【怪奇大作戦】     怪奇大作戦
俺なりのストーリー説明(10〜18話)です。
わかりにくく、さらに見にくいかもしれませんが我慢してくださいませ。

10  11  12  13  14  15  16  17  18


 
【第10話:死を呼ぶ電波】 1968.11.17 制作第11話
●脚本:福田純 監督:長野卓 特技:的場徹
 大好きなボクシングを見るために帰宅した村木秋彦。自室に戻りテレビのスイッチを入れるとひとりでにチャンネルが回りだし、そのチャンネルはUHF局で止まった。画面には拳銃を持った手が映し出され、その銃口は画面正面の昭彦に向けられる。驚く昭彦。次の瞬間ブラウン管の銃口から光線が発射され、撃たれた昭彦は倒れ息絶えた。
レーザーの一撃  検屍の結果、直接の死因は心臓の火傷である事が判明、警視庁はSRIに捜査を依頼した。
 昭彦の父・村木剛造は、他人にはケチだが身内には好き勝って放題という性格のため敵も多く、誰から恨まれていても不思議ではない男であった。その剛造が警察とSRIの犯人探しに文句を言いながら、移動中の車内でテレビをつけた。すると昭彦の時と同じくチャンネルが勝手に動き出し、5年前、村木親子に殺されたという小山内久市の姿が浮かび上がった。あわててスイッチを切る剛造。
 そんなことはつゆ知らず、牧は昭彦の部屋にあったテレビとベランダに設置されたアンテナを借り受け調べていた。三沢の聞き込みで、国民生活研究所という架空団体の名を騙る男が村木家のテレビをいじっていたことが判明。さらに牧も、ある特定の電波だけを受信する仕掛けをアンテナに、テレビのスイッチが入った事を知らせる発信器をコンセント内に発見する。
 その頃、度重なる小山内久市の亡霊におびえる剛造は、辛抱たまらずにセスナで逃亡を図る。しかしセスナにも小山内の手が伸びるのだった。

 今回の殺しはテレビ画面からレーザーを発射して本当に殺しちゃうという、とんでもない手法であります。その手法から第3話「白い顔」とネタが被るような気もしますが、こちらのレーザーはあくまでも殺人の手段で、実際にメインとして用いられる科学犯罪としては電波ですね。テレビやラジオ、そしてセスナまでをも操る、まさに『死を呼ぶ電波』。

 犯人からの電波を利用し逆探知に成功。駆けつけた三沢によって犯人の計画は阻止された。犯人は小山内久市の息子、小山内健二であった。小山内久市は5年前、村木親子の公金横領の事実をつかんだため謀殺されていた。自分が殺されることを予測していた久市は、息子の健二にすべてを打ち明けており、その恨みを晴らすための犯行であった。
 警察にまで踏み込まれた健二は、自ら放電装置の中に飛び込み命を絶った。科学を学び、あふれんばかりの知識を自分の物としながらも、それを復讐のためだけに利用する小山内健二。同じ科学を学んだ人間として、牧は何ともやるせない気持ちになるのだった。

 ここで野村が牧の父親の事件のことを口にします。ちゃんとここに設定が生きていました。

 冒頭、死んでしまう村木秋彦役に、「ウルトラマン」のスーツアクター、そして「ウルトラセブン」のアマギ隊員としてお馴染みの古谷敏氏。その父・村木剛造役に、「マイティジャック第2話/K52を奪回せよ」で伊集院博士を演じた竜崎一郎氏。剛造といい博士といい、どちらもガンコなキャラクターです。その剛造を脅かす霊(?)として登場する小山内久市役に瀬良明氏。そしてその息子である犯人・小山内健二役に花上晃氏。
 テレビが1人に1台なんてのが夢の時代だった頃の物語であると同時に、家族でありながらお互いに干渉しないと言う、まさに現在の家庭状況を予言していたかのような家族描写であります。物の裕福さは家族の絆を薄くするんでしょうか。


 
【第11話:ジャガーの眼は赤い】 1968.11.24 制作第10話
●脚本:高橋辰雄 監督:小林恒夫 特技:大木淳
 草野球に夢中な弟・健二を迎えに来た兄・内藤太郎少年。帰宅途中、プラモ屋に立ち寄った二人は、ウルトラセブンのサンドイッチマンから紙製のサングラスをもらう。そのサングラスをかけた二人の目の前にはグランドキャニオンが広がっていた。グランドキャニオンの世界を探検する二人は、山中の洞窟に入っていった。洞窟に光る赤い2つの光、それはジャガーの目であった。ジャガーに驚き健二の名を呼ぶ太郎。その声が次第に消えてゆき、健二がサングラスを外すとグランドキャニオンは消え、太郎の姿も本当に消えていた。
グランドキャニオン出現!  誘拐事件として内藤家に張り込む町田警部ら数人の刑事とSRI。唯一の目撃者である健二が子供ならではの虚言癖があることや、証拠品であるサングラスも何ら変哲がないことから信憑性に欠け、健二の証言は決定打とはならなかった。そこへかかってくる犯人からの身代金要求の電話。犯人は自分の力を誇示するかのように窓を見ろと言った。窓にはどういうわけか公衆電話が映っていた。こんな事があるはずは…。
 次の日の夜。自室でプラモを作っている健二は、物音に窓を見た。窓に映ったのは、誘拐された太郎が今まさに縛り首になろうという映像だった。あわてて兄を呼ぶ健二の声に母親がやってきたが、母親の見た窓は何の変哲もなく、庭に張り込んでいた刑事もおかしな点は発見できなかった。
 犯人の要求どおり身代金(新聞で作った偽札束)を指定された電話ボックス内に置き、その向かいの喫茶店で待つ健二の父とSRIたち。外は次第に霧がかかり、窓の外で赤い光が光った。すると窓いっぱいにグランドキャニオンが映し出され、その中には太郎の姿が。あわてて外へ飛び出すが、外は何の変哲もない風景だった。

