宮岡洋一（数理科学研究科・理学部教授／数学）［東大教師が新入生にすすめる本 2007年「UP」4月号より］
� 崙察廚箸い�字には、なぜ首が含まれているのか？ 昨年他界された白川静氏の著書、
『文字逍遥』『文字遊心』（平凡社、1987、1990）
を読むと、ふだん何気なく使っている漢字が、奇怪至極なものに見えてくる。
『アーレント＝ハイデガー往復書簡』（みすず書房、2003）
暗澹たる時代における愛とその破綻の一形態として、記念すべきドキュメントだ。
�◆，泙困録震面椶某�学を勉強したい人に。学部新入生向けの数学入門書として挙げられる定番は、
『解析概論』高木貞治（岩波書店、改訂第3版、1983）
初版は1938年、時代を考えれば国際水準を抜く微積分教科書だったはず。実はこの本（増補改訂版）には多変数の扱いに杜撰なところもあるのだが、全体として眺めるとやはり格調高い名著だ。教養課程の数学において、微分積分学と並ぶもう一つの柱は線形代数。こちらの標準的教科書としては、
『線型代数学』佐武一郎（裳華房、1974）
『線型代数入門』齋藤正彦（東京大学出版会、1966）
が双璧。
以上は理工系の数学全般への入門書。もう少し進んだ数学を本格的に勉強したいという場合は、各人の興味に従ってその分野の専門書を読むよりほかなく、誰にでも通用する一冊を挙げろというのは無茶というものだ。しかしあえてと言われたら、
『代数関数論』岩澤健吉（岩波書店、1952）
を挙げておく。著者は整数論に「岩澤理論」という一分野を確立した大数学者。文語調、旧字体（ただし新仮名遣い）だから、いささか近付き難い印象を与えるかもしれぬが、味読すれば数学の美しさ、深さに驚かされるだろう。
数学そのものを本気で勉強する気はないけれど、数学者の発想がどんなものか関心があるという向きには、
『春宵十話』岡潔（光文社文庫、2006）
『情緒と創造』岡潔（講談社、2002）
『改訳 科学と方法』ポアンカレ／吉田洋一訳（岩波文庫、1953）
あたりがお勧め。数学もその現場は複雑微妙な心的過程の場であり、十人数学者がいれば十色の数学観があるはずだということを得心してもらえれば、ありがたい。
�� 専門分野からは少し外れた分野と、まったく関係ない分野から一冊ずつ、面白く読ませてもらった本を挙げておく。
『Ｄブレーン─超弦理論の高次元物体が描く世界像』橋本幸士（UT Physics2、2006）
大統一理論の鍵となるかもしれない「Ｄブレーン」をどんなものとして物理学者はイメージしているのか、少しはわかったような気にさせてくれる。
『日本美術の歴史』辻惟雄（2005）
「あそび」「かざり」といったキーワードによる日本美術早わかり。一昨年アメリカへ一週間出張する際、ナイトキャップにいいとこれ一冊を携行したら、二晩で読了、予定が狂ってしまった。東京大学出版会らしからぬポップな表紙は横尾忠則。オール・カラー480ページで2940円は、絶対のお買い得。
�ぁ＼戸茲良�無精、日本語による出版は、まだない。英語ならば
Geometry of Higher Dimensional Algebraic Varieties, Yoichi Miyaoka and Thomas Peternell, DMV Seminar Band26（Basel: Birkhäuser, 1997）