【怪奇大作戦】     怪奇大作戦
俺なりのストーリー説明(19〜26話+1)です。
わかりにくく、さらに見にくいかもしれませんが我慢してくださいませ。

19  20  21  22  23  24  25  26  NG2


 
【第19話:こうもり男】 1969.1.19 制作第21話
●脚本:上原正三 監督:安藤達巳 特技:大木淳
こうもり  的矢所長の一人息子・浩一の誕生日をあさってに控えた1月12日、所員たちはプレゼントの戦闘機や戦車のプラモデルを組み立てていた。勤務時間も終わり、家路につこうと建物の外へ出たその時、突如として襲いかかってきたコウモリの群。本部の窓に映る人影を追って本部内に戻る一同。だがそこには誰もいなく、こうもりのはく製と「119」と書かれたなぞのメモが残されていた。
 翌日。SRIへの挑戦かと怪訝に思う本部に、『こうもり男』と名乗る輩から、13日17時、渋谷ハチ公前に現金一千万円を持ってこいとの電話がかかってきた。張り込もうと言う町田警部だが、牧は無視しようと言う。相手の出方を待つ作戦だ。その夜、14日13時にラグビー場に現金二千万円を持ってこいとの第2の挑戦状が。
 14日。空のアタッシュケースを置き、受け渡し場所であるラグビー場の観客席に張り込む大勢の警官とSRI。そこへバイクで現れたこうもり男。包囲され、もはやこれまでかと思われたその時、マントを広げ、装着したジェット噴射で空へと逃げてゆくのだった。
 浩一の誕生会も放り出し、三沢と共に犯人探しに勤しむ的矢は、三鷹署在籍時に扱った岩井勝一郎とこうもり男とが似ている事に気付く。友人を殺害し自殺に見せかけようとしたが、的矢の科学捜査がそれを暴いたのだ。
 一足先にと的矢家に向かった野村、さおり、牧の三人。浩一宛に届けられたラジコン戦車を動かしたとたん、部屋に飛び込んでくるこうもりの群れ。牧の気転で戦車を壊すと、リモコン仕掛けのこうもりも床へ落下した。
 町田警部の調べで、岩井は1年前に脱獄していたことがわかった。こうもり男の正体が岩井であり、その狙いが自分であると確信した的矢は岩井の家を訪ね、岩井の妻・佐知子に事情を聞くことにした。しかし佐知子は2年前に死んでおり、それを知らない的矢は、佐知子に化けた岩井本人の罠によって捕らえられてしまう。薬入りの茶を飲まされ、意識を失ってゆく的矢。
 「
 その翌日、さおりの手にした新聞に的矢所長の葬儀の告知が掲載されていた。

 普段は第三者的に事件に介入するSRI。だが今回はSRI対犯人、いや、的矢忠対岩井勝一郎という個人対決だ。そしてターゲットとなった今回の主役・的矢所長。警察時代の事が語られたり、普段は描かれる事のない家族構成なんかも判る、地味ながらもなかなか興味深いエピソードでもある。子供の誕生日までをも利用するこうもり男。その魔手により恐怖を味わう家族を優しく、そして強く守ろうとする父親・的矢忠。

不敵に笑うこうもり男  葬儀の最中に的矢は息を吹き返す。薬物で一時的に仮死状態にされていたのだ。
 急ぎ岩井家の茶室を調べる警察とSRI。柱に無造作にナイフで止められたカレンダーに気付く的矢。ナイフは19日の箇所に刺さっていた。佐知子の命日は1月20日前後…。
 19日の晩。この事は自分が片を付けなくてはと考えた的矢は、三沢らの身辺ガードも断り、単身個人行動に出た。だが、またもこうもり男に捕らえられ、スクラップ置き場でピンチに陥ってしまう。しかし、「119」が日付であることに気付いた牧が車に発信器を仕掛けており、その信号を頼りに駆けつけたメンバーたちに的矢は助けられる。
 SRIと警察に囲まれてもまだ余裕があるというのか、こうもりさながらに鉄骨に逆さにぶら下がり嘲笑うこうもり男。鉄骨のすぐ上に高圧電線が通っていることに気づいた的矢は、足元にあった鉄の棒を電線めがけて投げた。鉄の棒を伝わり高圧電流がこうもり男の体に流れ、こうもり男は転落した。

 シリーズのテーマである『科学犯罪』っぽい場面がないため、どうしても地味に思えてしまう今回の話。それと、「人喰い蛾」の蛾といい、今回のこうもりといい、もうちょっと上手く作れなかったのかな、と言うのが正直な感想。今の目で見るからか、すごくちゃちく見えてしまう。操られてるこうもりはリモコン仕掛けという事だが、それでも本物っぽく見せるのならせめて羽ばたきはさせてほしいなと。グライダーのように飛ぶこうもりはやはりちょっと不自然。
 こうもり男の最期だが、あれやっぱ死んでるんかね。死んじゃってたら所長、殺人じゃないのか?生き死には別として、壮絶と言えば壮絶だけど、それでもやっぱマヌケな感じに見えてしまう最期でした。
 こうもり男・岩井役に伊藤惣一氏。所長の妻・敏子役で三田登喜子氏。
 さて、こうもり男の残した「119」。的矢所長への死刑宣告日でもあったわけだが、実はこの回の放送日が19日であるという遊びも含まれているのであった。時代設定だけでなく、今回は事件と放送日がリアルタイムなんですね。


