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[事故米転売]業者に戸惑いと憤り 農水省が公表

 米卸売加工会社「三笠フーズ」(大阪市北区)の汚染米転売問題で、農林水産省が公表した流通先の業者と施設名は合わせて24都府県の375に上った。広がりの大きさに小売店からは驚きと不安の声が広がる一方、知らずに事故米を購入し、公表に同意していなかった小規模業者らは「国のやり方はあんまり」と怒りをあらわにした。【根本毅、高山梓、川島紘一】

 多くの中華料理店が並ぶ神戸市の観光地「南京(なんきん)町」の中華料理店にも、事故米が混入した餅粉が販売されていた。この餅粉を使って点心を作っていた店長(66)は「日本産だと思っていた。何を安心して扱っていいのか」と憤った。

 社名を公表された大阪府内の家族経営の米販売店は16日正午ごろ、農水省からファクスで公表を知らされた。「太田農水相が決めたため公表する」との一方的な内容。店の女性は「息子が社長で、身内だけでやっている小さな店。報道されたらつぶれてしまう。名前が出るのですか……」と声を落とした。

 女性によると、三笠フーズが流通させた餅米を事故米と知らずに購入。問題発覚後、農水省職員が毎日訪れ、近所でうわさになったが、客には正直に説明して理解してもらっていたという。「国がそんな米を売るから、こんなことになった。えらい迷惑。補償してもらいたい」と訴えた。

 同府内の製菓材料卸会社社長も「職員は『公表しない』と言ったのに」と憤る。農水省職員が、調査に訪れたのは今月13日。同社が昨年11〜12月初旬に購入した「国産の餅粉」は、三笠フーズが転売した中国産のメタミドホス汚染米を加工して作られた可能性があると告げられた。

社長は「20年以上前からの取引先から購入した。我々も被害者」と訴えた。

 ◇多くが家族経営の中小・零細企業

 一方、九州の和菓子メーカー。宮崎62社、熊本33社、鹿児島12社の南九州3県計107社の和菓子メーカーが公表され、その多くは家族経営の中小零細企業。ほとんどの会社が祝い用やお盆用の型菓子「らくがん」の原料として使っていたという。

 公表リストに載った鹿児島県鹿屋市の和菓子店は、熊本県の製粉会社から「らくがん粉」36キロを仕入れ、うち30キロから「らくがん」約300個を製造販売した。残り6キロは問題発覚後、県の指示で廃棄したという。同店の会長(77)は「事故米と全然知らずに買った。農水省がきちんと検査しておれば、こんな問題は起きないはずだ」と憤った。

 やはりリストに載った鹿児島市の和菓子店店主(66)は農水省の公表について「『死ね』と言うこと。自分たちのチェックの甘さを棚に上げ、いつもはしない零細業者の公表を今回だけするのは選挙があるからだ」と、政府の対応に怒りを爆発させた。約250の和菓子店などで構成する鹿児島県菓子工業組合は「名指しされたのは家族経営の小さな店ばかり。和菓子全体に風評被害が出ないか懸念している」と心配する。

 夫婦で38年間、名物のクリームケーキを中心に和洋菓子を作ってきた宮崎県日南市の和洋菓子店オーナー、桑原健二さん(60)は「卸業者が数日前に来て全部回収していったので『よもや』と思っていたが」とがっくり。「隠すつもりは毛頭ないが、公表前にどれだけ有害成分が含まれ、人体に影響があるのかないのかを明らかにしてほしかった。国のやり方は弱い物いじめと同じだ」と語った。


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