検定問題漏えい/大トヨタゆえ責任は重い
2003/12/04

 トヨタ自動車といえば、わが国を代表する大企業の筆頭だ。経団連会長の出身会社として産業全体の手本とされる企業でもある。そのトヨタで事もあろうに不祥事発覚とは、恥ずかしい限りではないか。

 問題の一件は、先月三十日に行われた一級小型自動車整備士技能検定の学科試験五十問のうち三十八問が、トヨタから系列ディーラー約三百社に漏れていたというものだ。通報に基づき調査していた国土交通省が二日に公表して、明るみに出た。

 これを受け、トヨタは三日、張富士夫社長が記者会見を行い、事実を認めて「国家試験の公平性を損ない、受験生ら多くの人に迷惑をかけた」と陳謝するとともに、石原伸晃国交相にも謝罪した。

 だが、型通りの謝罪で済む問題でないことは、社長も承知だろう。それだけの社会的責任を負った企業であることを、関係者はあらためて自覚しなければいけない。

 今回の不祥事は、検定専門委員を務めるトヨタ社員が、国交省から事前に渡された三十八問の点検を、系列会社の人材の教育訓練担当者に依頼したことに始まる。

 担当者はさらに問題を社内と系列会社向けのホームページ(HP)に掲載するよう部下に指示、別の問題九十九問と一括して「練習問題」として掲載したという。

 それだけでも疑惑を招くが、決定的なのは、HP上で国交省から渡された問題に星印や注釈を付けていたことだ。検定専門委員には系列会社に問題が流された認識はなかった、といっても通るものでない。

 認識がなかったのが本当としても、国家試験の重要文書を安易に扱った行為は軽率すぎるし、他の社員も含め、守秘義務や順法精神といった規律が緩んでいるのではないかと、思わざるを得ない。

 小型自動車の技能検定は、最先端の技術を使った乗用車を対象に昨年度から始まった。今回の受験者は七千三百人余り、トヨタ系列からは約三千四百人が受験した。

 問題となったHPは系列三百八社が閲覧できるが、実際にアクセスし、試験を受けた社員がいたのは二百四十社だという。

 国交省は事前に問題を知っていた受験者を調べ、合格を無効にする方針で、トヨタ自身も社内調査で、該当者が分かれば、合格を辞退するよう求めていくという。

 それにしても、気の毒なのはまじめに勉強し、試験に臨んだトヨタ系列の受験者たちだ。合格、不合格に関係なく、色メガネで見られるのは避けられない。

 大企業であればあるほど、企業の社会的責任とは何か、肝に銘じておくべきだ。

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