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【群馬】

草津・楽泉園の『重監房』復元 厚労省 2010年度予算化へ

2008年9月9日

重監房の便所跡。ふたもなかったという=草津町で

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 草津町の国立ハンセン病療養所「栗生(くりう)楽泉園」で戦時中患者たちを強制収容し、戦後破壊された「重監房」について、厚生労働省は二〇一〇年度に復元に向けた予算化を目指す方針を固めた。年内に検討会を発足させ、〇九年度にも計画をまとめる。全国の療養所で唯一の重監房をめぐっては、約四年前に回復者らが同省へ復元を求める約十万七千人の署名を提出。その後積み重ねた交渉が結実し、実現へ動きだす。 (菅原洋)

 同省と関係者の話を総合すると、同省担当者が現地を数回視察し、既に園内で候補地を選定。園内には、重監房の存在した場所にこけむした礎石が残り、この風景が歴史の重みを伝えるため、復元は別の場所になる見通し。

 検討会は早急に発足させ、メンバーは回復者のほか、歴史、考古、建築、復元などの幅広い学術分野の有識者ら数人から十数人を想定している。

 月一回程度のペースで開き、最初から二回ほどはメンバー間で差別の歴史に対する認識を共有。その後は現地調査も実施し、来年五、六月をめどに計画をまとめたい考えだ。一〇年度予算では、本格的な調査費や設計費などの計上を目指す。

 重監房は、主に不条理な理由で九十三人の患者たちが強制収容され、出所後も含めてうち二十三人が死亡。患者たちに知らされずに破壊された。

 このため、同園の自治会副会長で、国家賠償訴訟全国原告団協議会長の谺(こだま)雄二さん(76)が〇二年、復元を提唱。新潟大医学部の宮坂道夫准教授(生命倫理学)も尽力し、国会議員や有識者らも協力して署名運動を展開した。

 谺さんは「園内では、回復者手づくりのハンセン病資料館を開設する準備もしている。重監房が復元されれば、草津を差別の歴史を伝える拠点に発展させたい」と期待を膨らませている。

 

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