 
【第20話:殺人回路】 1969.1.26 制作第22話
●脚本:市川森一,福田純 監督:福田純 特技:佐川和夫
ダイアナ  神谷商事の社長室。社長の清五郎と息子である専務の清一郎が口論をしている。社長の意見も聞かずに、コンピューター任せで勝手に事を運んでしまったからである。清一郎が部屋を出てゆくと、清五郎はコンピューターに再度意見を聞く。するとコンピューターは清五郎に対し、『あと30秒で死ぬ』と言う返事を出した。おどろく清五郎。すると室内に飾ってあったダイアナの絵からそのダイアナが抜け出してきた。その様子に驚き、ショック死する清五郎。
 一週間後、的矢所長の元に、神谷商事に勤める旧友・伊藤大助から電話が入った。話があるのですぐに会いたいという伊藤の誘いに神谷商事に出かけてゆく的矢。伊藤は、先代社長の初七日の晩に社内で女の幽霊を目撃し、しかもそれは社長室に飾ってあるダイアナの絵に瓜二つだったというのだ。友人からの相談では放っておけないとばかりに、自ら事件解決に乗り出す的矢だった。
 その頃神谷商事社長室では、二代目社長となった清一郎とコンピューター・プログラマーの岡が密談をしていた。伊藤が近い将来自分のライバルになるとコンピューターが予想した事、さらにダイアナを見られた事も知っていて、清一郎はその口封じにと岡にダイアナを使って伊藤を殺せと命令していたのだった。しかし岡は、伊藤に亡き父の面影を見いだしており、そのため殺すことが出来なかったという。岡を信頼していると励ます清一郎だが、部屋を出てゆく岡を見る清一郎の目は冷たかった。
 夜の神谷商事ビルに入り込む的矢と、それに同行する牧。社長室に入った二人の目前でダイアナが絵から抜け出てきた。そして二人には目もくれず、コンピューター室の岡の元へと向かっていった。

ダイアナに狙われる岡  コンピューターを駆使した科学犯罪話で、油絵に見せかけたCRTディスプレイに表示されたダイアナが半実体化して殺人を犯すという、なかなか見事なトリックだ。現代では立体画像の表示も可能だが、それでも映像装置から離れてしまっては画像は消えてしまうし、ダイアナの攻撃にしてもこっちが触れる事が出来ないのに、ダイアナの攻撃だけが一方的に有効なのもその仕組みが不明瞭だ。コンピューターがまだ“とんでもなくすごいもの”と思われていた時代の考えか。

 ダイアナに襲われる岡と一緒にエレベーターに逃げ込む牧と的矢。しかしダイアナはエレベーターの壁をくぐって現れ、岡に向かって矢を放った。絶命する岡。岡が死の直前にパンチカードを抜き忘れたと言った事から、的矢はコンピューターが事件に絡んでいるとにらみ、映像表示装置であるCRTディスプレイの調査に取りかかった。
 翌日、社長室にやってきた清一郎の前に、操縦者がいないはずのダイアナが現れた。先代社長を殺し、操縦者の岡も殺したダイアナは、その殺人の秘密を知っている清一郎をも殺すと言った。誰にもしゃべらないと清一郎が言うとダイアナは姿を消し、そのとたん的矢所長と町田警部が部屋に入ってきた。的矢の追究をとぼける清一郎だが、ダイアナの秘密を暴かれ、逃げようとするも逮捕されてしまう。操縦者の岡亡き後のダイアナ、それは牧とさおりによって操作されていたのだ。

 的矢所長の旧友・伊藤大助役に、円谷作品ではウルトラマンレオの高倉司令官役などを演じた神田隆氏。時代劇では悪役でおなじみの人だ。ダイアナ役に、松竹映画「吸血鬼ゴケミドロ」のキャシー・ホーラン氏。「ウルトラセブン第7話/宇宙囚人303」でのガソリンを買いに来る外人女性役もこの人。先代社長・神谷清五郎役には、「戦え!マイティジャック」のゼネラル藤井や「ミラーマン」の御手洗博士役の宇佐美淳也氏。哀れなコンピュータープログラマー・岡役に杉裕之氏。この人は第2話「人喰い蛾」で、船上で蛾に殺されてしまう倉本技師役も。
 そして2代目社長・神谷清一郎役には、「ゴジラ」の芹沢博士、「ウルトラマン」の岩本博士、はたまた「レインボーマン」の悪の幹部・ミスターKなどでお馴染みの、ミスター博士・平田昭彦氏が出演。
 尚この話は、市川森一による脚本を福田監督が一部の設定を残して大幅改訂したもので、元々の市川脚本に近い話は桑田次郎版のコミックスで読むことが出来る。


 
【第21話:美女と花粉】 1969.2.2 制作第23話
●脚本:石堂淑朗 監督:長野卓 特技:的場徹
 事件もなくヒマを持て余したSRIのメンバーたち。唯一予定のないさおりと一緒に喫茶店へ行く牧。店内で談笑する二人。すると少し離れた席に座っていた女性が急に苦しみだした。女性の身体はみるみる黒く変色し、そして倒れた。
変死した女性  調査をしようする牧。だが店内で唯一彼女が口にした水は、牧の目の前で店長に飲み干されてしまう。店長に異常はなかった。
 SRI本部に戻った牧とさおり。他に彼女が触れた物として、持ち帰ったおしぼりを調べた。するとおしぼりからは有機質の粉のようなものが検出された。しかしそれが何なのかはわからなかった。
 翌日、会員制の喫茶店で第二の事件が発生。町田警部からの電話ということで的矢所長と、付き添いでさおりが現場に向かった。今度の被害者は男性。症状は女性と同じだった。残された被害者の友人である男性客が皆、マニキュアを付けていることにさおりが気付いた。
 牧と野村は死因解明のために医学研究所を訪ねた。博士は、人間の皮膚が色素破壊されたことによって皮膚呼吸が止まり、窒息したのではないかという。また、足の爪よりも手の爪がボロボロになっている事も特徴の一つだった。この事と、第二の事件の男性被害者もマニキュアを付けていたことから、SRIではマニキュアが関係しているとにらんだ。検出された粉とマニキュアを使っての実験で、その現象の再現に成功する。原因はおしぼりから検出された有機質の粉で、これを混入させた者こそが犯人だ。
 警察からの報せで、第二の事件現場でおしぼりを使わなかった三人の女が絞り出された。

 美しさを妬んだ者によって、いわれのない仕打ちを受けた。被害者は体だけでなく、心にも深い傷を受けてしまった。そして美への無差別な復讐に出た。
 飛躍しすぎかもしれないけど、いじめ事件でよくある「自分がいじめられたから、腹いせに他のやつをいじめる」と言うのと似てませんか、これ?

