自民総裁選「名駅前の陣」
《14日、5候補名古屋にそろい踏み》
次の首相のビジョンは―。22日投開票の自民党総裁選に出馬した5候補者が14日、名古屋市中村区のJR名古屋駅前(桜通口)でそろって街頭演説を行い、景気対策、社会保障、福祉、安全保障などそれぞれが重視する政策を主張し合った。約1万人(主催者発表)が集まり、次期首相の公約に聞き入った。
■余裕の麻生氏、好感度アップの石破氏
国会議員、地方票ともに1歩リードし最有力とみられる麻生太郎幹事長(67)は「党の要職にありながら福田首相を支え切れなかった。おわび申し上げたい」と謝罪から入り、独特のべらんめえ調の語り口は影を潜めた。登壇した5人の中で拍手が一番大きく人気の高さを示した。「地方を161カ所回って感じたのは不景気だということ。まず景気対策を優先。ばらまきとの批判があるが、公共事業は国民の安心、安全のために必要」と述べ、財政出動による景気対策を主張。時折聴衆に問い掛けるようなしぐさを見せた。候補乱立については「まさか5人も出るとは思わなかった」と本音も。
■1万人集まる
小泉元首相の支持を受けて初の女性首相を目指す紅一点の小池百合子元防衛相は候補乱立に2010年の名古屋市開催が決定した生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を引用し「自民党も生物多様性」とジョークを飛ばした後「官僚主導から政治主導に。霞が関をぶっ壊す」と主張。道路特定財源の一般財源化の使い道にも触れ「環境と少子化対策に使うべきだ」と述べた。
政策通の与謝野馨経済財政担当相(70)は「選挙の前に言いたくはないが、税制改革を行った上での財政再建が必要。2015年までに消費税を10%にしないと持たない」と財源確保に消費税増税が必要との持論を強調した。
かつて「政策新人類」と呼ばれ、若さを武器に戦う石原伸晃元政調会長(51)は「行政改革は悪くない。規制緩和は国を豊かにする」と小泉改革の路線を肯定、介護の問題にも触れて「活力ある福祉国家」を訴えた。
長官も含めて防衛相を3度経験している石破茂前防衛相(51)は「安全保障なくして国民の安全はない。インド洋での給油活動をいらないと言っている民主党に政権を任せてはいけない」と安全保障政策について熱く、歯切れのいい発言が目立った。
東海地区での街頭演説会はこの日の名古屋市だけ。「次期首相は誰か」と関心を持った人々は真剣なまなざしで5人の主張に耳を傾けていた。
同市港区の男性(58)は「話がうまい。政策が一貫している」と麻生氏を支持。碧南市の男性(32)は「石破さん。外交関係の主張がぐっと来た」。名古屋市中川区の男性(46)も石破氏を支持。理由を「テレビで見るよりも印象がよかった。与謝野さんの主張には賛成できない」と語った。津島市の女性(60)は「与謝野さんか石原さん。甲乙つけがたい」。10月に選挙権を持つ岐阜県各務原市の女性(19)は「女性の声を国政にという意味で小池さん。とにかく次の首相は長くやってほしい」と願いを込めた。
麻生氏優勢の雰囲気の中で、名古屋の聴衆は意外にも石破氏に好感を持った人が多かった。
【写真説明】
(2008年9月15日更新)
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