 うまく説明出来ないけど、どことなくキングアラジンの世界に近い雰囲気があるこの話。キングアラジンというか、乱歩的世界でしょうかね。子供をメインにした話でもあるこの回。怪奇世界を乱歩世界と考えていたという飯島監督が撮っていたら、また違った感じの作品になっていたかもしれない。

 喫茶店の外で辺りを見回す野村たち。窓から粘着物をはがした跡を見つける三沢。赤い光はレーザー光線を発射した光で、犯人はレーザー光線を使って、窓に仕掛けたホログラフィーに幻影を投影していたのだ。その頃、警備が手薄となった内藤家では弟の健二までもがさらわれていた。
 カラクリの詳しい謎を解くために、ホログラフィーの研究所を訪ねるSRI一同。内藤兄弟のかけていたサングラスには特殊な乾板が施されており、そのオリジナルはこの研究所で開発されたものであることが判った。現在その行方は不明だが、無くなった頃に研究所員だった青木という男が姿をくらませていることから、持ち出した者=犯人は青木と判明した。

 ホログラフィー研究のためにどうしても金が必要な青木は、太郎に家に電話をかけさせる。さらに内藤兄弟を殺そうと考えた青木は、近所の崖そばにホログラフィーのトリックを仕掛けに出かけた。その隙に青木の研究所から脱出する内藤兄弟。しかし健二が青木に見つかってしまい、サングラスをかけさせられ、崖の先に見える幻の橋から呼ぶ兄の姿を見せられる。
 だがすんでの所で駆けつけた三沢たちによって助けられる健二。町田警部たちを振り切って、研究所にある車で逃げる青木。橋を走行中、その橋の前方が突然崩れ始めた。あわてて車を止め、外へ飛び出す青木。橋は何ともなかった。三沢とは別に行動していた野村によって、フロントウィンドウにホログラフィーの仕掛けが施されていたのだった。追って来た町田警部らによって逮捕される青木であった。

 だいたいこんな感じです。要するに、今で言うバーチャルリアリティを扱った作品てとこですかね。テーマは悪くないと思うんですけどね。けっこう未来を見据えてるなとも思えるし。そんな脚本を担当した高橋辰雄は、かつて橋本洋二が世話になった人だそうで、そんな繋がりからの参加とのこと。
 俺だけかと思ったら、やっぱりこの話の人気度は低いようで。とは言え、シリーズでも珍しい野村主役編と言われる一本。そう邪険には扱えない。特に野村が次郎少年を従えて健二に接するシーンなどは、牧・三沢と比べて設定年齢が低い事から、低年齢層の視聴者に対して、友達感覚でつきあえる、おっちょこちょいだけど優しいお兄ちゃんという感じが伺える。
 青木役に清川新吾氏。内藤兄弟の父親役には、「ウルトラマン/怪獣無法地帯」の松井観測員が印象深い松本朝夫氏。
 蛇足ながら、この話がダメな人ってのはウルトラQの「虹の卵」も好きじゃない傾向にあるっぽい。


 
【第12話:霧の童話】 1968.12.1 制作第13話
●脚本:上原正三 監督:飯島敏宏 特技:的場徹
 信州山間部に位置する鬼野村。霧のかかった夜の山道を逃げる男。背後から、目の前から迫る鎧姿の武者たち。呪い墓へ迷い込んだ男は、あやまって崖下へと落ちてしまう。
 この村では最近、落ち武者の亡霊に襲われるという事件が多発していた。亡霊騒ぎでは警察も手を出せないという町田警部の相談を受けて三沢が調査に向かった。村に着いた三沢は村の少年・健一と知り合うい、村を案内してもらうことに。
落武者の亡霊  この村では、400年前の飢饉の際に村に逃げてきた落武者たちを、村人がよってたかって殺してしまうという出来事があった。その祟りでか、夏は干ばつ、台風時期には大雨・洪水・土砂崩れと、村は災害続きなのだという。それを鎮めるためにと作られたのが『呪い墓』と呼ばれる墓であった。亡霊の正体はこの時の落武者たちであるという。
 一方、村では海外企業による土地の買収問題も持ち上がっていた。老人たちは呪い墓の祟りを恐れ売却を拒み、若者達は村の発展のためにと売却を推進。まさに村が二分割されていた。
 さらなる調査で、亡霊に襲われた人は土地売却推進派ばかりであることが判明。三沢はたんなる亡霊騒ぎではないことに気付く。売却推進派集会の夜、5人が亡霊に襲われた。“見えすぎる”ことに疑問を持った三沢は、牧たちを村に呼んだ。

