トップ > 群馬 > 9月14日の記事一覧 > 記事
【群馬】富士見村の赤城山 広がるシカ食害2008年9月14日
県立公園がある富士見村の赤城山で、シカの食害が広がり、住民が頭を悩ませている。牧場経営や植生への影響を懸念する声があがる中、管理者の県も思うように対策を打ち出せないでいる。 (神野光伸) 「食害、ひどいですよ」。赤城山の白樺牧場の荻原雪雄牧場長(71)は顔を曇らせる。牧場内にはシカのふんが散乱。好物とされるドウザンツツジをはじめ、樹皮をはがされ、成長が阻害された樹木も増え続けている。 牧場にシカの群れが現れ始めたのは五年ほど前。はじめは数頭だったが、今年七−八月に百頭あまりの群れが現れた。牧草も食い荒らされた。牧場一帯に広がるシカの群れを爆竹で追い払うが、すぐに戻ってくる“いたちごっこ”の状態が続く。荻原さんは「食害がこのまま続けば牛も育てられなくなる」と不安を募らせる。 大沼周辺の旅館でも植物が被害に遭い続けている。湖畔の青木旅館では旅館前で育てた植物にネットを覆ったがシカに破られ、ヤナギランが食い尽くされた。旅館で働く青木昭美さん(56)は「山の植物を楽しみにしている観光客は多い。食害が続けば観光にも影響してしまう」と漏らす。 県や富士見村によると、赤城山のシカの食害は十数年前から目立ち始めた。ここ五年ほどで、山頂の湿原「覚満淵」に自生するニッコウキスゲも壊滅状態に追い込まれた。シカの食害が原因の一つとみられている。 県も、こうした事態を深刻視、生息状況の調査を進めている。二年前には覚満淵周辺に柵を設置、食害の調査を始めた。ただ、その後も食害は赤城山の至る所で確認され、シカの目撃情報も増加する一方だ。 赤城山は、県の鳥獣保護地区に指定されているが、被害が認められればシカは捕獲はできる。だが、実際には、人手や費用もかかり捕獲しきれる状況ではないという。県は「このまま食害が続けば狩猟鳥獣捕獲禁止区域の見直しも検討する必要もある」としている。
|