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【社説】

自公政権 嘆かわしい政治“空白”

2008年9月17日

 自民党総裁選が当事者の思惑を外れて盛り上がらない。折から汚染米、北朝鮮情勢、金融危機などの相次ぐ緊急事案に自公政権は対応できているのか。“空白”が招く国民の不安を重く受け止めよ。

 福田康夫首相の退陣表明による事実上の「首相不在」が必要以上に長引いているのではないか。

 後継総裁選びは折り返し点を過ぎた。すでに麻生太郎氏が過半数を固める情勢で、政策論争も空回り気味だ。麻生氏は人事の一端も口にしている。「消化試合」になっているのに五候補の全国行脚は二十二日の投開票前日まで続く。

 国内外で難問が相次ぐ中、いかにも間の悪い総裁選だ。

 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破たんを受け、候補者の与謝野馨経済財政担当相が選挙運動よりも職務の方を優先するらしい。世界的な株安連鎖で東京株式市場は大幅に下落。景気後退局面に入った日本経済への打撃を考えれば、当然のことだ。

 拡大の一途である汚染米問題は食の安全の根幹を揺るがした。

 チェック機能を果たせなかった農林水産省は対応が鈍い。大阪農政事務所の元課長が不正転売した業者から接待を受けていた問題まで飛び出した。あきれるばかりだ。政府はようやく汚染米の流通先約三百八十社を公表。首相は野田聖子消費者行政担当相を中心に原因究明と再発防止にあたるよう指示した。だが、国民には政府一丸となった取り組みと受け取られているかどうか。

 外交も後手に回っている。

 退陣表明のあおりで北朝鮮は拉致の再調査延期を通告した。一方金正日総書記の重病説は間違いなさそうで、統制の緩みに伴う不測の事態も懸念される。日本の安全保障にもかかわることだ。情報収集・分析や米・韓国との連携が不可欠だが、万全なのか。日中韓首脳会談も結局延期になった。

 不安感を募らせる混沌(こんとん)とした事態が続くとき、国民は指導者の「顔」をみる。本人は空白をつくっていないとの思いでも、どうしても“主”なき政権内は緩みがちになる。

 国会で議論があってしかるべきときだ。野党は閉会中審査を求めている。自公政権はここは積極的に応じてはどうか。政権が考えている以上に迎えている事態は深刻だ。真正面からのメッセージを発せられないのなら、政権与党は総選挙で大きなツケを払わされることになる。

 

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