トヨタの「カイゼン」は業務ではなく違法なサービス残業だったのか

( 平成20年05月22日 )

投稿者: 村中  


今朝の朝日新聞のトップ記事です。
トヨタ 「 カイゼン 」 は業務 残業代、全額支払い
「 自主的な活動 」 としてきたカイゼン活動を 「 業務 」 として認定する。

唖然としました。
「 カイゼン 」 活動であるQCサークル活動は、64年から半世紀近く続いているそうです。

世界に冠たるトヨタのトヨタ生産方式と言えば 「 カイゼン 」 であり、QC、TQC、TQMであることは、トヨタの経営を参考にしている人なら誰でも知っていることでしょう。 その 「 カイゼン 」 をトヨタは業務として今まで認定していなかったのです。 驚きを超えた 「 怒り 」 の念を禁じ得ません。

私は、トヨタの従業員が過労死した事件での判決がきっかけになり、トヨタのサービス残業への批判が高まっていることは知っていました。 しかしながら、今日まで 「 カイゼン 」 が業務として認定されていなかったことは、正直知りませんでした。

その理由です。 トヨタ方式に関する本を何冊か読みましたが、いずれの本にも 「 QCサークル活動は無報酬 」 であることが明記されていなかったからです。 ( 月2時間までは残業代を支給していたそうですが )

確かに従業員の自主的活動とは書かれています。 しかしながらTQM ( 総合的品質経営 ) が行なわれているトヨタにおいて、TQMの草の根の活動であるQCサークル活動が 「 ただ働き 」 であることは、いずれの本においても 「 隠されていた 」 と言っても過言ではないと私は考えます。

「 最強の現場をつくるトヨタ生産方式 」
「 トヨタの頭脳が挑んだ最強のTQM 」
「 飛躍的な業績をあげたTQM・・・ 」

このように、トヨタ本の表紙には何とも素晴らしいタイトルが記されています。
「 トヨタ方式 」 を書いた書籍のみならず、トヨタ自体のメッキが剥がれた、私にはそう思えてなりません。

私は、2月10日の論談目安箱への投稿 「 巷のリスクアナリスト様とのリスクマネージメント議論 」 でこのように書きました。

トヨタ方式が成功している理由は知識や技術の標準化であり、「 会社へはアイディアを出しにいく 」 という仕事への考え方そのものであると私は捉えています。

私のこの捉え方は変わっていません。 トヨタの従業員が、「 会社へはアイディアを出しにいく 」 という考え方であれば、トヨタは今後も成長を続けていくことでしょう。

さらに、この投稿では日本経済新聞のデタラメな報道ぶりを紹介しました。

<引用開始>
徹底したマニュアル主義は、ハンバーガーで成功した日本マクドナルドと共通している。

ディズニーランドは米国文化そのものだが、テーマパーク運営にはきめ細やかな接客手法など日本流のノウハウが入っている。従業員参加型のQC(品質管理)活動だ。混雑するイベントへの効率的な誘導や混雑時の入場制限システムなど、世界のディズニーランドの中でもトップクラスといわれるTDLの接客態度の良さの背景になっている。
<引用終了>
日本経済新聞社説 2003年4月15日 独走するディズニーランド

繰り返しますが、TDLではQC活動は行なってきませんでした。 この日経新聞の社説を読み 「 わが社もTDLの成功に学びQC活動を 」 とQC活動を導入した経営者がいたとしたら実に哀れです。

今回のトヨタの 「 QC活動は業務外 」 問題が、今後産業界にどのような影響を及ぼしていくのかは分かりませんが、少なくともTDLへの 「 疑いの目 」 だけは持って欲しくない、そう願ってやみません。

最後に、そのTDL従業員の残業について簡単に記しておきます。

サービスの生産現場であるパーク運営部門では、管理者がスタッフに残業をさせる必要があるのか、させる必要がないのかを判断します。 つまり、パーク運営部門の管理者は、残業という労働の延長はまさに 「 業務そのもの 」 と考えているのです。

残業を指示するのは管理者の仕事です。 この当たり前のことがトヨタの管理者には理解されていない、私にはそう思えてなりません。