この人物のオモテとウラ　林家正蔵　ライバル局が静観の不思議

　落語家の林家正蔵（４５）が９月２９日にスタートする朝の情報番組「スパイスＴＶ　どーも☆キニナル！」（フジテレビ系、月〜金曜９時５５分〜）のメーン司会を務める。こぶ平時代からバラエティー番組には数多く出演してきたが、帯番組の司会も生放送番組の司会も初めてとなる。「帯番組の司会は憧れでした」と本人は大乗り気で、メーン視聴者となる主婦の目を意識して５キロのダイエットを成功させたほど。

　視聴率がジリ貧で終了することになった「ハピふる！」の後を受け、大逆転を狙いたい同局の担当プロデューサーは「抜群の知名度と『正蔵』ブランドを持ちながら、下町の目線を忘れない。午前１０時の顔になってほしい」と大きな期待を寄せる。正蔵本人も「下町で地に足の着いた生活をしているので、暮らしの中からいろんなネタが拾えて、おしゃべりもできると思います」と自信満々だ。

　０５年の襲名パレード時には１２万人以上のファンを集めたほどの人気があり、城西国際大学客員教授を務めるだけの知識もある。おまけに落語家なのだからしゃべりが下手なわけがない。となれば朝１０時台の視聴率戦争を戦うライバル局も戦々恐々と思いきや、意外にも静観の様子なのだ。

　あるテレビ関係者は「確かに正蔵さんの親しみやすいキャラと人気はライバル局にとって脅威」としながらも、「朝の司会業には中山秀征や小倉智昭のようなツッコミ系のキャラのほうが受けるのに、どちらかというとボケ系の正蔵に務まるかどうか」と打ち明ける。

　本業への影響も心配だ。帯番組の司会は打ち合わせや反省会などがあるため拘束時間が長くなる。都内ならまだ昼の部の寄席には間に合う時間だが、地方での高座は当然制約を受ける。例えば９日には小朝、いっ平とともに大阪松竹座で「三人の会」を開いたが、こうした活動は事実上不可能になる。

　奥さま感覚とは程遠いという見方もある。過去に不倫をスクープされたり、１億２０００万円の申告漏れを指摘されたこともある。また、美食家であり、コレクターであり、自宅地下に専用の映写室を造るなどで「金持ちの道楽息子」と評されたこともあった。だが趣味のジャズ鑑賞は、今では評論家としてもファンに認められるほど。見方を変えれば、こうした趣味人ぶりは司会者としての話題の広さや深さとなる可能性もある。

　９代目林家正蔵を襲名するに当たっては、周囲に「まだ力不足、経験不足」という声もあったが、落語に精進し３年間で５０以上の古典落語を身につけたともいう努力家の一面がある。

　朝の司会を勉強し身につけるまで、しばらく温かい目で見守る余裕が局側にあるかどうかが、司会者・正蔵の成否を握りそうだ。

（日刊ゲンダイ2008年9月12日掲載）