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来春から分娩予約を一時停止 日製病院

2008年09月14日

 県内の医療機関で最多の出産を扱う日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)が、来年4月以降の出産予約の受け付けを「一時中止」している。病院に医師を派遣している大学の医局から医師の派遣を打ち切りたいと要求され、来春以降の産婦人科医の確保が不透明なためだ。同病院は難しい出産にも対応できていただけに、広域的な影響が出かねないと懸念する専門家もいる。(木村尚貴)

 県医療対策課の調べでは、日製病院の07年の出産は1212件で県内最多。現在は産婦人科医6人で、24時間365日当番を回している。

 日製病院によると、産婦人科を開設してから医師を派遣していた首都圏の国立大学から5月、「来年4月以降の派遣を中止したい」と伝えられた。日製病院は大学側に1、2人でも医師を残すよう求めているが、現状では6人は来年3月までに大学の医局に戻る可能性が「極めて高い」という。

 こうした状況を受け、日製病院は8月初めに病院長名義で「分娩(ぶん・べん)予約の一時中止」のお知らせを、病院内の掲示板やホームページで明らかにした。出産希望者には他の施設を紹介するなどしている。ただ、「あくまでも一時中止で、産婦人科をやめるということではない。医師が確保でき次第、診療を再開する準備はしている」と説明する。

 複数の市町村を一つの単位とする「二次医療圏」のうち、日立、高萩、北茨城の3市からなる「日立保健医療圏」では年間約2千件の出産があるが、出産可能な施設は3病院、1診療所、1助産所の5施設しかない。このうち過半数を日製病院が扱っていた。出産予約停止で通い慣れていない場所に行く妊婦の負担が増す。

 また、日製病院は異常分娩などの危険な出産にも対応する地域の拠点病院のため、異常出産の妊婦が近隣の病院に集中する可能性も高まる。

 日立保健医療圏に隣接する「常陸太田・ひたちなか保健医療圏」のある医師は「周産期医療の拠点である水戸の済生会病院などにハイリスクな患者が集中し病院のキャパシティーを超えると、ドミノ倒し的に県の母体搬送システムが崩れる恐れがある。今回の問題は、県北だけではなく県全体の問題だ」と指摘する。

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