柳川範之（経済学研究科・経済学部助教授／金融・ミクロ経済学）［東大教師が新入生にすすめる本 2007年「UP」4月号より］
� �『マークスの山』高村薫（講談社文庫、2003）
言わずと知れた人気作家高村薫の代表作。この本を取り上げたのは、文庫本化にあたって行われた大幅な改訂作業に注目してもらいたかったから。失敗作を改訂するならいざ知らず、マークスの山は、直木賞受賞等既に高い評価を得た作品である。それを構成から微細な点に至るまで大幅に改訂してしまう著者の姿勢や執念には脱帽。どんな分野を勉強していく上でも、この姿勢はとても重要だと思う。というわけで、できれば単行本（早川書房、1993）と比較対照しながら読んでみてほしい。（大変だけど……。）
�◆〃从儚悗亡悗垢觸駟�は多数あるが、新入生の人達には、基本的な考え方や思考のプロセスが良く分かる書物を読んでほしい。基本的なところが一番大事だし、大学を卒業しても記憶に残っているものだと思うから。
『経済学的思考のセンス─お金がない人を助けるには』大竹文雄（中央公論新社、2005）
『戦略的思考の技術─ゲーム理論を実践する』梶井厚志（中央公論新社 、2002）
前者は、現実の様々な事例を基に、経済学の基本的な考え方、特にインセンティブの側面を重視して説明している本。後者は、いまや経済学において重要な地位を占め、他の学問分野でも重要性を増しているゲーム理論に関する基本的考え方を説明した本。いずれも、やさしく書かれているが実は内容は深い。
�� 『経済システムの比較制度分析』青木昌彦・奥野正寛編（1996）
『生産組織の経済史』岡崎哲二編（2005）
�△納茲蠢箸澆笋垢た圭颪僚駟�を挙げたので、ここでは少し難しいが学問の奥行きを強く感じさせる書物を二冊紹介。いずれも、経済学では通常扱わない「制度」に切り込んで分析をした名著。
�ぁ，海海任麓�分が「書いた」というよりは「関わった」というほうが近い
『経済の考え方が分かる本』新井明・柳川範之・新井紀子・ｅ-教室編著（岩波ジュニア新書、2005）
を紹介。ｅ-教室という、インターネットの掲示板上で議論しながら学んでいくというユニークな試みの中で、実際に行われたやり取りを基にまとめられたもの。中高校生の書き込みを中心としてまとめられているので、分かりやすく経済に関する考え方が理解できる。