『学校は、社会の不平等を再生産している。』
欧米ではこういう問題についての議論が盛んだそうです。
ヨーロッパは階級社会だし、アメリカは多民族社会だから、学校で成功できるチャンスがどのような家庭に生まれたかによって大きく左右される様子が目に入りやすく、こうした問題が大きくとりあげられることになるらしい。
「いやぁ〜、日本の社会は階級とか関係ないし、ほんとよかったよね！」なんて話を聞くことがありますが、この本によれば、こうした問題は日本においても深刻です。しかも、日本の場合、戦後の「大衆教育社会」の広がりによって、こんな風に不平等の状況が見えにくくなっているから、よりいっそう深刻らしい。
「大衆教育社会」とは、
�ゞ軌蕕�量的に拡大し、多くの人びとが長期間にわたって教育を受け、またそうすることを望んでいる社会 であり、
��多くの人が能力と努力の結果である「業績」を基準に報酬の分配や社会的な地位が決まると考える社会 であり、
��そうした業績主義によって選び出された「エリート意識」のないエリートが大衆を支配している社会
だそうです。
でも最近は、経済的な格差が拡がってきて、日本でも教育の不平等に関する話題が持ち上がることがあります。
例えば、１９９１年の中教審の中間報告では、少数の私立中高一貫校が東大などの「エリート大学」の入学者の多数を占めるようになっている状況を取り上げ、これは教育における公平原則の危機だと発表され、話題になりました。
私立の中高一貫校への入学は、大都市圏に住んで有名進学塾なんかにもバッチリ通える裕福な家庭の子どもに有利にはたらく。そういう子ばかりが「エリート大学」に入って社会を牛耳れるようになって、また世代を超えてその社会的地位を再生産するということは許されるべきではない。だから、私立の中高一貫校から「エリート大学」への入学を制限しよう、という話。
たしかに１９７０年くらいまでは東大入学者の大部分が公立高校出身者だったようですし、１９９３年になると東大合格者数ベスト２０校のうち１５校が私立校になっているという状況があるようです。やっぱり今は東大も金持ちばかりなのでしょう。
ところがです。
東大入学者の保護者の７割以上が、上層ノンマニュアル（医者、弁護士、大学教授などの専門職や、大企業、官公庁の管理職、中小企業の経営者など）と呼ばれる階層の出身者だっていう状況は、ずっと変わっていないんだって。
経済的な格差による不平等以前に、階層差による不平等がずっと根をはりつづけているわけです。
データも統計学的な根拠に基づいて解析されているようだし、そういう意味では客観的な主張といえそうだ。
著者は他にもたくさんの根拠を挙げて、「大衆教育社会」がどのように成立したのか、日本において教育は社会の構造にどのような影響を与えているのかを分析しています。
最終的には「教育は社会の構造問題と密接に関係しているのだから、教育政策はそうしたことをふまえて決定されなければいけないよ」ということを主張しているようなのですが、うん、たしかにそうだろうけどさ、でもな〜、やっぱりこういう話ってこんな風につっこみたくなるよ。
「じゃあ、けっきょくどうすりゃあいいのさ！？」
さぁ、いったいどうすればいいのでしょう？
幸ベエ２号