国交省の内部資料(下記)をもとに集計したメーカー別リコール台数。トヨタがダントツ
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重傷事故を引き起こし業務上過失傷害の疑いで捜査の対象となっているトヨタ自動車の「ハイラックス」。実は、私も乗っていた車だった。そこで、メーカー別の傾向を検証すべく国交省に尋ねたが、裏で持っている資料を平気で隠された。もちろんリコール台数ランキング一位に輝いたのは、目下4年連続で増加中のトヨタだった。
◇メーカーのほうを向く国交省
私がリコール車に乗っていたのは、92年から3年半。一昨年リコールされた33万台強のうちの1台だった。つまり、私自身、ハンドル操作がきかなくなり重大事故を起こしていたかもしれない訳で、全く他人ごとではない。調査に乗り出した。
そもそも品質管理はメーカー別に行われているので、メーカー別に検証しなければ意味がない。だが結論からいえば、国土交通省は、メーカー別のリコール台数を、絶対に公表しない。発表すると、不本意ながら一位に輝いてしまったメーカーは、イメージダウンになるから都合が悪いのである。リコール数が多いメーカー(=ここ数年はトヨタ)に、配慮しているのだ。
「国交省は、発表による風評被害でトヨタから損害賠償請求裁判に持ち込まれることを恐れているやに思えます。耐震強度偽装問題の時も、なかなかヒューザーの実名を公表しませんでした」(国交省詰め記者)
官僚は、常に国民よりも業界のほうを向いている。おまえら、いったい、どちらの味方なんだ?という問題である。一方、本来は「国民の知る権利に応える」との大義名分から情報公開を迫るべきマスコミは、前回書いたとおり、広告主の上客より“口止め料”を受け取っている事情から、情けないことに、本来の仕事を何もしない。マスコミも、国民より業界のほうを向いているのである。
もし情報が公開されれば、一位になってしまったメーカーは、汚名返上とばかりに、品質管理の強化に投資し、欠陥車を作らない努力を迫られる。その結果、欠陥車が減れば、国民の安全に寄与する。だから、情報は公開されるべきなのだ。国交省の「リコール対策室」に、情報公開を迫った。
タカハシという担当者が窓口応対した。
--私が乗っていた車がリコール対象であることが分かったんです。メーカー別のリコール台数を知りたいのですが、そういう集計をしたものはありませんか?WEBサイトに一件ごとの届出はありますが、訂正やら再提出やらがあって、集計がたいへんなんです。経年での変化を知りたいんですが、当然、そちらでは、集計したものをお持ちですよね?
「えーっと、メーカー別ですか…。趣旨は、分かりました。たぶんあるかと思うので、調べて、折り返し電話いたします」
ほどなく、電話がかかってくる。
「5年間の集計をしたものが、あります。これは、平成14年度までの5年間ですね。えーっと、読み上げましょうか?」
--となると、3年前までになりますか、データが古いですね。では、とりあえずそれは、ファクスでいただけますでしょうか。番号は○○○……。で、本当に知りたいのは、直近の話です。トヨタが増えているのも、最近の話ですから。メーカー別の傾向があると思いますので、それを見れば、欠陥車にあたるリスクが高いかどうか、メーカー別に判断できますよね。
「えーと、最新の集計は、WEBで発表しているはずなんですが…、ちょっと待ってください、12月に、前年度分の分析をしたものがあったはずです。12月2日の『平成16年度自動車のリコール届出内容の分析結果について』というやつです」
--詳細版(一番下)、私も見ましたが、国産車か輸入車か、とか、装置別とか、発生原因別のものはありますが、メーカー別については、一切なかったですよ。
「あれ?確かに、メーカー別のものはないですねぇ…」
--品質管理は、メーカーごとに、仕組みも水準も異なるのだから、メーカー別に出さないと意味がないんですよ。わざと、出さないようにしているんですか?
「該当するデータがあるかどうか、直接の担当の者に聞いて、ご連絡します」
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国交省提供資料。交文社「自動車セミナー」2006年2月号より。情報が古い |
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翌日、夕方になって催促の電話をしたら、やっとファクス(右記)はもらえた。交文社という出版社の「自動車セミナー」2006年2月号に載っているものだという。しかし、なぜこの程度の古いものしかないのか。
交文社の編集部に、聞いてみた。
--今年の2月号のメーカー別のリコール件数の表ですが、これはそちらで独自に集計したのでしょうか?情報ソースは、どういった資料ですか?
「あ、それはですね、国交省から貰ったものです。そのグラフの数字のまま、貰いました。こちらでは、数字を足したり引いたり、していません」
つまり、国交省が何かの目的で作成したものを、たまたま貰ってきた、というのだ。なるほど、今年の2月に載せる資料としては、3年前までのデータは、古すぎる。それしか貰えなかった、ということだ。
◇持っているくせに、出さない
こうした隠匿体質は、いつものこととはいえ、腑に落ちない。
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独自に入手した国交省の内部管理資料。メーカー別の件数、台数がすべて集計されているが、これは絶対に公表されない
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さらに納得できないのは、別のネットワークを使って入手を試みると、出てきたことだ(右記)。これは、
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2004年1月から直近までのデータを、独自に集計・分析することに。入力し、チェックする作業を1,170行。
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