第13回 馬王4
- 「そこで勝つ馬より、長い目で見てプラスになる馬を見つけるのが大切です」荒井俊也
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東京都出身、50歳。印刷会社勤務のかたわら、X6800用のグラフィックソフト「マチエール」を開発。その後、競馬ソフト「馬王」をリリースし、現在はフリーのソフト作家。写真や囲碁を趣味とし、囲碁は対局用サーバを自宅に設置して公開中。
インタビュー記事 インタビュアー/市丸博司(2008/2)
「どう買っても同じ」中で
人気と実力のぶれを見極める
市丸: ホームページを拝見すると、的中実績ももちろん素晴らしいのですが、「どう買うか」という部分をとても大切にされているようで大変面白かったのですけれど、この「馬王」の予想では、なにがポイントになっているのでしょう?
荒井: まず極端な話をすれば、競馬って「どう買っても同じ」という部分はあると思うんです。「オッズ」がその馬の来る確率をある程度反映してますから、最終的にはどう買っても期待値は近いところに落ち着きますよね。
市丸: 単勝2倍の馬が2回に1回来れば100%、単勝100倍の馬でも100回に1回しか来なければ100%、ですよね。実際100%にはなりませんけれど、計算するとだいたい控除率を引いたあたりになりますよね。
荒井: そうですね。ただ、そんな中には「こういう条件に当てはまったときは期待値が高い」とか、逆に低いとかいうのがあって、それを見つけ出すのが「馬王」なのです。
市丸: 期待値ということは、長期的にみてどうか、ということですよね? 30回に1回しか来なくとも、単勝が40倍つけばいいじゃない、とか。
荒井:「今週しか買いません」という人なら、そこで勝つ馬を見つけるのが大事ですけれど、競馬を長くやるなら、長い目で見てプラスになる馬、期待値が100を超える馬を見つけるのが大切ですよね。ですから、様々な根拠から「こういう馬がこのパターンでオッズが高いというのは過小評価されている」といったものを見つけるのです。
市丸: 予想は本命サイドではなく、穴の方が多い感じでしょうか?
荒井: 本命サイドは皆さんよく研究されているので、あまり「ぶれ」がないんです。ただ、穴の方になると3割くらいのプラスマイナスはあるので、やはりこちらの方が狙いになりますね。
市丸: 人気薄だと、あまり深く考えずに「あ、この馬は要らないや」ってすぐ切っちゃったりする、ということですかね。
荒井: そうかもしれませんね。いずれにしても、人気薄の方が「ぶれ」があるのは確かですし、「馬王」は「人気薄のオッズのばらつきを拾い上げるソフト」と言ってもいいかもしれません。
市丸: 予想はどんな要素をもとにして行っているのですか?
荒井: タイム指数というものがありまして、「このメンバーで、この条件で走ったらこのくらいの時計を出せるだろう」ということを過去の成績などから推計しています。絶対値で他の馬と比較する「スピード指数」とは違う形ですね。買い目を出す際はこれに手を加えてゆくのですが、タイム指数上位の馬を買うだけでも、去年あたりからの成績を単勝5倍以上の馬で計算すると、予想タイム1位の馬で84%、2位で89%くらいの回収率になります。単純に1番人気や2番人気を買うよりは上になりますね。
市丸: そこに手を加えて、最終的な買い目では100%を超えてくる、と。素晴らしいですよね。ほかに、一般的にはたとえば馬体重の変動とか、騎手の乗り替わりとかも気になりますが、そういった要素は…。
荒井: 加味することもできますけれど、そういった要素は最終的にオッズに反映されている、という考え方の方が大きいです。
市丸: その予想やオッズから最終的に買い目を決定してIPATで投票する、という部分まで「馬王」では自動化できるそうですが、買い目や金額などはいろいろ変えることができるのでしょうか? そのときの懐具合とか(笑)。
荒井: それはかなり柔軟に対応できますね。私は「そのときの口座残高の何%を〜」というような設定をしていますし。具体的には「SQL」というデータベース参照言語を利用するのですけれど、この条件分岐を使って買い目や金額など「式」で表せればなんでもできる、と言ってもいいと思います。
市丸: 買い目を出す以前の、推奨馬を選定したり順位づけする部分から変えられるのでしょうか?
荒井: ええ、それもできます。いろいろ調べて、自分の式に反映できますから、過去のデータを調べて「儲かる式」を考えるのが面白い、という方も多いのではないでしょうか。
市丸: 最後に、「馬王」のここに注目して欲しい、というポイントを教えてください。
荒井: やはり、デフォルト設定のままでも高い回収率が期待できる、というのが第一ですね。もうひとつは繰り返しになりますが、ユーザが自分でカスタマイズして、かなり深く使い込める、という点でしょうか。
市丸: 本日はありがとうございました。