事故米の食用への転用が発覚した米卸売加工会社「三笠フーズ」(大阪市北区)は04年以降、25都道府県の農政局や農政事務所で55回にわたり事故米を購入していたが、岡山で60キロを260円で落札するなど少量でも「買いあさる」状態だった。購入した約1780トンは、この間に全国で販売された事故米の約4分の1を占め、農林水産省にとって「お得意様」。96回も立ち入りしながら不正を見抜けなかった農水省の検査に手加減はなかったのか。
農水省は、保有する国産米や輸入米が水ぬれしたり、カビが生えたり、残留基準を超える農薬が検出されるなどすると、事故米としてホームページで知らせる。事故米を保管する全国各地の農政局や農政事務所が米穀業者などに通知して、指名競争入札を行い、売却先を決める。
三笠フーズは、記録が残る04年2月から今年8月まで55回にわたって事故米を購入した。06年10月には、中国四国農政局(岡山市)でカビが生えた米国産うるち玄米60キロを260円で購入するなど、1000円以下の落札も10件あった。「次はどこで事故米が出ますか」と本省に問い合わせてくることもあったという。
同社が購入した事故米の価格は平均すると1キロあたり約11円。加工計画書通りの工業用「のり」の原料として販売したとすると、相場は3~10円で赤字となる計算だ。しかし、実際は焼酎や米菓用などの原材料として転売しており、こうした加工用だと相場は70~180円。食用なら300~350円に跳ね上がる。
福岡農政事務所は月1回程度行っていた立ち入り検査で、加工計画書通りに加工されているかをチェックしていたが、事前連絡したうえでの実施。「突然行っても、不在だったり資料がなかったり、十分な検査ができないため」(農水省職員)とされる。しかし、同社は帳簿や伝票を二重に作成して対応していた。
農水省の白須敏朗事務次官は「検査で見逃した原因や実際どういう対応をしていたのかという点を検証していく」と話している。【奥山智己】
◆三笠フーズが購入した事故米◆
数量(トン) 金額(円)
北海道 37 15万2014
宮 城 35 24万7206
福 島 8 7万4350
群 馬 0.2 800
千 葉 3 1万3710
東 京 960 808万4270
静 岡 39 23万7000
福 井 50 30万500
滋 賀 191 863万2000
京 都 12 18万5900
大 阪 0.8 4430
奈 良 7 10万
岡 山 253 36万5260
和歌山 1 5448
島 根 0.8 1000
愛 媛 35 35万500
香 川 68 13万7300
山 口 1 6320
福 岡 59 37万1650
佐 賀 12 10万500
熊 本 0.3 1350
大 分 0.7 7万2500
長 崎 1 5572
宮 崎 2 1万800
沖 縄 0.4 1170
毎日新聞 2008年9月14日 20時06分(最終更新 9月14日 21時53分)