◎台湾客の誘致促進 息長く続けたい次世代交流
石川県は今秋、台北での「旅行博覧会」に参加するなどして、台湾からの観光客の呼び
込みを強める一方、来春には中学生でつくる少年親善訪問団を台湾に派遣する計画である。日本統治の歴史的経緯もあって台湾の人たちの「親日」ぶりは際立っている。そのことは好調な小松―台北便利用にも表れているが、一方で世代交代も確実に進んでおり、相互に新しい世代の「日本好き」「台湾好き」を育てていく地道な取り組みが望まれる。
台湾のダムの父と呼ばれる八田與一技師を通じた石川と台湾の歴史的な縁の深さを次の
世代に伝えていくことは、この地の務めでもある。そのことも考えれば、八田技師の足跡をたどる少年訪問団の派遣は意義深い。訪問団を定期的に相互派遣する可能性も探りながら、石川と台湾の次世代交流を息長く続けていきたい。
親日の台湾をこれまで支えてきたのは、日本統治時代を知る「日本語世代」といわれる
人たちである。しかし、いつまでも日本語世代の「遺産」に頼っているわけにはいかない。
台湾の前駐日代表は、これまでの旧世代の日本理解に基づく関係を超え、双方の若者が
体験的な理解を深めて良い関係を築く大切さを説いていた。そうした青少年交流で石川は他の地域よりも役割を果たせるはずである。
当面の観光客誘致だけでなく、青少年の訪問団派遣や修学旅行による交流にもさらに力
を入れたい。台湾の若者はアニメやテレビ映画など日本のポップカルチャーに強い関心を持っているが、歴史・文化の豊かな石川、北陸を知ってもらえれば、まさに体験的な日本理解が深まることになろう。
台湾の馬英九総統は中国との関係強化に動き、対日関係では尖閣諸島の領有権問題で強
硬姿勢をみせている。このため反日イメージも強かったが、総統就任直前に金沢の訪問団も参列した八田技師の墓前祭に参加し、側近の新駐日代表も八田技師の墓を訪れている。日本統治時代の功績を評価しながら日台関係強化の意思を示す台湾政府の姿勢は、とりわけ石川との交流に追い風となる。
◎キクイムシ対策 石川方式を国の標準に
常緑樹のカシや落葉樹のナラを立ち枯れさせる森の大敵、害虫キクイムシ(詳しくいう
と、カシノナガキクイムシ)対策で、石川県林業試験場は手間が掛からず、駆除効果の高い予防技術を開発した。
同じ悩みを抱える富山、福井両県も加わり三県連携で「石川方式」の有効性を広範囲に
検証し、国に補助事業として採択するよう働きかけることになったが、全国で猛威を振うキクイムシ予防における国の標準技術になることを目指したい。
キクイムシ対策は決め手を欠き、根の付近の幹をビニールシートで覆う方法や、幹に薬
剤を塗布するしかなく、前者の対策には樹木の形状による限界があった。そこで性能の優れた噴霧器を開発し、その噴霧器で樹木に薬剤(スミチオン)をかけてしみ込ませ、キクイムシがそれをかじって死ぬというのが石川方式だ。
キクイムシがカシやナラを好み、幹に穴をうがち、そこに卵を産み付けて繁殖する。ビ
ニールシートで幹を覆う予防法が広く用いられているのは、キクイムシが足を滑らせ樹木に近づけないからだが、結局はよそへ移動させるだけで、根本的な解決にはならない。
地球温暖化の影響もあるためか、キクイムシはものすごい勢いで北上を続けている。一
九九七年に石川と福井の県境の加賀市で初めて見つかり、それが白山ろくから口能登の羽咋市、中能登町の石動山、富山県や奥能登の珠洲市の山林へと広がった。富山県では魚津市の「水と緑の森づくり」などがキクイムシに手を焼いている。カシやナラが枯死すると、その実を食べてきたクマが腹をすかせて人里へ侵入してくる騒ぎにもなる。
里山を守る運動が盛んだが、キクイムシはその里山の景観の魅力となっている森に襲い
かかるのだ。二〇〇五年には石川県の天然記然物に指定されている白山市の「金剱宮社叢ウラジロガシ林」で立ち枯れが見つかった。約二十年前には同市の若宮八幡宮の市指定天然記念物の名木がやられて指定が解除となっている。