 三人の容疑者を、野村、牧、さおりがそれぞれを尾行する。野村と牧の方は見たて違いに終わる。女の勘で大山伸子を怪しいとにらんださおりは、喫茶店、繁華街と伸子の後を追い、的矢と牧と合流する。
怪奇植物と伸子  伸子の友人と偽り、伸子の父の経営するトルコ風呂の屋上に設けられた温室に潜入するさおり。しかし伸子はさおりの尾行に気づいており、逆にさおりは捕まってしまう。身動きできないさおりに、熱帯地方に咲く、怪奇植物の花粉の化学反応を応用した殺人である事と、そして自分の犯行に及ぶまでの境遇を話す伸子。その同機とは、自分の美を妬んだ女にかけられた硫酸で胸元に大やけどを負い、そのために結婚が出来なくなった事で、それ以来若い女に嫉妬し、花粉を使っての殺人を思いついたと言う。
 ジワジワとさおりに歩みよる伸子。だがさおりのとっさの行動で伸子は不意をくらい、その隙に牧と的矢が部屋に踏み込んだ。それでも捕まることを拒んだ伸子は死を選び、マニキュアを垂らした怪奇植物に身を投じるのだった。

 に恐ろしきは、女の美への執念でしょうか。伸子の美を妬み硫酸をかけた女もそうだし、かけられた伸子もその復讐の矛先を犯人にではなく、社会へと向けちゃってるし。
 一応子供向け番組(少なくともこの当時のタケダアワーという枠はそうでしょう)である本作。今では考えられないほどに煙草を吸う描写が出てくるわ、さらにこの回では、さすがに店内こそ出ては来ないがトルコ(今で言うソープランド)が出てくるわ。伸子の火傷を見て言い寄った男たちがみんな去っていったと言うセリフも、深読みしようと思えば男女の事かとも受け止められる(火傷の事から、自分から海やプールに行くとは考えられない)。どこが子供向けだと(笑)。
 大山伸子役の田島和子氏は、この当時は草野大悟(第5話ゲスト)夫人であったとの事。会員制喫茶店のウェイター役として「人造人間キカイダー」でハンペンこと服部半平を演じた植田俊氏が。
 さてこの時代、男も化粧って、当たり前だったんでしょうか?あたしゃ本放映当時はまだ生まれてないのでよくわかんです。電話ボックスが、俗に『丹頂鶴』と呼称される旧型だったり、出てくる人たちの服装が昔のだったりで今見ると面白いですね。街並みも路面電車の電線が張られてたり。


 
【第22話:果てしなき暴走】 1969.2.9 制作第24話
●脚本:市川森一 監督:鈴木俊継 特技:佐川和夫
排気ガスを吐く赤いスポーツカー  深夜の道路を走る車、車、車。排気ガスを吐き出しながら走り去る赤いスポーツカー。そのガスを浴びた後続車たちのハンドルが乱れる。事故、事故、事故!
 翌日。三沢は、立ち寄ったガソリンスタンドで電話をかけている間に、トータスをフーテンカップルに盗まれてしまう。
 本部からトータスに停止命令を出すが、説得も聞かずトータスを暴走させ、自分たちはこれから心中するつもりだとうそぶくフーテンカップル。その脇を大量の排気ガスを吐き出しながら走り去る赤いスポーツカー。その排気ガスを浴びたフーテン男・タケシの運転は次第に荒くなり、トータスは狂ったように走り続ける。恐くなり、死にたくないと言い出すフーテン女。暴走を続けるトータスは、人身事故を起こした末に、やっと止まった。
 現場に駆けつけ、フーテンを殴りつける三沢。事故の被害者の女子大生は即死であった。
 翌日。友人の紹介で中古車を買った野村は、気分転換にと三沢をドライブに誘った。はじめは好調だったドライブ。だが、脇を走り去る赤いスポーツカーの排気ガスを受けた野村も狂ったように暴走を始めるのだった。

乗っ取られたトータスと赤いスポーツカー  SRIの万能カーとして作られたトータスの登場する数少ないエピソードです。
 近代社会の象徴ともいえる自動車。その数は、一人一台にもなろうというほどで、よほどの道でない限り、どんな道でも自動車は進入してくる。もしそれらの車が一斉に暴走したら…。
 今はどうだかわからないが、この作品が作られた昭和43〜44年当時は、『』という時代だったようです。フーテンの運転するトータスで犠牲になった女子大生のことを考える三沢を、牧はこの言葉を用いて「運がなかった」と言い聞かせる。釈然としない三沢。運転者が自分のミスで事故を起こすのなら本人の責任だろうが、その犠牲となるものには何ら責任はない。まこと、運がないとしか言い切れないだろう。

 三沢の記憶を頼りに、赤いスポーツカーの所有者がタレントの眉村ユミであることがわかった。ユミの車を調べた結果、オイルの中に神経ガスの一種であるGガスが混入されていた。車の整備については、専門の担当者がいるとマネージャーは言う。その晩、駐車場で整備担当者を見張ることに。だがもう一歩と言うところで逃げられてしまう。急いで後を追うが、そこには整備係の男が倒れていた。男の前を走り去る車。
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 こう言い残して男はうなだれる。男を運ぶ救急車の中で考える三沢と的矢。
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 結果として未解決に終わる、何とも後味の悪い一本であります。しかしダメ話ってわけじゃありませんので、未見の方ご安心を(人にもよるだろうけど)。『恐怖人間的キャラクター』がいないため、他の話と比べて地味目な感じに思えてしまうんでしょうか(ウルトラQの「1/8計画」とか「あけてくれ!」みたいなものか?)。それでも分類すれば科学犯罪で、怪奇大作戦本来のテーマに沿った話だと思うんですけどね。
 未解決と言うことでの最大の謎はその犯人。整備係を轢いた車の運転手もわからずじまい(=真犯人とは別?運転はユミのマネージャーか?)。見ようによっては怪しくも見える、タレント眉村ユミ。彼女は事件に関係あるのだろうか(ペロペロキャンディーを舐めたりするその姿は、純心と言うよりも、少々足りないようにも…)。
 シナリオ段階ではその後味の悪さをさらに引っぱるこんな展開も。
 轢かれた整備係と、つきそう三沢と的矢を乗せた救急車。ふと、そのスピードが出しすぎではないかと言い出す三沢。だが的矢はそれを救急車だからと言い返す。
 はたして救急車は緊急時だからと速度を上げて走っているのか。それともあの車が救急車の前を走っていったのか…。

