きど・あつむ 大阪府出身。毎日新聞の大阪、東京両本社編集局長や主筆を経て00〜03年に大阪本社代表。04年10月から府教育委員。
いむら・まさよ 元中学教諭。北京五輪ではシンクロナイズドスイミングの中国代表のヘッドコーチを務めた。96年10月から府教育委員。
8月末に発表された全国学力調査の結果が2年連続で下位だったことをきっかけに、大阪府の橋下徹知事が教育委員会批判を繰り返している。「ビジョンが全く感じられない」「お飾りだ」と、矛先を6人いる府の教育委員にも向け、今月末で任期が終わる2人は再任しない考えだ。委員を去る元毎日新聞大阪本社代表の木戸湊(あつむ)さん(69)と元シンクロ日本代表監督の井村雅代さん(58)に、知事の発言への思いや教育委員会のあり方について聞いた。
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■木戸湊さん
報道陣に公開された8月26日の知事と教育委員との懇談会で、知事は開口一番、「大阪の公立小中学校への保護者の不信感は、全国で最も高い」と言い放った。「学力面での不満はあるかもしれないが、一人ひとりの多様な個性に応じてきた点は誇ってもいいと考えている」。そう説明しても、「僕の周りはみんなお金があれば私学に行かせたいと言っている」と聞く耳を持たなかった。あとは「ビジョンを示せ」の繰り返し。
ビジョンなら、今春あった知事と教育委員との別の懇談会で明確に示したつもりだ。例えば、知事は小学1、2年生の35人学級について「大人数でもまれることのメリットもあるのではないか。少人数は誤りだ」と主張した。私は少子化や核家族化の影響で集団生活に慣れない今の子たちは、低学年からしっかり見守ることが必要だと説明した。しかし、知事は「集団生活が成り立たないのは、教師が怒れなくなり体罰がなくなったからだ」と言い張った。
知事は「僕の意に沿うビジョンがない」と言いたいのだろう。独裁的で危うさを感じる。
教育委員会は戦後、知事や市町村長の政治的な介入から中立性を確保するためにつくられた。まさに今回のような橋下知事の政治的な独断や思いこみによって教育方針や施策が揺さぶられないよう防ぐのが目的だった。