登坂博行（工学系研究科・工学部助教授／環境水理学）［東大教師が新入生にすすめる本 2007年「UP」4月号より］
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『月と六ペンス』サマセット・モーム／中野好夫訳（新潮社、1959）
は印象深かった。妻子ある平凡な四十男がある日突然出奔し、絵を描き始める。すさまじい生活を経て南洋の島で果てるが、死後作品の価値が認められ、歴史に残る画家となったという話である。対訳で読んだので英語の勉強にもなった。
日本文学では、
『三国志』『宮本武蔵』『新・水滸伝』吉川英治（吉川英治歴史時代文庫、講談社、1989）
『孤高の人』新田次郎（新潮社、1973）
『親鸞』丹羽文雄（新潮社、1981）
が面白かった。これらは一冊目を買うと芋づる式に読める。全巻読んだ時の達成感をぜひ経験して欲しい。
その他、読書のコツは“速読後慮”、そして“多読”だと思われる。行単位ですばやく読める術を身につけよう。
�◆�『生命と地球の歴史』丸山茂徳・磯崎行雄（岩波書店、1998）
果てしなき空間や時間、我々はどこから来てなぜ存在するか、など、時には科学的・哲学的に広い視野で考えてみよう。地球環境がよくわかるようになる。また、科学雑誌（たとえば『Newton』『日経サイエンス』『科学』）も見識を広げる手助けをしてくれるだろう。
『東京の自然水124』廣田稔明（けやき出版、2006）
『なるほど！世界地図帳 最新版─複雑な現代世界を読み解く』帝国書院編集部（帝国書院、2003）
東京にも多数の名水や鍾乳洞がある。休日や夏休みに案内書を持って色々まわってみて欲しい。人間は都会に生活すると、周りの自然に無頓着になりがちである。本で得た知識を机上だけにとどめず、地図を片手に野外に海外にどんどん出て、山河から足下のゴキブリまで愛でられるような知的好奇心を養っていただきたい。
�� 『沙漠化とその対策』赤木祥彦（2005）
は、砂漠化の原因や実態など環境問題に関心のある方にはぜひお薦めしたい。
『身近な気象の科学』近藤純正（1987）
は、温室効果から生活圏の気象までが平易に解説されており、初学者にもよい。
�ぁ�『地圏の水環境科学』（東京大学出版会、2006）
『地圏水循環の数理』（東京大学出版会、2006）
水の大循環と陸域人間活動との関わり、現代および将来の水問題、陸域の地球科学的変化、水の流れの数理などを説明したもの。環境問題に関心のある方に読んでいただけると幸いである。