私が「ちまた」担当者として仕事上、常に心掛けていることは何だと思われますか? 意外な答えかもしれませんが、それは「未練」を断ち切るクールな心を持つことです。投稿は毎月約七百から九百通届きます。時間に追われる中、採用分を選んで手直しの作業に入りますが、横には不採用の投稿の山。ジーッと、にらまれているような気がするのです。
私は「ちまた」をひそかに「四百字の人生ドラマ」と名付けています。たどたどしい筆跡で書かれたお年寄りの投稿、若者が懸命に訴えた長文の投稿などなど。それぞれに魂を込めて書いておられるのは分かりますが、意味が通じない、あまりにも長い…。残念、不採用。日々こうしたことの繰り返しですから、割り切る気持ちが重要になるのです。
昔に比べて投稿欄のスペースは次第に広くなり、現在は「集い」なども含めて二ページ。掲載数は全国屈指です。これだけスペースが広がってきたということは、投稿数が増えてきたことの表れで、「ちまた」は読者の皆さんが育ててきてくれたコーナーと言えるでしょう。しかし現実問題として、物理的な枠はどうしようもありません。
「ちまた」は開かれたコーナー。できるだけいろんな人を載せることを原則に、これまでの掲載回数・内容・分かりやすさ・タイミング・ミスは無いか―などを勘案しながら採用分を決めています。
果たして、この採用でよかったかは、神のみぞ知る。俗人の私は、本当はクールになり切れません。
(読者室・下谷博志)