 「京都買います」とともに個人的ベストエピソードに入る話です。のどかな山村と自然、今となっては珍しい木造校舎や、校庭で生徒たちが演奏する「おもちゃのシンフォニー(作曲:モーツァルト)」の音色など、どこか懐かしさを感じさせてくれます。
 戦後復興の象徴である東京オリンピックを終え、次なる象徴・大阪万博を目前に控えた’60年代末期。日本全国が未来へ向け発展していこうという時代に、過去にしがみつく老人たち。しかし、失えば二度と戻ってこないことを知っているからこそ、そこにしがみつくのかもしれない。

お前はいい事をしたんだ  落武者伝説を利用してまでも、自分たちの生まれ育った場所に執着する老人たち。若者は祟りを迷信だという。だが、老人たちは本当の祟りを知っていたのではないだろうか。だからこそ、嘘の祟りで若者達を改心させようとしたのではないのか。
 霧の濃い夜、またも出現した亡霊。しかしSRIと警察の出動によって騒動は幕を閉じた。主犯は、戦時中に広島の大久野島(毒ガス部隊)にいた村の老人・大熊松三。霧の中に、一時的に神経を錯乱させるガスを混入させていたのだ。
 事件は解決し、東京に戻った三沢の耳に入ったのは、鬼野村が鉄砲水に襲われたという報せだった。呪い墓を潰そうとした祟りが現実になったのか、単なる偶然か。反対派の逮捕劇、そして村を襲った鉄砲水。これらによって村の買収もスムーズに進むだろうというクールな牧に対し、複雑な思いの三沢の脳裏によぎるのは、明るく元気な村の子供たちや美しい自然、そして発展する村にそびえる工場…。

 健一少年役は、前作「ウルトラセブン」でペロリンガ星人の化けた少年や、この当時の特撮番組ではお馴染みの高野浩幸氏。そのおじいちゃん・平八老人役には「悪魔くん」でメフィスト(兄)を演じた吉田義夫氏。冒頭、崖下へと落ちるのは「ウルトラセブン」のソガ隊員こと阿知波信介氏。どこか聞き覚えのある声の駐在さんは、アニメ「スカイヤーズ5」のポルカや、特撮では「イナズマン」の様々なミュータンロボ、「宇宙鉄人キョーダイン」のゴンベスなどの声を担当した和久井節緒氏と、なかなか特撮物に縁のある人たちが出ている。
 尚、このラストですが、脚本段階では健一少年も鉄砲水の犠牲になると言う、なんともショッキングな最後でした。


 
【第13話:氷の死刑台】 1968.12.8 制作第12話
●脚本:若槻文三 監督:安藤達巳 特技:高野宏一
冷凍人間・岡崎  ある夜、古いビルに設けられた実験室で1人の男が目覚めた。部屋を出た男はビルの管理人を絞殺した。そして男−怪人の姿を見た女がショック死をした。発見された男女の変死体の調査を依頼されたSRIは、検屍で絞殺された男の首が凍傷にかかっていた事に気付く。
 夜、川辺家前。門を閉めようと出て来た川辺夫人は、家の前にたたずむ怪人を見て絶叫する。その声に驚き逃げて行く怪人。
 とある実験室内。加瀬は室内に灯油を撒き火を放った。同僚の島本は制止するが、変死した管理人のことから自分たちの実験が世間に知られるのをおそれたためであった。加瀬たちの実験、それは生きた人間による冷凍実験であった。
 新たな実験室に移転した2人を、窓の外から見つめる怪人。彼は思い出していた。駅のベンチに座っているところへ声をかけてきた男−加瀬に<1日だけの蒸発>を誘われ、そしてサラリーマンのはかない反抗としてそれを承諾した。それが<昨日>…。
 怪人の去った後の窓ガラスは、水滴が凍っていた。それを見つけた島本は、“あの男”が生きていると言い出す。はじめは否定する加瀬だが、生きているのなら自分たちの実験が成功していると考え、そして“あの男”を捕まえようと考えた。
 採取した管理人の組織から冷凍人間の可能性を考えた牧は大学教授のもとを尋ねるが、その考えは否定されてしまう。だが会話中に大学教授の言った宇宙旅行のことから、冷凍人間の可能性はあると考えた。
 一方、警察の調査で絞殺死体がビルの管理人と判明し、加瀬たちの旧・実験室をつきとめる事に成功した。牧と町田警部がその焼けた実験室を調査していると、白い煙を噴き上げながら怪人が近づいてきた。牧たちに気づく怪人。応戦するも、すぐに逃げられてしまう。とっくみあいの最中に掴まれた牧の腕は、ジャケットの上からでも痛いほどに冷たくなっていた。怪人は冷凍人間だった。
 翌日、新しい実験室の庭で島本の絞殺死体が発見されるが、仲間である加瀬は実験室から姿をくらませていた。島本の死因は先の管理人と同じ絞殺。そんな時、川辺家から『幽霊を見た』という110番通報が入った。川辺夫人の証言から、その幽霊が冷凍人間であること、川辺家には元々は岡崎という一家が住んでいたが、6年前に主の岡崎が行方不明になっていたことがわかった。

