女のブリーフ・男のガードル【独女通信】

ミサさん（39歳）の最近のお気に入りはBVDのインナーである。もともと男性インナーのイメージが強いブランドであるが、最近はスーパーなどでも女性向けインナーを良く見かける。カジュアルなブラトップに、ボクサー風のパンツのセットがミサさんの定番。「フェミニンなランジェリーも嫌いじゃないけど、コットン素材のラフなものを着けるようになると、どうにも楽で。それになんかこう、やる気がでるんですよ。男っぽい下着って」と語る。

メンズ風のインナーの流行は、ボクサーパンツに留まらない。映画「チャーリーズエンジェル」でキャメロンディアスが着用して以来、女性の間でブリーフが流行。ガールズブリーフ、略して「ガルブリ」は若い女性を中心に既に認知された存在となっている。とある音楽番組で宇多田ヒカルがスパイダーマンのガルブリを愛用していると放映されたことも、人気に拍車をかけたのかもしれない。

どうして女性に必要のない「前開き」のついたブリーフをはくのか。問えば「可愛いから」以外の言葉は返ってこない。そういえば、女性用のふんどしも人気だと聞いている。女優の高樹沙椰さんも女性用ふんどしの愛用者だそうだ。男性からは断然不人気のメンズ風インナーであるが、「男性に受け入れられないこと」が返って女性の独立心をそそるのではないかと、ボクサーパンツ好きの筆者は勝手に考えている。

一方、レディスインナー大手のトリンプは、2006年、日本のメンズインナー界に革命をおこした。「ガードル」と聞けば、ぽてっと出たおなかと、下がり気味のお尻を補正するためにある「女性のための下着」のイメージだが、男性にもボディメイクのニーズがあることに着目。「メンズガードル」を売り出したのだ。売上は順調に伸び、今年の２月から発売された骨盤の開閉運動に着目した男性向けロングガードル「HOM（オム）骨盤のきもち」も、おなか周りを気にする男性の間で注目を集めている。海外でもメンズガードルは「マードル」と呼ばれ、認知度を上げているとか。

レディスインナーメーカーと言えば、ワコールも負けてはいない。以前からメンズの独自ブランドを展開してきたが、今年の３月に「クロスウォーカー」を発表、本格的にメンズ市場に参入した。この｢クロスウォーカー｣は、独自のクロス構造が、歩くたびに太ももの筋肉に適度なテンションを与えることにより、歩幅が自然と広がって筋肉を鍛えるというもの。初年度「20万枚」の売上を目標にしていたが、なんと３ヵ月で目標達成、９月末で50万枚に上方修正。爆発的人気に百貨店担当者も驚きを隠せない。

健康診断でメタボ予備軍の烙印をおされたマキトさん（38歳）も、この「クロスウォーカー」を愛用。「ワコールって女性のブランドのイメージあったから、最初は抵抗あったんですけど、履いてみるとフィット感がクセになりそう（笑）。まだやせてはないけど、歩くのが楽になった気はします」とのことだ。

ただ「メンズライク」なデザインを求める女性たちの「ブリーフ」人気に対し、男性の「ガードル」や「機能性ショーツ」人気は、あくまでメタボ対策の「実益」を重視している。レディスメーカー発だからといって、女性の下着を着けている感覚はなさそうだ。

やはり男性は｢フェミニン｣なものは嫌いなのかと思っていたら、「レディスライク」なメンズインナーを、とある通販サイトで見つけてしまった。ガールズブリーフの取り扱い商品数がネット最大級という「有限会社ぱらでぃ」（リンクhttp://www.bura.jp/）には、なんと「メンズビューティフルショーツ」「メンズスキャンティ」というカテゴリがある。レースやヒモやリボンのついた、ヒラヒラ、キラキラした華やかなショーツの数々。よもやこれを男性が身に着けているとは思えない。スタッフの方に「本当に売れてるんですか？」と聞くと、「特殊商品の為、このカテゴリーの商品だけを１度に５万円以上、ご購入されるお客様が沢山おり、中には10万円以上ご購入されるお客様もいる人気商品です」とのこと。

メンズスキャンティのニーズがどこにあるのかはわからないが、それを聞いても「ヤダ」「気持ち悪い」などと言ってはいけない。「ガールズブリーフ」や「女性用ふんどし」を認知した時点で、「メンズスキャンティ」を受け入れなければ、男女平等とは言えないからだ。見えないところで、何を身に着けていようがそれは個人の自由。ただし、メイクラブのときはお互いに、相手の気持ちを萎えさせないインナー選びを心がけたほうが良さそうだ。（オフィスエムツー／真鍋しまこ）