2008年09月02日
薬とフルーツの相互作用
お薬を飲むときにグレープフルーツジュースで飲んではいけない、と聞いたことはありませんか? グレープフルーツはある種の薬の血中濃度を高め、その結果作用が予想外に強まり、ときには副作用を招いてしまうのです。
つい先日の米国化学会で、グレープフルーツだけでなく、オレンジやリンゴにも薬との相互作用があるという報告がカナダからありました。しかも、これまで知られていたのとは逆に、薬の効き目を思いのほかに弱めてしまうというものです。この報告をしたのは、20年ほど前にグレープフルーツと薬の相互作用を初めて特定した研究者たちです。
この研究では、健康な被験者を3群に分け、抗ヒスタミン剤を服用させました。第1群はグレープフルーツ果汁とともに、第2群はグレープフルーツの苦味成分であるナリンジン1を加えた水とともに、第3群は水だけで服用しました。
その結果、グレープフルーツ群では、水だけで服用した群に比べ、薬が半分しか吸収されませんでした。ナリンジン群でも薬の吸収は阻害されました。
研究者らは、消化管の壁から血中に薬を運搬するタンパク質の働きをナリンジンが阻害し、薬の吸収が低下した、と報告しています。20年前の発見は、肝臓や小腸で薬を分解して代謝してしまう酵素をグレープフルーツが阻害し、薬の血中濃度が高まる、というものでした。今回は全く別の、しかも逆の働きです。
これまでのところ、グレープフルーツ・オレンジ・リンゴの果汁との相互作用が確かめられたのは、一部の抗がん剤、血圧降下・心臓発作予防薬、臓器移植の拒絶反応予防薬、抗生物質などです。しかし研究が進めば、影響を受ける薬の名前はどんどん増えることでしょう。
オレンジ果汁でナリンジン様の作用をするのはヘスペリジン2のようですが、リンゴ果汁についてはまだ特定されていません。
(今日のまとめ)
薬は水で飲むのが一番です。また、服用の前後にはグレープフルーツ3だけでなく、かんきつ類全般、リンゴなどのフルーツは避けた方が安心です。薬と食品の飲み合わせの詳しい情報はこちらにあります。
1 ナリンジンはグレープフルーツだけでなく、夏みかん、ダイダイなど苦味のあるかんきつ類に含まれています。
2 ヘスペリジンは温州みかん、夏みかんなどにも含まれています。またこのごろは花粉症の健康食品としても販売されていますのでご注意ください。
3 グレープフルーツの阻害成分はナリンジンだけではなく、しかもその作用は3日間続くと言われています。深刻な疾患で薬を飲んでいる間は、グレープフルーツはいっさい口にしないほうが賢明です。
(last updated 09/03/2008 B)