冷凍人間の最期  自分を殺した加瀬と島本に復讐するために目を覚ました冷凍人間・岡崎。しかし恐怖人間となった岡崎に帰る家はない。そんな岡崎に対してSRIが出来るのは、本当の眠りにつかせてやること─殺してあげることだった。

 姿をくらました加瀬は、焼けこげた実験室にいた。もう一度やり直すんだとつぶやきながら書類を集める加瀬。その背後に姿を現した冷凍人間・岡崎。一度は絞殺を試みるも加瀬が普通でないことに気付くと、冷凍人間はその場を立ち去った。加瀬は笑いながら書類に火を点けようとした。

あの男はすでに7年前に殺されていたんだ。  加瀬逮捕の報せを持って来た町田警部は、冷凍人間が川辺家にまた現れるとにらみ、SRIに協力を求めてきた。
 川辺家前に張り込む警察とSRI。思惑どおり、記憶の中での自分の家に戻ってきた冷凍人間・岡崎。人間でなくなった岡崎めがけて発砲をするが、冷凍人間となり体質が変化した岡崎には効かなかった。そして牧はサンビーム500の引き金を引いた。熱線を浴び、みるみる溶けてゆく岡崎の身体…。
 「
  
  

 焼けた実験室で逮捕される加瀬。報告に来た町田警部のセリフで狂っていることがわかる。加瀬の登場は集めた書類に火を点けようとした場面までだが、オミットされた加瀬登場シーンが台本上にある。それによると、牢屋内で岡崎の実験が自分一人の力で成功したことや、明治200年になったら起こして下さいなどと意味不明な事をつぶやきながら眠りにつく、というもの。(明治200年=西暦2067年)
 方法は違えども人間の寿命をいじくるという点では第9話の「散歩する首」に通じるものがあるこの話。峰村も最後は狂ったかのような感じだったが、こちらもまさに気狂い科学者の末路といった感じだ。事件解決後のSRI本部シーンの後、この場面になり、そしてそのままエンディングという運びだったらしい。感じとしては第16話「かまいたち」の近いに終わり方か。

 悲運の冷凍人間・岡崎役に真弓田一夫氏。その冷凍人間による第一の被害者であるビルの管理人役に邦創典氏。牧が冷凍人間の可能性を訪ねる大学教授役に増田順司氏。マッドサイエンティスト・加瀬役の西沢利明氏は、「宇宙刑事ギャバン」のコム長官役が有名だろうか。その助手・島村役には、「がんばれ!!ロボコン」の2代目ロボコンパパこと小川太郎役を演じた住吉正博氏。川辺夫人の悲鳴を聞いて飛び出してくる男(川辺家主人)の役で高野宏一特技監督がチョイ出演。
 ところで、SRIは警察と違って犯人を逮捕する権限も無く、また武器を所持することも許されていない(ケミカルメースの設定はそのため没になった)。もちろん殺人などは当たり前で許されていない。でもこの話ではサンビーム500なる兵器で冷凍人間を殺しちゃうんだけど、これってありですかね?(当初はSRIはサンビームを貸し出すだけで、実際に使うのは一般警官だったとのこと。)


 
【第14話:オヤスミナサイ】 1968.12.15 制作第14話
●脚本:藤川桂介 監督:飯島敏宏 特技:的場徹
 とある高原ヒュッテ。恋人同士の志田竜夫と杉江ユキは二人だけのパーティーを開いていた。ダイオード研究のために2年間アメリカへ渡米する竜夫。今夜のパーティーはそのお別れパーティーであった。結婚をも約束した二人。変わらぬ愛を誓い合う二人。しかしその最中ユキは、傍らにあったインディアン人形の羽根飾りで、誤って竜夫を殺してしまう。唖然とするユキ。
 猟に来ていた牧は、激しい雨から逃れるために一夜の宿を求めてヒュッテに立ち寄った。ユキはあわてて竜夫の死体を冷蔵庫に隠し、牧を二階の寝室へ案内する。
ヒゲを剃るたっちん  ─牧は夢を見た。舞台はここ、高原ヒュッテ。部屋に入ってきた見知らぬ男−竜夫に襲われる牧。もつれ合い、階下の風呂場へとなだれ込む2人。そして牧は風呂場で竜夫を絞殺する─。うなされ目が覚めた牧は、閉じたはずの部屋の扉が開いていることに気付き、夢のとおりに階下の風呂場へと向かってみた。そこで見たのは、浴槽に浮かんだ竜夫の死体であった。
 そこへやって来たユキ。だがユキも、竜夫を殺したのは自分だと言う。牧は地元警察とSRIに連絡を入れた。三沢、野村と共に、友人としてやってきた町田警部は、地元警察に牧の性格からしてありえないと言うが、地元警察としては恋人同士であるユキが竜夫を殺す動機が見あたらないことから、牧が真犯人とにらむ。もちろんSRIとしても牧が犯人であるとは思っていないが、牧の犯人説をくつがえす証拠は見あたらなかった。そんな時、殺された竜夫の双子の弟という男が現れた。
 昨夜からほとんど休んでいない牧は疲れを訴え、三沢のすすめで昨夜と同じ寝室で眠りについた。しかし牧は同じ夢−竜夫を殺してしまう夢を見てしまう。ハッとして起きあがる牧。そんな牧を見ていた三沢は、枕に仕掛けられたダイオードによる催眠学習装置を発見する。

