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社説:政治とカネ 政党交付金の透明度も高めよ

 「政治とカネ」をめぐる混乱が本当にただされるだろうか。07年分の政治資金収支報告書(総務相所管、中央分)が公表された。収入は1278億円と前年と比べてほぼ横ばいだったが参院選の年だったことを反映し、支出は1442億円と3割近く増えた。

 安倍前内閣では「事務所費」をめぐる閣僚の辞任劇が相次いだ。福田内閣でも太田誠一農相の政治団体に関する事務所費問題が改造内閣の出はなをくじくなど、政治資金をめぐる国民の不信は依然として根強い。全領収書の原則公開を定めた改正政治資金規正法が09年分から適用されるが、「一件落着」としては困る。政党交付金も含め、なお透明度の向上に取り組むべきである。

 07年の収支報告は、大幅な制度改正を控えて行われた。閣僚の事務所費会計処理の不祥事続出を受け、与野党がようやく昨年12月に成立させたのが改正政治資金規正法だ。同法によると、09年分から国会議員の関連政治団体は1件1万円超(人件費除く)の全支出について収支報告書への領収書の添付が必要となる。さらに1円以上の全支出の領収書の保存義務が課せられ、原則として公開される。報告書提出にあたり、公認会計士などによる監査も義務づけられた。

 ただ、透明化をめぐる議論がこれで終結するわけでない。たとえば、太田氏の説明があいまいと野党が指摘していた「人件費」については、改正後も領収書が公開対象から外される。今後、人件費が不透明な資金の抜け道となる可能性は否定できない。プライバシーに配慮しつつ公開する道はないか、議論すべきだ。

 09年分からの公開を待たずにできることもある。現行法でも事務所費などに関しては1件5万円以上の領収書は、3年間の保存義務がある。閣僚や副大臣、政務官について、保存義務がある領収書の自主公開を申し合わせてはどうか。新政権の発足にあたり首相が決めれば、すぐできることだ。

 政党交付金の使途の透明度も課題である。07年の集計では共産党を除く6党に総額319億円の政党助成が支給された。自民党収入の66%、民主党の84%を占め、今や政党活動は交付金に大きく依存している。

 ところが国民1人250円の税金をあてているにもかかわらず、交付金を使った支出の明細は、政党助成法が定める「5万円以上」との公開基準が維持されたままだ。これでは、国会議員関連団体の支出の「全領収書原則公開」とバランスを欠く。全面公開がスジだろう。

 自民党総裁選に出馬した5候補の公約文書に「政治とカネ」に重点を置いたくだりはなく、民主党の小沢一郎代表がさきに公表した基本政策も同様だった。来る衆院選で与野党にとってなお、素通りが許されぬテーマのはずだ。

毎日新聞 2008年9月14日 東京朝刊

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