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2008-09-15

[]はてなーにもわかる金融業界の栄枯盛衰※追記あり

なんかリーマンが本当につぶれるとか、メリルがバンカメに買収されるとか、

米リーマンHD、連邦破産法第11条の適用を申請

米バンカメがメリル買収を発表、500億ドル相当の株式交換で

なかなか盛り上がってきてるから、折角だからはてなのアホどもにもわかるように今の金融業会についてあれこれ書いておく。


要すれば、ソロスがいうように、『経済活動においては小さなバブルの形成と破綻は普通に繰り返されるが、今回の破綻は、戦後60年間膨れ上がって来た、「スーパーバブル」と呼ぶべき信用拡大の終焉を意味する』、ということであるが。


とりあえずニクソンショックまでさかのぼる。ご存知の通り、ここでブレトン・ウッズ体制が終わって、貨幣は金の兌換紙幣でなく、国家の信用となる。金本位体制が終わり、当時(そして現在までの)最強国家であった米国の貨幣であるドルを中心としたドル本位制が敷かれたわけである。


このことが意味したのは、貨幣がただの信用になって、かつ商品になったということである。さまざまな国家の信用がドルを基準に計られ、値付けされ、取引された。これをもって世の中のあらゆる信頼や価値は商品化されつくしたわけである。これを契機に人類の発展というのはほぼ直接的に、信用を拡大させ、貨幣流通量を拡大させることと等しいことになった。


信用の拡大と、リスク評価のテクニカルな側面を一手に担ったのが金融業界だった。あらゆるマーケットを創造することで、流動性という新しい価値をすべてのものに付加し、わけのわからない金融工学的手法でわけのわからないリスクをわけのわからないなりに定量化して、マーケットに引き入れるということをしてきた。

その過程のなかで、いくつかの「担ぎ上げられた信用」が失墜した。不動産バブルだったときもあったし、ITバブルのときもあった。この場合、失われた信用を政府が一時的に補填するとともに、マーケットは新しい「祭りの神輿」を見つけ、再び終わりのない信用創造に戻っていったわけである。【追記:政府が信用を供給し続け、そしてそのことが新たな信用(=投資先=需要)を生むという循環が機能していた。】


そして今回のサブプライムローンの証券化にまつわる騒動は、この流れを如実に象徴するもので、本来何の価値もない低所得者の住宅ローン*1を証券化して、信用を捏造し*2、マーケットをこしらえて流動性を付加することで、ほぼまったくなにもなかったところから数百兆レベルの信用が創造されてしまった。しかも、今回たまたま破綻したのが米住宅価格だったというだけで、同じ手法による信用創造はそれこそLBOのローンもそうだし、世界中でおこなわれていた。

これは明らかにやりすぎで、このスーパーバブルが崩壊するということは、たとえ政府の介入でもちょっとやそっとで支えられるレベルではないということと、さらには新しい神輿を担ぐのはもうやめようかという風潮を呼んでいる。というか、あまりにやりすぎたために、詐欺の手口が公になってしまいしばらくできないね、という状況に近い。


これはどう考えてもおおごとである。ニクソンショック以降の世界の成長を担ってきたしくみがまったく機能しなくなったわけだ。いま次々と破綻していく米金融機関でおこっているのは、捏造した価値がまったく魅力のないものになってしまったため、プライシングもつかなければ、流動性もなくなってしまうという状況で、資金繰りがまったくできなくなっているわけである。この話の本丸は当然GS・モルガン*3だが、その真似事をしてたチンピラどもがバタバタ死んでいるという状況だ。たぶんことはCITIグループ解体くらいまで突っ込むと思う。


うちのブログにも金融業会が糞*4だから世の中が変わらないという、クソニヒリストがやっていらっしゃるわけだが、そろそろみなさんお待ちかねの金融業会存亡の危機というやつがくる。みなさんがどういう対応をとられるか、実に興味深い。いまだに対岸の火事だと思っている人は、ちょっと著しくセンスがないので、いろいろあきらめたほうがいいと思うよ。


ちなみにこの先の未来を簡単に予想すると、資本主義自体の支配はそうは簡単に揺るがないが、市場経済の絶対的な信頼というのはかなり薄れるだろう。資本はまったく供給過多に陥り、反セイの法則が経済の前提になる。そうすると、国内に需要を見出せなくなった企業のM&Aによる植民地化が加速し、まさに第二次大戦前の陣取り合戦が再燃するんだと思っている。かたちはどうあれ世界大戦への道を再び歩むのだろう。日本は一足早く反セイの法則下の経済運営を勉強しているから今後に活かせる部分も多いと思う。