 催眠学習。小学生の頃読んでいた学習雑誌などによく広告が掲載されていたが、実際の効果はどうなのだろうか。その不思議な魅力に何度手を出したかったことか。頭に巻く「エジソンバンド」なんてのは、さらにさかのぼって昭和30年代アイテムか。

 他人の目はごまかせても、愛する者の目はごまかしきれなかった。
 ヒュッテのリビングで休憩する一同。だが弟のふとした動作が、竜夫のクセであることに気づいたユキは、弟=竜夫本人であることに気付き、思わず外へ飛び出した。気付かれたかとその後を追う竜夫。
 入れ違いに竜夫の弟の情報をつかみやって来た町田警部。東京で起こったヤクザ絡みの事件で殺人を犯しているというのだ。それを聞き2人の後を追う一同。
 ユキに追いついた竜夫は説得を試みるが、それを拒んだユキをも手に掛けようとする。だが間一髪追いついたSRIによって動きを封じられ、そして竜夫は逮捕された。
 竜夫は弟の東京でのいざこざは知らずに、金の無心に来た弟を殺してしまい、そして自分の未来のためにそれをユキの犯行とさせ、さらに予想外の訪問者である牧の犯行にと企てたのだった。
 荷物を手に外へ出たユキは左手薬指から婚約指輪を外し、その場へ捨てるのだった。

 飯島監督による今回の話。主にユキのシーンで見られる、ぼやかしたようなファンタジックな映像演出が印象深い。
 杉江ユキ役に北島マヤ氏。竜夫(とその弟)役で、アニメ「ガッチャマン」のコンドルのジョー役や、数々のアニメ・特撮ソングを歌った佐々木功氏。2人は円谷一監督による『煙の王様』という作品で共演したコンビなので、そういうこと繋がりでのキャスティングではないかとは、ささきいさお(佐々木功・当時)氏の談。現地の刑事役は池田忠夫氏。


 
【第15話:24年目の復讐】 1968.12.22 制作第15話
●脚本:上原正三 監督:鈴木俊継 特技:大木淳
 夜の横須賀湾で起こった連続米兵殺人事件。目撃者であり被害者のガールフレンドである吉村千恵子の証言では“黒い人間”が海から出てきて、そして米兵を海中に引き込んだのだと言う。だが警察は、彼女を容疑者とにらんでいた。戦時中に死んだ姉・千恵子とこの女をダブらせた牧は、彼女の言うことを疑えなかった。その証言から、牧は水棲人間の可能性を考えた。海から出てきて、泳ぎの達者な水兵を海中に引きずり込み、そのまま姿を消した“黒い人間”。牧は本部へ連絡し、三沢に水棲人間の実験を頼んだ。
水棲人間・木村  犯人である決定的証拠がないことから釈放された千恵子を訪ねて、彼女のいるクラブへと赴く牧。しかし千恵子は牧を警察と思い協力を拒む。警察ではなくSRIだと言っても、同じようなものといい相手にしない。しつこく食い下がる牧に対し、取り巻きの連中は牧を痛めつけた。ボロボロになりながらも千恵子にすがる牧。さらに殴りかかろうとする取り巻きを制止し、その一生懸命な姿に協力を申し入れる千恵子だった。
 水兵に扮した牧とそのガールフレンドに扮した千恵子は、犯人−“黒い人間”を誘い出すために騒ぎ出す。とその時“黒い人間”が姿を現し、牧を米兵と思い近づいてきた。だが牧が自分が日本人であることを告げると“黒い人間”は海に逃げ帰ろうと下がっていった。捕まえようと“黒い人間”に掴みかかった牧だが、一撃で吹っ飛ばされてしまう。その手には衣服−旧日本軍海軍戦闘服の切れ端が残っていた。
 本部に戻った牧は、シリコン皮膜による水中生息実験と沈没した船内で3週間生き延びた人間の記録、むしり取った衣服の切れ端から、犯人についての確信を徐々に固めていった。そしてそれを確認するために、横須賀から旧日本海軍施設のあった猿島へと渡った。
 猿島で観光案内をする千恵子と遭遇した牧は、またも姉のことを思い出した。
 ─ブランコで遊ぶ幼い牧姉弟。頭上に飛んできた一機の戦闘機。その銃口は二人めがけて火をふいた。噴煙につつまれた史郎の目の前に映ったのは、倒れて動かなくなった姉・千恵子の姿であった。牧史郎、4才。終戦を控えた昭和20年の、ある日の出来事だった。─
 島内を散策中に気になる壕を発見した牧は、中へ入って行った。

 第二次大戦で唯一の本土決戦があった沖縄。脚本の上原正三は沖縄出身の人物だ。「霧の童話」でもラストに戦争をにおわすセリフが出てくるが、こっちは戦争そのものを引きずった、悲しい兵士の物語である。それまでのウルトラシリーズとは異なり、物語がリアルタイムで描かれている怪奇大作戦。この当時は横井さんも小野田さんもまだ生還前(横井庄一氏は’72年、小野田寛郎氏は’74年)。まさかこの後、本当に生き残り兵が発見されようとは。戦争にこだわりを持つ上原正三による、未来を先読みしていたかのような一編である。

