のAのベクトルは24.4なので、1日当り2.44%の割合で上昇しており、Bは-18.4なので、1日当り-1.84%の割合で下落しています。1日当り2.44%の割合で上昇していれば、10日目には24.4%の株価上昇になり、20日目には48.8%の株価上昇をすることになりますが、むろんこの調子がいつまでも続くものではありません。どこかで1日当り2.0%→1.0%→0%へと減速し、ついにはマイナス値となって下落していきます。

ベクトルの見方は、
  1. ベクトルの水準が高いときは株価のピークに近く、水準が低い(マイナス)ときはボトムに近い。

  2. ベクトルの向きが転換したときは、株価のピーク・ボトムが近い。
と判断します。

ベクトルは一定期間の株価の角度ですが、この角度は1日当りの変化率を単純に平均したものではなく、最小2乗法によって求めた回帰式の角度を使います。。回帰式を計算する方法は、回帰曲線の章で述べました。回帰曲線は、回帰式(y=Ax+B)から株価の推定値(y)を計算したものですが、ベクトルは(y=Ax+B)の角度(勾配)であるAを使って、1日当りの変化率(上昇率・下落率)を計算します。






規則 (ベクトル)

元データ株価
出来高
信用買残・売残
共通銘柄終値
No.1〜No.150線
副データ 
加 工回帰式を求めて、1日当りの株価の変化率を計算する
パラメータ×日のベクトル
単 位%(正しくは%を10倍した値。ベクトルが+21.3とは、1日当り+2.13%の角度である。)
使用例・株価の13日ベクトル
・出来高の5日ベクトル




計算方法

株価の「5日ベクトル」を計算してみましょう。実際のところ、パソコンではいとも簡単に計算しますが、回帰曲線を手計算するには大変な計算量になります。(このデータの例は回帰曲線の計算方法で掲げたものと同一です。)統計の初歩を学んだ方は、「最小二乗法」という計算をすれば、多くのデータを1つの一次回帰式で表せることはご存知のとおりですが、ベクトルは、@最小二乗法によって回帰式を求め、A求めた回帰式の角度(勾配)をその期間の平均値で割って、x1000倍する、という2段階の手順を踏みます。

図のような5日間の株価があります。1日目は173円、2日目は168円、3日目は167円、4日目は179円、5日目は177円です。X日目をx、株価をyとすると、以下のような計算をします。
  1. Σx =xの合計値。(1+2+3+4+5)=15 (a)欄)
  2. Σx・x =x・xの合計値。(1x1+2x2+3x3+4x4+5x5)=55 (b)欄)
  3. Σy =yの合計値。(173+168+167+179+177)=864 (c)欄)
  4. Σy・y =y・yの合計値。(173x173+168x168+167x167+179x179+177x177)=149412 (d)欄)
  5. Σx・y =x・yの合計値。(1x173+2x168+3x167+4x179+5x177)=2611 (e)欄)
  6. xの平均値 =xの合計値÷5。(15/5)=3.0 (f)欄)
  7. yの平均値 =yの合計値÷5。(864/5)=172.8 (g)欄)
これで回帰式を求めるために必要な値がそろいました。回帰式は、y=Ax+Bの形になります。(yは株価、xはX番目)例えば、y=12x+200という式ができたなら、 以上のように、各X番目の株価が推定できます。(実際にはX番目の株価はあるのだから推定の必要はないが)

y=Ax+BのAは図にある計算式によって求まります。 Aはなので、19/10=1.9です。Bは、 より、B=167.1。これによって回帰式は、y=1.9x+167.1と決まりました。 右図の青線が回帰式(y=Ax+B)で、赤点が元の株価です。

Aは回帰式の角度(勾配)ですが、この角度(1.9)というのは、1日当り1.9円の割合で上昇していることを表しています。角度の単位が円であるのは、やや困ります。例えば株価が8000円のソニーが1日当り1.9円の割合で上昇しているといっても、それはほとんど変化をしていないのと同じです。しかし株価が40円の株価が1日当り1.9円上昇するというのは大きな変化です。(10日で19円上昇するのだから)そこで角度を株価で割って、変化率(%)の単位に変換します。株価が8000円であれば、1.9÷8000X100=0.023%というのが変化率ですが、これでは数値が小さ過ぎるので、X100ではなくX1000倍して、ベクトルは0.23とします。株価が40円の場合は、1.9÷40X1000=47.5となります。

このときの株価ですが、幸いにして回帰式を計算するときに平均株価が計算されています。(上の7.(yの平均値)=172.8が株価平均値)この例のベクトルは、1.9÷172.8X1000=11.0 と計算できます。


このようにして、株価データが200日あれば、
  1. No.200〜No.196の5個のデータで、
      @回帰式を求め、
      A角度÷平均株価X1000でベクトルを計算する。
  2. No.199〜No.195の5個のデータで、
      @回帰式を求め、
      A角度÷平均株価X1000でベクトルを計算する。
ということを繰り返していけば、ベクトルが描けるわけです。





設定例@ 13日ベクトルの向きによる売り・買いの設定



設定のポイント
No.3線 株価の13日ベクトルを紺色で描画する。ベクトルが+20以上のとき売り。
No.4線 13日ベクトル(No.3線)が-20以下のとき買い。
No.5線 13日ベクトル(No.3線)の向きが下向いた日に売り。
No.6線 13日ベクトルの向き(No.5線)が上向いた日に買い。



グラフ@

設定例@「13日ベクトルと向きの設定」のグラフは図のようになります。

4716 オラクル は図のような位置で買いマーク・売りマークがでています。





設定例A 「日経平均用'96」による売り・買いの設定

1995年に日経平均・TOPIX用の条件表を作りましたが、長い間有効な売買マークを出し続けています。


設定のポイント
No.2線 株価の5日前過去比率が-1.6%以下のとき買い。(5日前の日より-1.6%以上下落している)
No.3線 株価の5日最大日数が1以上のとき買い。(過去5日間で、当日の株価が最高でないとき買い)
No.4線 株価の10日平均を計算する。
No.5線 株価とNo.4線(10日平均線)とのカイリ率が-1.1%以下のとき買い。
No.6線 株価の10日ベクトルを計算し赤色で描画する。-3.1以下のとき買い。
No.7線 株価の5日平均を計算する。
No.8線 株価とNo.7線(5日平均線)とのカイリ率が-2.0%以下のとき買い。
No.9線 株価の5日ベクトルを計算する。-0.4以下のとき買い。
No.10線 株価の5日順位相関を計算する。-90以下のとき買い。
No.11線 No.10線(株価の5日順位相関)が60以上のとき売り。
No.12線 株価の5日ストキャス%Kを計算する。68以上のとき売り。
No.13線 株価の10日ストキャス%Kを計算する。82以上のとき売り。
No.14線 株価の9日平均を計算する。
No.15線 株価とNo.14線(9日平均線)とのカイリ率が-0.2%以上のとき売り。
No.16線 株価の5日前過去比率が0.1%以上のとき売り。(5日前の日より 0.1%以上上昇している)
No.17線 株価の9日順位相関を計算する。80以上のとき売り。
No.18線 株価の10日最大日数が0のとき売り。(過去10日間で、当日の株価が最高のとき売り)
No.19線 株価の25日ストキャス%Kを計算する。24以上のとき売り。
No.20線 株価の17日順位相関を計算する。0以上 85以下のとき売り。




グラフA

「日経平均用'96」のグラフは、HP「東研ソフトユーザー情報」で毎日掲載しています。



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