 眉村ユミ役の久万里由香氏は、真理アンヌ氏(ウルトラマン・第32話ゲスト/ウルトラセブン・第34話ゲスト/マイティジャック・弓田エマ隊員)の実妹。余談だが、その真理アンヌという名前がウルトラセブンの友里アンヌの命名元。ユミのマネージャー役には近藤宏氏。フーテン男・タケシ役は、「キカイダー01」のガンモこと百地頑太夫の久里みのる氏。
 女子大生の死亡はあくまでも事故であるためか、今回は町田警部が登場せず。トータスを盗んだフーテンも捕まったしで、町田警部としては興味ナシ?

 それにしても、給油中に車を盗まれちゃう三沢も三沢だけど、GS側にも問題あるんじゃないのか?とりあえず教習所でこのビデオ見せるってのはどうだろう?


 
【第23話:呪いの壺】 1969.2.16 制作第16話
●脚本:石堂淑朗 監督:実相寺昭雄 特技:大木淳
目が…!  穏やかな京の町。自宅縁側で趣味の骨董品を眺める老人。壺の表面を磨き、その中を確認するために日の光を当てる。次の瞬間、老人は目に強い衝撃を受け倒れた。
 ここ数日の間に同様の事件が多数起きていた。怪事件という事で調査を依頼されたSRI一行(今回さおりはいない)と町田警部。被害者の共通点は神経線の異常、特に視神経がぼろぼろで、外傷の特徴は目のまわりの火傷。
 府警を出たSRIの前に、被害者たちが壺を買った「市井商会」という骨董品店の従業員・日野統三という男が現れた。統三の案内で店に向かうSRI一行。店に着いたと同時に次なる事件の報せが。だが統三はそんな事どこ吹く風、急に実家へ戻ると言い出し、店主と口論になる。その様子を変に思った牧は、三沢と野村に統三を尾行をさせる。
 店主の一人娘・信子は、最近の父と統三の不仲に疑問を持ち、店を出た統三を追い、問うた。統三は何も話さずに信子を実家に連れて行く。横目で三沢と野村の姿を確認して歩き出す統三。
 実家に着いた統三。統三の父・統吉は信子を連れてきたことを責めるが、統三は、信子はみんな知っているから構わないと言いくるめる。
 市井商会の壺は統吉の手による贋作であった。専門家ですら見抜けない、本物以上の贋作。統三は父に、市井家への義理立ては終わらせ、自分の名の壺を作れと言うが、統吉は祖父の代から世話になっているため、今更勝手なことは出来ないと言う。それを聞き、市井家に対し何ともいえない気持ちになる統三、そしてそんな統三を見つめる信子。
おとうの腕は確かなもんや  自分も体が丈夫であったら統吉の跡を継ぐはずであったことを、咳き込みながら伸子に告白する統三。
 それが無理な統三は、伸子と一緒になることで自分なりの復讐をしようと考えていた。
 「
 「
 統三は近所の崖下を掘り、黒い粉を黒紙に包み始めた。不審に思う三沢と野村は、統三が去った後にその箇所を掘り起こし、出てきた粉を採取した。
 市井商会。粉を持ち帰った野村と三沢。その粉に的矢が不意に光を当ててしまい、目を押さえた。この事から、太陽光線に当てることにより強力なリュート線を出すリュート物質であることが判明。統三はこれを壺の中に塗っていたのである。

 第25話の「京都買います」とペアで俗に“京都篇”と呼ばれており、京都映画スタッフによる全面協力も手伝ってか、共に完成度の高い作りとなっています(23、24、25話が、シリーズ中の秀作と言われている)。

 統三の犯行を知り、統三のいる土蔵にのりこむ三沢と町田警部。
リュート線を目に受けてしまう統三  「
 大量のリュート物質を手に京の町を逃げ、妙顕寺に逃げ込む統三。走ったため息が上がっている。
 「
 激しく咳き込む統三。その勢いでリュート物質が舞い上がり、統三はリュート物質に巻き込まれ絶命する。風に舞い、寺の屋根に付着するリュート物質。太陽光を浴び、たちまち燃え上がる寺。後を追った三沢らは、燃え落ちる寺を見つめることしかできない。
 リュート物質。それは第2次大戦中に旧日本軍が作り出した放射性物質で、太陽光線を浴びるとリュート線という放射能を発する。それを作っていた旧陸軍秘密研究所は終戦の年に山崩れで埋まり、そのまま誰の目にも触れることはなかった。統三に見つかるまでは。
 事を知った統吉は、悲痛な声をあげて壺をたたき割った…。

炎上する妙顕寺  第5話から久々の実相寺作品。圧倒されるのは、何といっても終盤の燃える妙顕寺のシーンでしょう。山門から覗く炎上する寺の合成は見事なもので、逆に今の特撮番組では見ることの出来ない名シーンであります。この場面のあまりのリアルさに、番組放映後、檀家から確認の電話が殺到したとの逸話も残っています。というのもこの時のセットは、通常使われるミニチュアよりも大きめの1/6サイズ(通常は1/20)で作られているため、炎の描写がよりリアルだったんですね。(本当は1/4でと考えていたらしいが、金銭面で断念)
 さてこの話、石堂淑朗によるNG台本「平城京のミイラ」の代わりに用意された作品です。この「平城京のミイラ」は、甦った王朝時代の皇子「長屋王(ナガヤノオオキミ)」のミイラが巨大化し、黄金の光を放ちながら海上を歩いて船舶を襲うというストーリーだったが、制作費の関係でNGとなってしまったとのこと。しかし巨大ミイラというとどうしても怪獣の感は拭えないので、結果的には本作ではやらないで正解だったかと。