 壕の中で大量のダイナマイトと共に背のうを見つけた。中には「木村」と書かれた一冊の日記帳が入っていた。
 『
  
  
牧と木村  日記を見る牧の背後には銃を携えた木村二等水兵が立っていた。
 哀れみをふくんだ顔で話しかける牧。
 「
 信じられないという顔をする木村。
 「
 仕方ないという顔をしながら話を続ける牧。
 「
 ハッと息をのみ、ワナワナと震えながら牧の言葉を信じたがらない木村。
 「
 木村が生活をしていた潜水艦を爆破したのは敵の攻撃ではなく、解体作業であるという説明をしても、聞く耳を持たないそぶりである。ダイナマイトを体に巻き付け、戦争という悪魔にとりつかれた哀しい姿…。
 牧が戻らないことを心配したSRIメンバーと町田警部たちは、牧を追って猿島へと渡った。だが牧を人質にとり武器を捨てさせ、さらにモーターボートを乗っ取って、沖に停泊している空母めがけてボートを走らせる木村。閃光と共に聞こえる爆発音。空母の目前で自爆したのだ。牧の説得で目が覚めていたのか。戦後23年を経ても戦争から逃れられなかった男が、戦争から逃れる最後の手段。悪夢は終わった。

 最終的に物語の舞台となる猿島は、ゲルショッカーの結成式も行われた場所だ。色々といわくのある場所なのかもしれない(笑)。
 吉村千恵子役に夏珠美氏。その千恵子を疑ってかかる横須賀の刑事役に、山本廉氏。別に怪しくないです(笑)。
 水棲人間・木村二等水兵を演ずるのは、スペイン大好きの怪優・天本英世氏。特撮ファンとしてはどうしても「仮面ライダー」の死神博士役が思い浮かんでしまうが、本人はその固定イメージ(というか「特撮俳優」という固定イメージ)をあまり良く思ってなかったらしい。
 時に天本氏。この役はカツラ(だよな)を被っているのでわかりにくいが、同年作品「マイティジャック」で演じた村上譲は設定年齢60歳。しかし本人はこの当時はまだ42歳。仮面ライダーでの死神博士当時でも46歳。享年77歳にして他界された天本氏。その外見から90くらいかと思っていただけに、他界されたことよりもその年齢に驚きました。


 
【第16話:かまいたち】 1968.12.29 制作第18話
●脚本:上原正三 監督:長野卓 特技:高野宏一
五体バラバラに…!  工場や住宅が建ち並ぶ深夜の街。何かに追われるように、怯えながら歩く1人の女性。なおも感じる追跡者の気配に足を速めた。橋にさしかかったその時、一陣の風が巻き起こり、次の瞬間女性の五体は切断されていた。川に落ちる靴と水面に浮かぶ切断された腕。
 検屍に立ちあった牧と的矢所長。被害者の体の切断面、その切り口から警察では凶器を正宗のような日本刀と断定。犯行も他の場所で行い、その後発見現場への死体遺棄という見方をした。民家が密集している場所にも関わらず、だれも悲鳴を聞いていないことも警察側の自信だった。しかし牧は流しの犯行の可能性もあるため、第2第3の事件も起こり得ると助言するが、町田警部には参考意見として聞き流されてしまう。釈然としない牧。現場を見渡した牧は、集まった野次馬の中に気になる青年を見つける。
 数日後、牧の言うとおり第2の事件が起こった。牧は自分の言うとおり非常警戒網を張っておけばと警官や刑事に言い放つが、警察には警察のやり方があると言い返されてしまう。その刑事の言葉にムッとする三沢。しかしSRIの調査はまだ始まったばかりである。的矢所長は、警官が聞いた「ゴー」という音、街灯の電球が割れていること、それと死体の切断面の鋭さから考えて、“かまいたち現象”のようなものではないかと考察する。しかし、かまいたち現象と言えども人体をバラバラに出来るほど強力ではない。SRIは、人工的に巨大なかまいたちを作り上げる装置を使っての犯行ではないかとにらんだ。
 さおりの撮影した約三百枚にも及ぶ現場周辺の写真を一枚一枚チェックする牧ら。野村と三沢がダウンしても一人最後まで写真をチェックする牧。その中の一枚が目に止まった。第1の犯行の際、牧が気になった男であった。

 かまいたち。つむじ風が起きた時に空気中に真空部分が出来、それに人体が接触すると鎌ででも切ったようにするどく皮膚が裂ける現象の事で、昔はこれを「かまいたち」という妖怪の仕業と考えていた。手塚治虫の「ブラック・ジャック」(少年チャンピオンコミックス第16巻収録「通り魔」)にも、このかまいたち現象を扱った話が載っている。

