合原一幸（生産技術研究所教授／数理モデル学）［東大教師が新入生にすすめる本 2007年「UP」4月号より］
� 〇笋蓮∋椎阿覆�ら読む時間の大半を論文に費やしているため、読書に関しては受動的で、知人や友人からお送りいただいた本を読んで好著に出会うことが多い。最近印象に残った本を紹介しよう。
『国家の品格』藤原正彦（新潮社、2005）
数学者の藤原正彦さんの大ベストセラー。御長男の寛太郎君は私の教え子だが、これが実に好青年。私は子育書として本書を読んだ。
『天皇と東大』（上・下）立花隆（文藝春秋、2005）
本学特任教授でもある立花隆さんが、日本の近現代史と東大とのかかわりを論じた大著。自分がいかに歴史を知らなかったか、痛感させられる。
『現代人の倫理学』加藤尚武（現代社会の倫理を考える10、丸善、2006）
哲学者の加藤尚武さんは、鳥取環境大学の学長もされていたので実世界の諸問題にも詳しい。本書は人生論としても興味深い。
『論文捏造』村松秀（中央公論新社、2006）
村松秀さんは本学工学部出身のＴＶディレクターで、「環境ホルモン」という言葉の生みの親。最近は論文捏造問題に精力的に取り組んでいる。
『プロフェッショナル原論』波頭亮（ちくま新書、2006）
波頭亮さんは第一線で活躍中の経営コンサルタント。プロフェッショナルの厳しい掟と規範がよくわかる。「ゼロ泊二日の海外出張」は私には無理だと思う。
�◆〇笋慮Φ罎蓮∪い涼罎僚�現象の数理モデルを創るものである。ここでは脳と新型インフルエンザを取り上げよう。
『脳のなかの倫理』マイケル・Ｓ・ガザニガ／梶山あゆみ訳（紀伊國屋書店、2006）
脳研究は、ニューロエコノミクス、ニューロインフォマティクス等々急激にその領域を広げている。本書はニューロエシックス（神経倫理学）を知るためにぜひ読んでいただきたい本。
『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』速水融（藤原書店、2006）
新型インフルエンザへの不安が高まる中、この分野は好著が多い。中でも本書は、約90年前の日本におけるスペイン・インフルエンザの大きな被害を詳述している。「一村全滅」、「一家五人皆鬼籍に」「棺桶大払底」といった当時の新聞記事の見出しを見ると、「研究がんばらなくては」と身が引き締まる。
�� 東京大学出版会の本格的専門書のシリーズは、研究上たいへん役に立っている。
『がん研究のいま』（全4巻）鶴尾隆・谷口維紹編集代表、秋山徹・宮園浩平編集幹事（2006）
がんやその治療の数理モデル化は、私の研究室における最近の主要テーマの一つである。
『非線形・非平衡現象の数理』（全4巻）三村昌泰監修（2006）
この分野の様々な重要テーマが適度な深さで解説されている。
�ぁ〕燭┐蕕譴浸飜未�尽きたので、最近のものから書名のみ。
『脳はここまで解明された』（編）（ウェッジ、2004）
『〈一分子〉生物学』岡田康志との共編（岩波書店、2004）
『集める！ 私のコレクション自慢』（共著）、岩波アクティブ新書編集部編（岩波アクティブ新書、2004）
『脳科学入門（仮題）』神崎亮平との共編（東京大学出版会、近刊予定）