 日野統三役の花ノ本寿氏は、現在は日本舞踊花ノ本流の家元だそうです。実相寺作品では映画「無常」や「あさき夢みし」などにも出演してます。父親・日野統吉役に浮田佐武郎氏。同時期作品の「戦え!マイティジャック/くいとめろ人間植物園!」では植物に殺される博士役で出演。市井店主役に北村英三氏、娘・信子役に松川純子氏。
 Bパート冒頭、統三がリュート物質を掘り出すシーンのブーという音はSEではなくノイズ音。修正は困難だそうで、ビデオソフト類はこの音が入った状態でパッケージ化されている。でもこのノイズ音、なかなか場面に合っていると思いません?


 
【第24話:狂鬼人間】 1969.2.23 制作第25話
●脚本:山浦弘靖 監督:満田かずほ 特技:的場徹
狂鬼人間タイトル  深夜の操車場で戯れるカップル。短剣を手に近づくネグリジェ姿の女・ユキ子は、男を刺殺する。逮捕されたユキ子は精神異常者として無罪に。そして精神病院へと収容されたが、極短期間で正常に戻り、退院した。
 この流れに納得がいかない町田警部は、病院前でユキ子を見張る。そこで牧と出くわすが、正常に戻ったユキ子を見張っても無駄だと言われる。だが牧も疑問を抱いていたのだ。
 ≪刑法第39条 心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セズ
 またも起こる狂人たちによる殺人事件。その報せにSRI本部でカリカリする町田警部。
 「
 そんな町田警部をなだめる的矢所長。SRIでも事件に裏があるとにらみ、そのため牧にユキ子を尾行させている事を告げた。
 バスから降り、それいゆ洋装店に入っていくユキ子。女主人と何かの話をするが、すぐに店を追い出されてしまう。その様子を見ていた牧。
日本刀の狂人  その晩、ユキ子はまたも殺人を犯し、逮捕される。報せを受けて警察へ赴いた牧と的矢。一見狂人だが、精神鑑定で異常でないことが判明。牧たちの説得でユキ子はこれまでのいきさつを話し出した。恋人にふられ、それを苦に自殺を図るが死にきれず。担ぎ込まれた病院で出会ったそれいゆ洋装店の女主人・美川冴子。彼女こそが『狂わせ屋』であること。復讐をすすめられ、脳波変調機で一時的に気違いとなり、元恋人を刺殺したこと…。
 SRIは、牧がおとりとなって冴子を誘い出す作戦に出た。
 さおり扮する[恋人]と公園でデートを楽しむ銀行員[山本]こと牧。そこへ突っ込んでくる1台のスポーツカー。運転するのは野村扮する[スポーツカーの青年]。はねられた[恋人]は病院へかつぎ込まれるも死んでしまう。
 [恋人]の墓参りをする[山本]の前に現れた『狂わせ屋』美川冴子。[山本]が父の形見の軍用ピストルを手に、[恋人]を殺した[スポーツカーの青年]を探し回っていることを話し始め、そして憎い犯人に復讐をしろと迫ってきた。
 冴子は[山本]に自分の過去を話し始めた。夫婦揃って脳波の研究をしていたが、ある日、家に飛び込んできた狂人によって夫と子供を殺された。しかし刑法第39条によって犯人は無罪。冴子はそんな社会に怒り、復讐をするために脳波変調機を開発したのだった。[山本]は復讐を承諾した。
 犯行当日。機械をセットされ、身動きが出来ない状態の[山本]。そんな状態のまま、[恋人を失った銀行員・山本]ではなく[SRIの牧史郎]であること、今回の事は自分を捕まえるためのおとり捜査であることを冴子に暴かれてしまう。説得を試みる牧だが、とうとう狂人にさせられてしまう。

殺してやる!  シリーズ中、唯一の満田監督作品。現在放送禁止作品であり、なおかつソフト化も不可能とされてしまった作品であります。全話LD−BOXや、その前に発売されたLD「恐怖人間SP」がこれのために回収されたのはあまりにも有名。その扱いはウルトラセブン12話よりもシビアーで、ついに話数リストからも抹消されてしまった。(12話は新聞誌上で取り上げられるなど、近年その存在がややオープン化している感じだ。)

 狂人化した牧は、街を歩く[スポーツカーの青年]を発見し発砲する。抜いてあるはずの銃の弾が入っていることに驚き、必死で逃げる野村。その様子を見てほくそ笑む冴子。だが的矢とさおりに発見され、追いつめられてしまう。逃げられないと悟った冴子は自ら脳波変調機をかぶり、最大レベルで脳波を狂わせてしまうのだった。
 一方、牧は駆けつけた警官に取り押さえられ、野村は何とか無事に済んだ。数日後、牧は正常に戻った。しかし、急激に最大レベルで脳波を狂わせた冴子は、一生元に戻れないまま、隔離された世界で今日も空を見上げるのだった。

かぁらぁす、なぜなくの…  この「怪奇大作戦」は犯罪ドラマという事でか、今までのウルトラシリーズと比べて『気違い』とか『狂ってる』というセリフが多いです。つまり犯罪を犯す者=狂鬼人間という事でしょうか。
 人権問題や社会通念、過剰とさえも思える近年の言葉狩りなどの壁の前に、描写そのものが現代では通じず、ついに欠番となってしまいました。しかし現実社会では、まさに狂鬼人間の犯行としか思えないような事件が起こっており、そんな報道がお茶の間に流されています。そんな今の時代この話を封印する意味が果たして本当にあるのだろうか?確かに描写・内容的に問題と思われる部分があることは否めないが、放送は無理としてもソフト化だけでも作品の解禁を願いたいものです。

