和歌山県田辺市稲成町にある県立自然公園特別地域内の岩口池に、外来生物法で移動が禁止されているブラックバスが、違法放流されていることが12日までに分かった。田辺市環境課は「看板を立てて生き物の持ち込みをしないように呼び掛けていたのに残念」と話している。 岩口池では、補修工事のため2004年にすべての水が抜かれた。市はこれを機に、外来生物であるブラックバスや、大食漢のコイなどを閉め出して、生物の分布を自然に任せて、昔の環境に近づけようとしていたところだった。 管理しているひき岩群ふるさと自然公園センター職員がブラックバスを釣り上げた人を目撃したため、生息確認のためにルアー釣りをした。若魚(15〜20センチ)複数匹が食いついてきたことから、多数いると推測している。 特定外来生物に指定されたブラックバスは、釣った魚をその場に放す「キャッチ&リリース」はできるが、ほかの場所への移動や販売、飼育はできない。同市は「さらに数が増えるようならば、水を抜いて駆除するなどの対策を講じないといけない」と話している。これまでに金魚やコイが放されたこともあった。 同センター自然観察専門員の玉井済夫さんは「ほかの池でも生き物の持ち込みをしないように呼び掛ける看板を立てて、市民の意識向上を図ってもらいたい」と訴えている。 岩口池は面積約1・6ヘクタール、貯水量6万1700立方メートルの農業用ため池。もともとフナやタカハヤ、ヨシノボリなどの魚類、イモリ、クサガメ、イシガメなどが生息しており、流れ込む小川周辺にはカスミサンショウウオがいる。しかし、近年はミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)やブラックバス、カダヤシなど外来種の侵入が目立ってきた。