 男の名は小野松夫。現場付近の工場に勤める真面目で大人しい青年だった。そんな松夫が気になる牧。野村は事件と無関係ではないかと言う。牧にも確固たる証拠はないものの、この男から何かを感じ取っていた。
 休日。仲間と喫茶店で語らう松夫。アロワナに餌を与えるという店内アナウンスで、客の目が水槽に向く。しかし牧だけは松夫を見ていた。そしてアロワナが餌を喰らう瞬間、松夫の目の色が変わったのを牧は見のがさなかった。
その目で一体何を見るのか…  張り込み中の野村がちょっと現場を離れた隙に、散歩途中の犬が犠牲となる第3の事件が起きた。野村を責める牧は、逆になぜ彼を犯人と見るのかと問われる。自分に言い訳をするかのような理由を話す牧。
 「
 SRIはさおりを囮に、犯人をおびき出す作戦に出た。
 深夜の道を1人歩くさおり。その誘いに乗って姿を現した目出し帽姿の犯人。橋にさしかかったその瞬間、犯人の仕掛けたかまいたち現象によりバラバラになるさおり。だがそれは精巧に作られた、さおりそっくりの吊り人形であった。牧・三沢・野村の3人に捕らえられた目出し帽姿の犯人。その下の顔は、牧の予想どおり小野松夫だった。逮捕され、犯行理由を問われる小野松夫。だが彼は何も言えない。いや、理由など始めから無いのだろう。一体何が彼を事に及ばせたのか。
 「

 理由無き犯行…、最近多発する異常とも思える犯行。特に未成年者による凶悪犯罪は増えており、その犯行理由は理由ともとれないような、まさに「いいわけ」レベルのものだったり。そして犯人を知る人に普段を聞くと、ほぼ決まって返ってくる答えが「真面目でおとなしくて、そんなことをするようには見えない」だ。まさにこの話の犯人と同じである。

 ゲストの刑事役に池田駿介氏。「キカイダー01」のイチロー役や「帰ってきたウルトラマン」の南隊員役などでお馴染みの人だ。そして犯人・小野松夫役に加藤修氏。たしか声優で同名の人がいたなぁと調べてみたら別人でした。ドリフでよく見たすわしんじ(現・すわ親治)に似てるとか言っちゃダメですか。
 吊り人形が後ろ向きに歩く姿(顔こっち向いてるし)はなんかコワイ。


 
【第17話:幻の死神】 1969.1.5 制作第19話
●脚本:田辺虎男 監督:仲木繁夫 特技:的場徹
 瀬戸内の海上を走る一隻の遊覧船。船上からは若者達の歌声が聞こえる。ふいに海面が青白く光ったと思うと、海中より無数の白い手が伸びてきて、さらにドクロ顔の巨大な女官の亡霊が出現した。
 SRI本部。町田警部は、国際女優バーバラの来日会見中に胸元からネックレスが消えたという事件を持ち込んできた。会見中のカメラマンが撮った写真には、今まさにネックレスを取っている白い手が写っていた。写真的にはX線などを利用し、理論的に可能であると言う牧。数日前、岡山で撮影された写真にも同じような手が写っていた。現地には、溺れ死んだ平家武者が船に乗った人に水をせがみ、船を沈没させてしまうという「白い手の伝説」というものがあり、三沢はバーバラ事件の手と何か繋がりがあるような気がし、的矢所長と共に岡山へと飛んだ。
女官の亡霊  到着早々、宿の女将が止めるのも聞かずに調査に向かう三沢と的矢。案の定、手と巨大な亡霊が出現した。思いきって亡霊に突進すると、亡霊の姿は消えた。と、そこへ近づいてくる一隻のモーターボート。中に乗ったサングラスの男は、早く立ち去れと言い、去っていった。
 宿に戻った三沢たちに牧からの連絡が入る。手のトリックは、目に見えない490mmミクロン以下の波長を応用した、“隠れ蓑”ではないかと言う。ただしこれには莫大な設備と金がかかる。つまり、相手は大がかりな組織がらみであることが推測できた。
 聞き込みを行う二人の前に再三現れるモーターボートの男。三沢たちは、怪しいとにらむが。
 そんな時、漁師が塩田に血だらけの女が倒れていると言ってきた。現場に駆けつける三沢たち。しかし塩田から女の姿は消えていた。その近辺にも姿を見せるモーターボートの男。
 その晩三沢たちは海上を調査中に、塩田から消えた女の死体を見つける。

 「白い手の伝説」と言うのは、いわゆる怪談話「舟幽霊」のバリエーションだ。さらに水中から手が出たり、水辺に霊が集まるというのも心霊現象的によく言われる。「現代の怪奇」ならぬ「現代の怪談」的な今回の話。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」。伝説を利用し、科学的に幽霊を作り上げた話だとは言え、小さい頃にこの話を見た人はけっこうトラウマになってるのでは?