 ネグリジェの女・ユキ子役に和田良子氏。「戦え!マイティジャック」最終回で女ヒッピーを演じた人で、満田監督の推薦とのこと。狂わせ屋・美川冴子役に、姫ゆり子氏。青島幸男の「意地悪婆さん」で嫁を演じていたそうで、ウルトラマン80の第48話にもゲスト出演。
 そしてある意味、本編の主役とも言える狂人たち。中でも強烈な印象を残してくれる日本刀の狂人役を大村千吉氏が好演。この、“本物”と思えてしまうシーンだけでも一見の価値あり!大村氏は特撮作品だけでも結構な本数に登場しているので、一度気になったが最後、(特撮作品に限らず)映画やドラマなどで見かけると「出た!」とうれしくなってしまう役者の一人だ。(同類の人として江幡さんね。ウルトラQでラゴンに襲われる村人役の人。この人は時代劇が多いのかな。小悪党役多し)
 本来この話でメインを張るのは三沢だったが、演ずる勝呂誉のスケジュールが合わないため、岸田森演ずる牧にお鉢が回ってきたとの事。

 ところで『満田かずほ』の『かずほ』って漢字は特殊文字なんでしょうか。本とかだとちゃんと文字あるんですけどね。“のぎへん”に“斉”って字です。

 過日発売された「怪奇大作戦大全」には、各話の完成作品とシナリオとの相違点などが書かれていてなかなか興味深い。しかしこの話については欠番扱いと言う事で一切触れられてないため、シナリオとの違いがわからない。
 ところがこれ以前に発売されていた、「ファンコレ ウルトラQ/怪奇大作戦」を見ると、冒頭、ユキ子が元恋人を刺すシーンが列車の操車場ではなく、ゴーゴー喫茶での犯行となっている。もしかしたらシナリオではゴーゴー喫茶だったのかもしれない。
 オマケ。冴子の店の名前「それいゆ(soleil)」とは、フランス語で「太陽」だとか「ひまわり」なんて意味。
 オマケその2。ラジオから流れるあの曲は、ピンキラこと、ピンキーとキラーズの「涙の季節」という曲。


─放送未遂事件─
放送未遂

 ウルトラマンで始まった「円谷劇場」の第2弾として、2006年1月より東京MXテレビにて再放送開始。関東に絞ると何年ぶりになるのか、全国で考えてもおそらく20数年ぶりと思われる地上波放送。
 途中数回の放送休止週があったり、放送曜日の移動があったりもしたが、ほぼスムーズに放送はされていった。
 5月末に6月放送予定作品の更新がされ、なんと27日には「狂鬼人間」が放送予定に。しかし翌日には、別番組のために休止とページ更新されてしまい、結局24話は放送せず。(だが24話の紹介ページは残っていた)
 だが当初はMXとしては放送予定だったのか、各月刊テレビ番組誌を見ると27日には「怪奇大作戦」と書かれていた。上記画像は唯一サブタイトルを表記していた「テレパルf」より。
 尚、この時の放送では、いわゆるヤバ言葉はカットされずに「気違い」は「気違い」ときちんと放送された。エライ!


 
【第25話:京都買います】 1969.3.2 制作第17話
●脚本:佐々木守 監督:実相寺昭雄 特技:大木淳
 古式ゆかしい京の町。ここ数日起こっている仏像消失事件。今夜もまた一つ仏像が消えた。一般の盗難事件と違って人の出入りした形跡がないことから、SRIに調査依頼がまわってきた。
 牧は以前に消えた仏像たちを研究していたという藤森教授を訪ねるが、何も手がかりは掴めない。だが牧はそこで須藤美弥子という女研究員に出会う。どこか不思議な雰囲気の美弥子に見とれる牧。
 調査を切り上げた牧は、さおりにさそわれディスコへ出かけた。京都に来てまで踊りまくるさおりや、騒音の中で踊り狂う若者の気持ちが理解できない牧は嫌気がさしてしまう。そんなディスコの中で、若者たちから“京都を売ります”という署名を集める美弥子を見つける。
 ディスコから出てゆく美弥子を追い、何故そんなことをするのかを問う牧。すると美弥子は、京の町や仏像が好きだからと答え、走り去ってしまった。牧は平等院で美弥子を発見し、再度美弥子に問うた。仏像の美しさのわからない人たちから京の都を買い取り、その良さのわかる人たちだけの都を作りたいと言う美弥子。その考えが理解出来ないという牧に、仏像は自分だけのものと思いたいと話す美弥子。
牧と美弥子  「
 「
 茶店の縁台に座り、ぜんざいを食す二人。
 「
 「
 「
 「
 そんな不思議な美弥子に、いつしか牧は心惹かれていくのだった。
 またも起きる仏像消失事件。やはり人の出入りした形跡はないが、三沢が寺に仕掛けられた不審な機械を発見する。それは物質転送機であった。

 第23話「呪いの壺」同様完成度が高く、出演者たちからも子供向けとは思えない出来と讃えられる1本。怪奇大作戦のベスト・ストーリーを挙げろといわれたら、この話は外せません。完成直後は放送枠分を軽く超過しており(40分とも1時間とも)、泣く泣く場面をカットし放送用枠に収めたとのこと。監督曰く32分くらいのが一番面白かったとの事。う〜ん、見てみたい!
 元々この話は、佐々木守がTBS映画部の芸術祭ドラマ用として書いたSFドラマ企画「あをによし…」をベースに、怪奇大作戦向けにアレンジしたという一編。(「あをによし…」は、歴史のない新しい星の宇宙人が地球の歴史を買いに来て、若者がうっかりと奈良を売りますと署名してしまうという話。)

