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【滋賀】

餌代高騰で酪農家「もう限界」 価格転嫁できず悲鳴 

2008年9月6日

牛舎で牛に餌をやる三家清憲さん。「安全・安心な牛乳を提供するために、消費者にも値上げを理解してほしい」と訴える=米原市上野で

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 世界的な穀物価格の高騰で、県内の酪農家が苦境に追い込まれている。乳牛の餌となる配合飼料のトウモロコシや牧草が値上がりする一方、販売価格に転嫁できず経営を圧迫している。「廃業が脳裏をかすめる」中、県内の酪農家60人が8日、県庁周辺を行進し窮状を訴える。 

 県農協酪農部連絡協議会長の三家清憲さん(53)は、米原市上野で牧場を営む。妻洋子さん(50)と毎朝5時に起き、飼育する乳牛50頭の世話をする。朝晩の2回に分け餌を50キロやり、日中は種付けやふん尿の処理をする。搾乳量は1日800リットルに上る。

 餌は3種類の牧草に配合飼料、ビタミン剤を加工する。需要増のバイオ燃料に使用されるトウモロコシがこの1年間で1キロ当たり約10円さらに上昇し、62.2円に。加えて、牧草が3種類とも20%上がり60円台になった。8割以上を輸入に依存するため、輸送費増や中国、インドでの消費拡大の影響を被った。原油高は牛舎で作業するトラクターの燃料費増も招いた。

 配合飼料は農家やメーカーが出資する基金から補てんが受けられるが、牧草にはないため、酪農家に直接しわ寄せがくる。

 餌の加工割合により生乳は成分が変化する。協議会の品質基準を下回ると出荷できないため、搾乳量を維持するには配合飼料と牧草の一定量を確保できる輸入に頼らざるを得ない。

 販売価格の問題も。三家さんは「牛乳1リットルの小売価格が220円ぐらいにならないと採算は取れない」と苦しさを明かす一方で、「消費者離れに拍車がかかるため強くは推せない。安全・安心な牛乳を提供するにはこれ以上の負担には耐えられないことを理解してほしい」と話す。

 県内で20年前に168戸あった酪農家は67戸まで減った。とりわけ3、40代の後継者世代がやめたのが深刻だった。「近年の急激な変化で、対策を打てないのが実情だった。消費者には価格転嫁に理解を、県には現状を知ってもらい、安定した経営を続けるために協力してほしい」と訴える。

 行進は協議会の呼び掛けで午前11時に県庁前に集合。県農政水産部長に自給飼料の生産支援などを要請する嘆願書を提出する。のぼり旗や垂れ幕を掲げ、消費者に現状をアピールしながら大津駅方面へ練る。

 (添田隆典)

 

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