 翌日、二人の前に岡山県警の刑事とモーターボートの男が現れた。男は密輸の特別捜査官・谷崎刑事であった。谷崎たちの追っている密輸組織は、いつも亡霊騒ぎの付近で姿を眩ませていたという。三沢は、亡霊騒動は大がかりな組織によるものであるため、谷崎の追っている組織による犯行ではないかと助言する。
 警察の調べで、海上で見つかった死んだ女が組織の一員であることと、服の襟元から組織の本拠地と密輸の日時が判明した。犯行は今夜。そこへ野村が、亡霊のトリックを破るパーフェクトライトを持ってやってきた。SRIと県警の密輸組織壊滅作戦が始まった。

 本作は決定稿の後に改訂稿が書かれていて、完成作品はこの改訂稿に沿って撮影がされた。完成作品に今ひとつ感を感じざるを得ないこの話。そのせいか決定稿の展開が興味深く思える。

 谷崎刑事役に三田村元氏。血だらけの女を見たと騒ぐ漁師役に「ウルトラセブン」や「スペクトルマン」のスーツアクターを演じた上西弘二氏。クレジット明記はないが、その上西漁師に文句を言う漁師の声がどう聞いても声優の八代駿氏(「いなかっぺ大将」の西一など)。これは本人出演ではなく単なる吹き替えだそうだ。
 よく見ると、本部にいるノムと、パーフェクトライトを持っていったノムは髪型が違う。実はレコード歌手でもあり、フランク・シナトラとのデュエット経験を持つというスケさんこと勝呂誉が「浜辺の歌」を披露するシーンも見所の一つか。


 
【第18話:死者がささやく】 1969.1.12 制作第20話
●脚本:若槻文三 監督:仲木繁夫 特技:的場徹
 休暇をとり、伊豆に旅行にやってきた田原昭夫と妻・澄子。岩場の海岸にやってきた田原の目に入ってきたのは、波間に揺れる男の死体であった。男は警視庁の下沢警部補であることが判明、殺人事件として警察の捜査が始まった。
俺はお前に殺された…  後日、旅行を続ける田原の耳に聞こえる下沢警部補の恨みの声。しかもその幻影まで見る始末。しかし一緒にいる澄子には何も見えないし、何も聞こえないという。恐れ、車でその場を離れようとする2人の前に警察が現れた。下沢警部補の殺人現場から田原の毛髪と指紋が検出されていたのだ。田原は身に覚えのない容疑で逮捕されてしまう。
 翌日田原は護送中に脱走し、SRIに助けを求めてきた。世の中に同じ指紋を持つ人間が2人いることを立証してほしい、と。応対した的矢所長は、三沢と共に田原に指定された熱川ハイツに赴いた。
 田原に会った三沢は、同じ指紋は存在しないと言い放ち自首を勧めるが、協力を得られないと判った田原はそのまま逃走してしまう。三沢は田原に警部補を殺す同機がない事を感じた。

 遺留品や頭髪は第三者が仕組むことも可能だが、指紋となると話は別だ。しかしこの話ではそれをやってのけしまう。そしてさらなるどんでん返しが待っている。

 三沢に助けを求める田原の妻・澄子から、田原のアリバイを確認する。だが澄子1人の証言では不利であった。そんな澄子と自分を不審な男が監視している事に気付いた三沢。小型カメラで隠し撮りした写真から、男は地下銀行組織の一員・広崎である事が判明。殺された下沢警部補はその組織を追っていたのであった。地下銀行組織と下沢警部補は繋がったものの、田原昭夫の警部補殺しだけは繋がらなかった。
 一方、逃げ回っていた田原もついに逮捕される。だが三沢はそれがどうしても納得がいかない。澄子から再度話を聞く三沢と的矢。そこを広崎に狙撃されるも一難は逃れ、狙撃に失敗した広崎はその場から逃走する。だが後を追った三沢たちと、地下銀行組織を追って張り込んでいた町田警部らの手により広崎は逮捕され、その車中からは田原昭夫の指紋が刻まれた、合成皮革ユニ・ポリエステル製の指紋付き手袋が発見された。
 無罪放免となり、愛する妻の元へかけよる田原。だが澄子は田原の愛を受け止める事が出来ず逃げようとする。その拍子に落としたコンパクトから聞こえてくる下沢警部補の苦しむ声。澄子はすべてを白状し車で逃亡するが、数メートル先で拳銃で自らの命を絶った。だが田原は、そんな妻の亡きがらを抱きかかえるのだった。

 警部補殺しの犯人に仕立てるために偽装結婚をした澄子。広崎逮捕を組織に報せた電話からは田原に対する愛情など持ち合わせていないようだが、映像では『口ではそうは言いつつも…』と感じられる。
 サブタイ明けの、吊り橋を渡る2人の目の前に下沢警部補が現れる場面。これも幻なのかすぐにその姿は消えるものの、ここでは田原だけでなく澄子も怖がっているように顔をそむけている。ここでの澄子の恐がりようは演技なのか?
 偽装結婚が暴かれ、その場から去ろうとする澄子を引き止める田原。そんな田原に向かって拳銃を向けるが、発砲せずに逃走する様からも、いつの間にか本当に田原に対して愛情を抱いていたと感じられる。
 とすると、吊り橋で見せた澄子のあの恐れようは、田原への愛情と共に生まれた良心の呵責が、澄子にも警部補の幻影を見せていたのかもしれない。

 田原明夫役に景山泉氏。その妻・澄子役に牧紀子氏。レギュラーメンバーであるノムは今回未登場。
 いわゆる特撮らしい特撮シーンが殆ど無いのと、地方ロケ話という事もあってか今回のこの話、なんとなく土曜ワイドっぽい感じが。ところでこの指紋のトリック。無理なんだろうけども、実際に出来そうな気も。


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