 仏像が消えた寺には、昼間必ず美弥子が訪れていることがわかった。翌日、牧は美弥子を尾行した。法性寺で仏像を見つめ、涙する美弥子。そんな美弥子を物陰から見張る牧。そして物質転送機を取り付ける瞬間を目の当たりにする。
 何とも言えない顔で京都府警に姿を現した牧。その手には、美弥子が取り付けた物質転送機があった。作動時刻は深夜12時。今すぐに踏み込もうと言う警察に、現場を押さえた方がいいと言う牧。
転送される仏像  深夜12時。藤森教授や美弥子、読経をあげる僧侶たちの見守る中、転送されてくる仏像。その現場を押さえ、踏み込んだ警察により、藤森教授は国宝消失事件の犯人として逮捕された。
 警官隊の中に牧を見つけ、息をのむ美弥子。
 「
 そう言い残し、美弥子は立ち去った。

 随所に見られる牧と美弥子の大人の恋愛ドラマ。しかし、事件解決により二人の仲も終わる。事件後、京の町を散策する牧。様々な寺を巡るその姿は、美弥子を捜しているようにも思える。
仏像を愛した女の結末  ふと立ち寄った寺で、庭掃除をしている尼僧に声をかけた。
 「
 振り向く尼僧。その顔は須藤美弥子であった。驚く牧。
 「
 「
 返す言葉のない牧。
 「
 目をそらし、再び美弥子を見る。すると頭巾のこぼれ落ちた美弥子の姿は仏像に変わっていた。仏像を愛した女は、自らも仏像となり、そしてこれからも仏像を愛し続けてゆくのであった…。

 牧が美弥子に見とれる場面からディスコへと移るシーンでの、研究所の木槌を叩く音が次第にディスコの曲のリズムに変わっていくところも面白い。ディスコで演奏される曲は「In The Midnight Hour」という曲。しかしMEテープにはまったく別の曲が入っています。
 曲といえば、この話で目立つのは、なんと言ってもフェルナンド・ソル作曲の「モーツァルトの主題による変奏曲」。この曲をBGMに京の都を見せてくれるこの話、シリーズ中数少ない人の死なない話でもあります。

 藤森教授役に岩田直二氏。仏像を愛した女・須藤美弥子役に斉藤チヤ子氏。斉藤氏は「マイティジャック第2話/K52を奪回せよ」にも出演。なんか歌も歌っていた人のようです。
 美弥子は実際に機械を取り付けてるし、共犯だと思うんだけどなぁ…。


 
【第26話:ゆきおんな】 1969.3.9 制作第26話
●脚本:藤川桂介 監督:飯島敏宏 特技:佐川和夫
 ひなびた山奥の温泉宿。ぜんそく療養のために宿泊してる小竹和夫は、角田彦次郎というどこかわけありな男から、娘に会いたいという相談を持ちかけられた。会えばいいじゃないかと言い放つが、簡単に会えないからと、会うお膳立ての協力を求められた。
ゆきおんな  さおりの友人・井上秋子は幼い頃に両親と死に別れ、天涯孤独の身であった。そんな秋子の元に、那須ハイツへの招待状が届いた。差出人は不明。その数日前に、父親のことをしつこく訪ねる電話がかかってきて以来、父親が生きているのではないかと思うようになったという。そこで秋子はさおりに相談を持ちかけ、気になるから一緒に来てほしいと頼む。了解したさおりは秋子と共に那須へと向かった。ホテルにはさおりたちをガードすべく、SRIのメンバーや町田警部たちが先回りして、従業員などに変装して入り込んでいた。
 部屋に通された秋子たち。その部屋にだけ飾られた「雪女」の絵。しかし秋子は、雪女に言いしれぬ懐かしさを感じるのだった。
 的矢所長からのいいつけでスケート場に出かける二人。そこへ、秋子へ接触を図る小竹が現れる。
 「
 父はどこにいるかと問う秋子に、会いたがってはいるが出てこれないと言い残し、小竹は去っていった。
 スケートを終えホテルのテラスでくつろぐ秋子は、かつての父の仲間という男に、父親はどこにいるかと脅される。父親は死んでしまったというが、男は信用しない。あわやというとき、近くにいた牧の気転で難を逃れた。
 町田警部の調べで、男は15年前に起きたダイヤ盗難事件の犯人の一人・野田明であることが判明。共犯の坂本大吉、中村信三らとともに指名手配されていたのだ。と同時に、秋子が幼い頃に叔父に引き取られていた事、秋子の父親が窃盗団のリーダー・角田彦次郎である事もがわかった。
 その晩、ナイトショー会場で再度秋子に接触を図る野田だが、張り込んでいた町田警部とSRIによって包囲されてしまう。いざ逮捕という瞬間、口封じとして仲間に狙撃されてしまうのだった。その混乱のさなか、小竹は秋子に近づく。
 「
 部屋に戻った秋子は、小竹の一言が気になった。しだいに雪女の絵と母親とをダブらせるのであった。
 「
 はじめに感じた懐かしさとは母への想いだったのか。
 翌朝、早めに目が覚めてしまった秋子は、ふと雪女の絵を見る。すると絵が溶けだして、中から一枚の地図があらわれた。

 作ったのも流したのもこれがラストです。脚本・藤川圭介、監督・飯島敏宏による、怪奇と言うよりもややファンタジックな一編で本シリーズは締めくくられます。同じ飯島監督作品である第14話「オヤスミナサイ」でも見られた、ぼかした感じの画。サブタイトル開けの、さおりに相談を持ちかけるシーンや、テラスでくつろぐシーンなど、秋子絡みの場面に見られる。少女マンガチック(?)な演出というか。飯島監督っぽさを感じさせる。

