1.湾岸戦争の停戦条件(1991年4月)
米他の連合軍に惨敗したイラクは、クウェートの不可侵などとともに停戦条件として大量破壊兵器の完全廃棄を受け入れた。(→安保理決議687)
●核、化学、生物兵器及び弾道ミサイル(射程150キロ超)の廃棄
●このための研究・開発・生産設備の廃棄
●将来にわたってもこれらを開発しない約束
UNSCOMの任務・権限
(これらの過程を監視。イラクはUNSCOMが必要と認める場所を即時に無条件で査察させる義務。)
2.UNSCOMの実績と残された疑惑
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廃棄実績 |
残る疑惑 |
●核兵器(IAEA担当) |
申告されたものは全部廃棄 |
5年で核兵器生産能力 |
●化学兵器 |
砲弾等 |
38,531発 |
107,500発 |
化学剤
(VX、サリン、タブン、マスタード) |
480,000リットル/6,990トン |
130トン |
前駆物質 |
3,000トン |
4,000トン |
(内VXの前駆物質) |
191トン |
600トン
(約10トンのVX生産可能) |
生産器具 |
516 |
459 |
●生物兵器 |
ボツリヌス毒素 |
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20,000リットル |
炭疸菌 |
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8,500リットル |
アフラトキシン |
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2,200リットル |
生産工場 |
アル・ハカム工場(炭ソ菌、ボツリヌス毒素) |
生産用媒体 |
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17トン |
砲弾 |
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157発 |
●弾道ミサイル |
817基 |
2基
◎スカッド、アルフセインの部品多数
1年以内に生産可能
◎アルフセイン数10基、
アルアバス数基配備(DIA) |
同 発射台 |
75基 |
0基 |
生物・化学兵器用特殊弾頭 |
30発 |
45発 |
3.イラクの一貫した査察回避行動
●数百の化学器具(平和目的) |
→ 化学兵器生産用 |
●生物剤の存在否定 |
→ 1995年(フセイン・カメルの亡命で)発覚 |
●アル・ハカム工場(飼料工場) |
→ 生物兵器工場 |
●NPT加盟国 |
→ (フセイン・カメルの亡命で)核兵器開発計画が発覚 |
●弾道ミサイル |
→ 1995年ヨルダンでイラク向けのミサイル制御部品の密輸発覚 |
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→ 1996年初めて資料提出 |
●査察団のヘリ奪取を策し、墜落の危機。 |
●査察団の立ち入りを拒む間にトラック持ち出したり、証拠隠滅工作。 |
●1997年、「機微な」場所、特に「大統領サイト」への立ち入り拒
否・・・・「大統領サイト」は全国に68カ所、ゴルフ場サイズのものも。 |
4.イラクの「実績」
●イラン・イラク戦争でマスタード・ガスを5回、神経ガスを2回イランに使用。
●イラン・イラク戦争中に自国内のクルド族に対して化学兵器を使用。
●湾岸戦争中、化学剤・生物剤をミサイルに装填。(米国の報復警告で使用を断念。)
●ミラージュF1戦闘機から生物剤の散布実験。
5.なぜ中途半端な「調停案」ではダメなのか。
●「即時、無条件、継続的」な査察が不可欠。
場所を選定交渉している間に隠匿工作されてしまう。