毎日新聞東京本社の正面玄関。毎日新聞の紙面は、読売などと比較すると評価すべき点もあるが、販売局はきわめて問題が多い。モラルの欠落が指摘されている。
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公取に「押し紙」を取り締まる意思はないとの見方が定着している。2月20日、毎日新聞・箕面販売所の杉生守弘所長が、「押し紙」の存在を立証する販売局長の文書を手に公取委を訪れたが、やはり職員たちの反応は鈍かった。そればかりか、杉生所長の再度の質問に対し、毎日新聞社の上田薫販売局長は2月27日付で、押し紙を受け入れねば販売店を改廃する、という驚くべき内容の“脅し文書”まで送付してきた。
【Digest】
◇毎日新聞社は明らかな独禁法違反
◇「押し紙」に踏み込まない公取委
◇5年契約でプラズマテレビ
◇減紙の申し入れを拒否
◇「押し紙」断ると改廃も
◇著作権法について(記者メモ)
「押し紙」を摘発する基準について尋ねたわたしに対し、公正取引委員会総務課(大阪市)の職員はこう答えた。
「独占禁止法に基づいて『押し紙』に対処するかどうかは、個々の販売店との取り引き関係だけを見て決めるのではなくて、本社サイドで組織的に違法行為を行っているかどうかを判断材料にします。当事者間だけのドラブルであれば、独禁法の問題には発展しません。行為がどれくらいの広がりを持って行われているのか、あるいは公正な市場競争が阻害されていないかどうかを公取委としては、まず見極めます」
ちなみに「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して、買い取りを強制する新聞のことである。新聞社から販売店へ搬入される朝刊の部数は、全国で約4500万部である。しかし、この全てが配達されているわけではない。わたしの推定で、平均4割ぐらいは配達されないまま破棄される。
この「押し紙」によって、新聞社は2つのメリットを得る。まず、第1に販売収入の増加である。第2にABC部数の嵩上げである。これにより紙面広告の媒体価値を高める。
こんなふうに「押し紙」は、新聞社を支える屋台骨と言っても過言ではない。
公取委の説明は、新聞社が販売店に対して「押し紙」を強要していても、それを摘発するためには、ほかの要素を満たさなければならないというものだ。繰り返しになるが、ほかの要素とは組織的な行為であること、さらに市場競争を阻害していることである。ただ、「決して、『押し紙』を取り締まる気がないということではありません」とも強調している。
◇毎日新聞社は明らかな独禁法違反
今年の2月20日、毎日新聞・箕面販売所の所長・杉生守弘さんは、大阪府中央区にある公取委の事務所を訪れた。同伴したのは、杉生さんの「押し紙」裁判を支える位田浩弁護士である。
杉生さんが問題にしているのは、800部しか新聞を注文していないのに、毎日新聞社が900部を送りつけ、しかも「押し紙」部数の卸し代金を請求していることである。杉生さんは、このような実態の是正を求めて、毎日新聞社の上田薫販売局長に繰り返し、書面による申し入れを行ってきた。しかし、是正には応じてもらえない。そこで公取委に「押し紙」を告発したのである。
公正取引委員会が定めた新聞特殊指定の第3項には、禁止事項として次のような条項がある。
発行業者が、販売業者に対して、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。 1、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む。) 2、販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。 |
これらの条項から判断すると、毎日新聞社は明らかに新聞特殊指定に違反している。とりわけ「販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む」という記述は、どの角度から解釈しても杉生さんのケースに当てはまる。
しかし、結論から先にいえば、それにもかかわらず公取委との交渉は何の成果ももたらさなかった。問題の解決には結びつかなかった。
杉生さんに同伴した位田浩弁護士は次のように話す。
「『押し紙』の調査をするためには、杉生さんと同じような事例が他に必要だと言われました。ただ、今回は口頭の話し合いだけで正式に書面で杉生さんの『押し紙』問題を報告していません。近々その手続きを取る予定にしています」
位田弁護士のコメントでも明らかなように、公取委は個々の販売店が直面している「押し紙」事件だけでは動かないという立場のようだ。
このようなスタンスを販売店主らはどう受け止めているのだろうか?
◇「押し紙」に踏み込まない公取委
公取委に対する不信感を秘めているのは、杉生さんだけではない。たくさんの新聞販売店主らが、公取委に対する苛立ちを感じているようだ。なぜ、「押し紙」を取り締まらないのか?明らかな独禁法違反ではないか?
店主らは、そんな自問を繰り返しながらも、実はその答を推測している。たとえば、ある店主はこんなふうに話す。
「公取委もしょせん役人の集まりです。表向きは正義の味方のような顔をしていますが、踏み込んではいけない一定の領域があることも心得ているのでしょう。変なたとえになりますが、新聞人の自粛と同じです」
公取委の委員長は、内閣総理大臣によって任命される。つまり公取委は権力構造の一部に組み込まれており、基本的に政府の意向に反した方針を取るとは思えない.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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「北田資料」に示された「押し紙」の実態。『新聞ジャーナリズムの正義を問う』(リム出版新社)より。
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杉生さんが上田局長へ送付した内容証明。注文部数が800部であることが明記されている。 |
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毎日新聞社の上田局長が杉生さんに送った内容証明。「4」の部分で、改廃をほのめかしている。
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