石垣琢麿（総合文化研究科・教養学部助教授／臨床心理学・精神医学）［東大教師が新入生にすすめる本 2007年「UP」4月号より］
� 〇笋虜任盥イ�な本は、
『罪と罰』（上・中・下）ドストエフスキー／江川卓訳（岩波文庫、1999-2000）
『白痴』（上・下）ドストエフスキー／米川正夫訳（岩波文庫、1994）
『悪霊』（上・下）ドストエフスキー／江川卓訳（新潮文庫、2004）
『カラマーゾフの兄弟』（上・中・下）ドストエフスキー／原卓也訳（新潮文庫、2004）
など、ドストエフスキーの後期作品群である。これらの小説を、さまざまな訳で何度読み返したかわからないし、その行為は今も断続的に続いている。読めば読むほどに、深遠で不気味で不可思議で神々しい世界が広がっていく快感に酔う。
『謎とき『罪と罰』』江川卓（新潮選書、1986）
『謎とき『カラマーゾフの兄弟』』江川卓（新潮選書、1991）
『謎とき『白痴』』江川卓（新潮選書、1994）
など江川卓氏による「謎ときシリーズ」や
『小説家が読むドストエフスキー』加賀乙彦（集英社新書、2006）
などの「体験談」は絶好のナビゲーターになる。また、
『評伝ドストエフスキー』モチューリスキー／松下裕・松下恭子訳（筑摩書房）
も素晴らしい解説書である。
�◆〇笋寮賁腓箸靴討い詢琉茵弊鎖整絣悗販彎何翰�学）では、クライアントに直接会わなければ何も見えてこないし、研究はクライアントの福祉のためにのみあるのであって「研究のための研究」は許されない。したがって、何を読んでも構わないが、頭でっかちになることだけは避けるべきである。フロイトやクレペリン、ブロイラーらの古典には何らかの形で触れておいたほうが良いだろう。また、現在の臨床心理学研究の広がりや手法を知るためには、
『講座臨床心理学』（全6巻）下山晴彦・丹野義彦編（東京大学出版会、2001-02）
を薦める。
�� 『心理学 第２版』鹿取廣人・杉本敏夫編（2004）
多彩な心理学の基礎を一冊で学ぶにはこの本が最も良い。科学としての心理学を是非知ってほしい。
『進化と人間行動』長谷川寿一・長谷川眞理子（2000）
心理学の発展型である「進化心理学」の最先端を知ることができるエキサイティングな本。
�ぁ�『幻聴と妄想の認知臨床心理学─精神疾患への症状別アプローチ』（東京大学出版会、2001）
認知臨床心理学による幻聴や妄想といった病理現象の解明と当事者援助への道筋を示した本。
『統合失調症の臨床心理学』横田正夫・丹野義彦との共編（東京大学出版会、2003）
統合失調症に対する臨床心理学に基づく研究および援助の広がりについて、わが国で初めてまとめた。
『統合失調症─基礎から臨床への架け橋』バーチウッド＆ジャクソン／丹野義彦との共訳（東京大学出版会、2006）
統合失調症の研究と援助法の開発では世界の先端をいく英国で最も優れた研究者兼臨床家である二人の手によるテキスト。