 この部屋にだけ掛けられた雪女の絵は、父の描いた物であり、その中に娘への贈り物が隠されていたのであった。
 地図を手にホテルを抜け出した秋子。そこで秋子はダイヤを発見するが、窃盗団の一員・中村が秋子をつけていた。そこへ現れた小竹により助けられた秋子。角田の頼みで、ダイヤの1割を報酬に秋子をボディーガードしていたのだ。秋子を助けたことを角田に告げる小竹だが、人を信じられない角田によって撃ち殺されてしまう。かつて角田もこのダイヤのために仲間を裏切り、そのために野田たちに追われていたのだ。
ゆきおんな  ダイヤを手にした秋子は父を求めてさまよううちに、残る坂本に追われてしまう。
 秋子は助けを求めた。死んだ母に…。
 「
 するとどうだろう。空に大きな雪女の顔が現れ、坂本を追い回していった。逃げる坂本。そして崖から転落する坂本を見届けた後、気絶している秋子を優しく見つめ、雪女は消えていった。
 崖下に落ちた坂本は銃で殺されていた。角田によってとどめを刺されたのだ。その角田も、自分がいては…と考えたのか、拳銃で自らの命を絶つのであった。
 雪女。それは娘を想う母の念か、それとも牧の説明通りのたんなる自然現象(ブロッケンの妖怪?)だったのか。

 このシリーズは別名『タイアップ大作戦』とも呼ばれたそうで、なるほど通して見ると様々な場所へと事件解決のために出かけている。(怪事件・難事件は全国各地で起きていてもおかしくはないし、管轄という縄張りに縛られる警察組織でもないので、SRIの地方出張は全然自然だ。)
 そしてこの回。実相寺監督が円谷から金持ち出して京都ロケに行っちゃったとかで、資金不足でとても苦労したんだそうです。なもんでどうしようかと困ってるところでタイアップ大作戦、ホテル押さえての撮影に。雪女の話なのに、雪もなかなか降らなくて大変だったと言う話も。

 さおりの友人・井上秋子役に松本路子氏。その父・角田彦次郎役に小松方正氏。ぜんそく持ちのボクサー・ミサイル小竹役に宮浩之氏。窃盗団の野田役に稲吉靖氏。上西弘二氏も窃盗団の一員・中村役として出演。第17話「幻の死神」に引き続いての出演だ。
 この回のEDで、ホテルマンに扮した野村がさおりたちの乗ってきた車を洗うカットがあるのだが、なんかこの二人このままくっついて、ノムが尻に敷かれそうな感じ。(でもノムは第3話で恋人がいるような発言してるからな)

 TV初放映が終わって30余年。もう一つの現実世界である「怪奇大作戦」の世界でも科学はより発達し、初放映当時には考えつかないような難事件・怪事件が起きている事であろう。だがしかし、その犯行動機となる人の思いは、何一つ変わっていないと思われる。そしてSRIは今日も休むひまなく、怪奇事件の究明に勤しむのだ。

★★★★

 
【パイロット版・人喰い蛾】 未放映 制作第1話(A)
●脚本:金城哲夫 監督:円谷一 特技:的場徹
研究室の牧とさおり  制作第1話「人喰い蛾」。ウルトラセブンの予告に付け加えられた次回作番宣や、雑誌媒体などに発表された怪奇大作戦第1話はこれだった。しかしその内容は、プロデューサー橋本洋二のこだわった“怨念や執念”などではなかった。見せ所である、チラス菌による人間溶解シーンも溶けるような様を合成処理したもので、どちらかと言えば今までのシリーズに近い演出だった。再編集などの都合もあり、その結果“円谷一&金城哲夫”という円谷ゴールデンコンビの作品は第1話から外されてしまう。
 放映第2話となった「人喰い蛾」は、この第1話予定であったフィルムに手を加えたリテイク版であり、そのオリジナルが、『パイロット版』や『NG版』などと呼称されるこのフィルムのこと。基本的にストーリー上の大差はないが、随所にわたって映像の違いが伺える。

 それでは、NG版に収録されているものの、放映版ではカットされたシーンをいくつか紹介。
 サブタイトルあけ、研究室で作業をしている牧をさおりが呼びに来る、というシーンがオミット。ついでにとビーカーに沸いたお湯でコーヒーを入れ、そのコーヒーを旨そうに飲む町田警部のシーンが入っていた。放映版のラストで、コーヒーを運んできたさおりに牧が何かを言っているが、「研究室のお湯で入れたコーヒーじゃないだろうね」とさおりを茶化しているのだ。(放映版ではナレーションが被っている)
花畑  野村、さおり、次郎少年の3人が、牧の実験用にと花畑で蝶を採取するシーンがこれまたバッサリとオミット。事件解決後、野村が牧に蝶を捨てようと言うシーンがあるが、この時採取した蝶だ。さらに次郎少年が蝶を持ってくるが、これも実験用にと採取したものだ。EDはこの箱から逃げた蝶を捕まえようとする映像だった。
 新田技師の家で牧が赤ん坊を救い出すシーン。放映版では助け出すと次の場面へと変わっているが、本来はこの直後、銃のような武器を使い蛾を退治するシーンがあった。この武器、その名を「ケミカルメース」と言い、当時の少年雑誌にはこの武器の図解まで掲載されていたそうだ。『SRIは武器を所持してはならない団体である』という理由からNGになったものと思われる。先に書いた研究室の牧のシーン。何か精密部品を組み立てているようなので、ひょっとしたらケミカルメースを作っていたという場面なのかもしれない。

 このフィルムは、円谷英二によって絶対に表に出すなと封印されたはずだったのだが、’80年代の地方リピートで何故か放映されてしまったとのことで、改めてその存在が明らかとなった。円谷プロでも確認のために試写が行われたが、放映版と違うその映像に驚きの連続だったという。そして’91年から始まった全話LD化を記念して、映像特典として最終巻『妖奇幻想スペシャル』に初収録された。オリジナルネガがない(MEなんて気の利いたものは当然ない)ためいわゆる放送用フィルムからの収録なのだが、フィルムの状態が時の流れを感じさせる。こういう赤みのかかったフィルムは味があって好きです。

 同時期のNG版として現存するフィルムには、変身シーンが違うという「ウルトラセブン」の放映第2話と第3話、「マイティジャック」の放映第9話(制作第1話)、それと同作放映第2話の後半部などがある。円谷英二没後作品だが「帰ってきたウルトラマン」第2話(NG版主題歌のインストを使用)も有名だ。


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