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夢のアジア大陸横断鉄道、実現の動きが活発化

  • 2008年09月15日 22:18 発信地:ノンカイ/タイ
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タイ北東部ノンカイ(Nong Khai)とラオスを結ぶ友好橋(Friendship Bridge)上に敷設された鉄道路線と並走するトラック
(2008年8月8日撮影)。(c)AFP/PORNCHAI KITTIWONGSAKUL

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【9月15日 AFP】アジアで1960年代に着想を得ながら、戦争や紛争、経済発展の遅れにより数十年間も棚上げとなっていたアジア横断鉄道(Trans-Asian RailwayTAR)網建設の動きが近年、活発化している。

 かつては夢物語だったアジア横断鉄道だが、2006年11月に開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)で、中国やロシアを含む18か国がアジア大陸を横断するTAR建設に向けた政府間協定を締結したことから、具体化に向けて動き出した。

■現代のシルクロード、内陸国もアクセス確保

 現在までに西はトルコ、ロシア、東はベトナム、韓国まで、29か国の一部の路線、総距離7万4700キロが敷設を終えた。全路線の連結までには、さらに約6200キロの敷設が必要で、UNESCAPはその費用を150億ドル(約1兆6000億円)程度と見積もっている。

 完成すれば、かつて東西を結んだ交易路シルクロードのように、シンガポールからロシアのサンクトペテルブルク(St. Petersburg)へ、カンボジアのプノンペン(Phnom Penh)から北朝鮮の平壌(Pyongyang)へと、広大なアジア大陸を横断する路線を人々や物資を載せた鉄道が往来することとなる。

 インドシナ半島の内陸国ラオスは、これまで国内に鉄道路線を持たなかったが、メコン(Mekong)川をはさんでタイ北東部とラオスを結ぶ友好橋(Friendship Bridge)上を走行する鉄道路線が2009年3月に完成する予定だ。橋をはさんでタイ側のノンカイ(Nong Khai)とラオス側のターナレーン(Tha Na Laeng)間はわずか5キロの距離だが、内陸国のラオスにとっては、鉄道による沿岸部へのアクセス手段を得ることなる。

 タイのバンコク(Bangkok)からラオスの首都ビエンチャン(Vientiane)までスパイスや種子などを運ぶ貿易商の男性は、これまでバス3路線とボートを乗り継いでいたが、一部でも「鉄道を利用すれば時間を短縮できる」と喜ぶ。さらにビエンチャンまで鉄道が延長されることに期待しているという。

■東南アジアとロシア連結の見通し、阻まれる東西への広がり

 しかし、路線が欠けている部分の大半は東南アジアで、国境をまたいで乗り入れのあるのはシンガポール、マレーシア、タイだけだ。タイ-カンボジア間には線路は敷設されているが、90年代まで続いたカンボジア内戦で荒廃してしまった。

 カンボジア公共事業・運輸省によると、アジア開発銀行(Asian Development Bank)が資金援助に乗り出しており、修復は3年以内に完了するというが、国境紛争のあるタイ間との再連結に関して合意は何もない状態だ。しかし、国連では2年以内にこの路線は開通すると見込んでいる。開通すれば中国を通過する2路線を持つベトナムへのアクセスが開け、東南アジアの大半とロシアが結ばれるようになる。

 一方、軍事政権が支配し貧困に苦しむミャンマーで、アジア各地とつながる鉄道の建設が実現する可能性はほとんどない。

 UNESCAP輸送部門で経済問題を担当するピエール・シャルティエ(Pierre Chartier)氏によると、韓国国際協力団(Korea International Cooperation Agency)が出資し、タイとミャンマーをつなぐ鉄道路線の実現可能性が検討されたが、コスト効果から見て好ましい結果が出なかった。ミャンマーの山がちな地形と軍事政権による鎖国的政策が、東南アジアからインドを抜け、イラン、トルコへと通じる路線の広がりを阻んでいる。

 一方でシャルティエ氏は、敵対関係にあった韓国と北朝鮮間で前年12月、朝鮮戦争以来初めて軍事境界線を越えて貨物列車が走行したように、障害が取り除かれれば不可能と思われていた事業も実現できると期待する。

■鉄道の再発見による新たな機会の到来
 
 TARの構想についてシャルティエ氏は、陸上の駅間を結び人や物資を輸送する大陸横断鉄道の敷設により、道路輸送への過剰な依存が軽減され、開発や雇用の創出、貿易や産業の繁栄がもたらされるとの見方を示した。また、昨今の地球温暖化への懸念から鉄道利用の見直しが重要と述べ、飛行機よりも鉄道での移動を選択する人々も増加するとみている。

 その一方で鉄道網の発達により、東南アジアを中心に暗躍する麻薬密売人や、女性や子どもの人身売買などがさらに横行しかねない負の側面についても、シャルティエ氏は懸念した。

 こうした問題について、国際NGO「ECPAT/ストップ子ども買春の会」のPatchareeboon Sakulpitakphonプログラムオフィサーは、鉄道駅周辺に発達する地域は、都市の脆弱性の温床にもなりうると警告する。「貧困層の人々は、新しい鉄道を暮らしを引き上げるチャンスとみなして周辺に移住するだろう。子どもの売買春に関わる者たちは、そうした地域に弱者が集まることを知っている」。

 同オフィサーは、大陸横断鉄道が通過する各地のコミュニティに、そうした犯罪の危険性を熟知させることが必要だと説く。また、援助国や支援金融機関は資金提供の引き換えに、社会問題に取り組むプログラムを条件付けなければならないと指摘する。しかし、横断鉄道による恩恵はそうした障害の克服をはるかに上回る価値があるとも評価する。

 UNESCAPでは、アジア諸国における政治的な後押しが得られれば、10年から15年以内には大陸横断鉄道の全路線が開通できるとみている。(c)AFP/Charlie McDonald-Gibson

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