※こっから先追記

  • あんまり関係ないけど金融に興味があればこちらも是非。PEファンドに関する誤解 - よそ行きの妄想市場経済の意味合いが薄れると、単純な取引所よりファンドが有効かも。
  • 例えば池田先生は、あいもかわらず政府の対応目線なわけだが、これは経済学とは政府のパンフレットを書く仕事であるというケインズの命題に沿った正しい対応だと思う。ただ、真面目に考えると、米国政府がやっているような「なんでもすぐに明るみに出して、マーケットに底を打たせようとする試み」は、当たり前だが底を打つから意味があるのであって、ただバカの一つ覚えで「国民への開示義務」を果たしていれば万事が解決するわけではない。/そして底を打たせるにはどのようなかたちであれ、政府の本格的介入が必要*5で、これからのマーケットはそのタイミングを見極めるというのが、ひとつの大きなテーマになるのだろう。

*1:返って来ないんですから!

*2CDOで何層にもしたうえで、シニア部分に格付けをとった。

*3:一番大元の資本主義の本丸は商業銀行だが出番はまだ先。いまは投資銀行が主役。

*4:ロスチャイルドが世界を支配しているというあの幼稚な陰謀論のひとつだと思う。

*5:群集のセンチメンタルジャーニーには終わりがないため。

chnpkchnpk 2008/09/16 09:21 はてブコメント
『id:fromdusktildawn「世界大戦は起きないよ。バブルも起き続け、信用も膨張し続ける。なぜなら、人々はそれがバブルだと分かっていて、バブルに乗るからだ。 」』
について。


そう。バブルがおきれば、バブルだとわかっていてもみんな乗る。資本主義経済ってのはそういうものです。みんな大好き祭りで御輿だワッショイワッショイです。
しかし今回の件を契機に「新しい御輿」はしばらく現れません。御輿を担ぐ機能自体が不全をおこしたためです。
そうすると機能が回復するまでの間、やることがありません。けんか以外。

chnpkchnpk 2008/09/16 09:30 はてブコメント
『id:munyuu[これはひどい][社会]「世界大戦を行える戦力なんて、どこにあるのやら(w 市場に絶対的な信頼があったことも無いしなあ。」』
について。


戦力がないっていうのは、何目線なんだろう・・。万が一戦力がなかったら石を投げ合えばいいじゃないくらいの気合はあると思うけどな。
「市場に絶対的な信頼があったこと」はそりゃないよwでも学問としては市場は正解を示すという前提があったよ。

chnpkchnpk 2008/09/16 09:47 はてブコメント
『id:yukky2001[economy][finance]「普通によくまとまっているエントリ。/東アジアでは戦後60年間輸出で食ってるという変な国もあってですね。/なんかそのせいか、最近日本では市場主義・規制緩和路線が修正されつつあるような。気のせい?」』
について。


いや突っ込みどころ満載でしょ(私のエントリね。)、という話は置いておいて、この最後の指摘はまったく鋭くて、日経平均なんかを見れば一目瞭然のとおり、日本の市場というのはいまやまったく機能していない。平均のPBRが1倍切るとか意味不明。まさにセンチメンタルジャーニー。
日本の一般意思というか世論は、ホリエモンが急に偉そうになりだしたときに、米国型新自由主義路線を否定する方向に舵を切った。今の世界情勢を見るに、当時の判断は正しかったような気もしている次第。
ただ日本の弱点は帝国主義に傾倒しやすいところ。きっとまた同じ間違いをするんだろうなーという気がすごいする。

chnpkchnpk 2008/09/16 10:47 はてブコメント
『id:yousong「ブレントン・ウッズじゃなくてブレトン・ウッズな。がんばれよ。」』


ひー。また誤植だ。。訂正させていただきまふ。。

chnpkchnpk 2008/09/16 11:14 はてブコメント
『id:byoubu[経済]「そんなこと言って証券会社に勤めている著者はこれからどうするんだ」』


はてブの1割はやさしさでできています。
マジレスすると伝統的なただの株屋には未来もなにもないので、辞めるか、若しくは偉くなって方針転換します。ファンドよりに。

kagakaorukagakaoru 2008/09/16 11:49 すごいわかりやすかったです!

いきなり教えて君で恐縮なのですが、、、
ここhttp://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/1062.htmlで述べられているような資本主義の拡大再生産の仕組みに、今回の一件とその余波が与える影響ってどのようなことが考えられるのでしょうか?
個人的にはこれまでの拡大再生産はアメリカの輸入を前提にしていたような気がしていて、影響は大きいのではと思うのですが、一方で、生産性向上の企業努力はまた別の変数として存在するとも思うのです。
そもそも次元の違う話かもしれないのですが。。とりとめなくてすみません。

要するにいま出回ってる「インデックス投信やETFに乗っかってればいずれHAPPY」みたいな話は変わらず存在するのかどうかが気になっているのです。

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