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【社説】

米金融不安 もう一段の対応策を

2008年9月13日

 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営危機が加速している。米政府は先に政府系住宅金融二社の救済策を発表したが、金融不安はむしろ深まってきた。もう一段の対応が求められる局面だ。

 まさに米政府の動きを見切ったかのような市場の反応といえる。

 米財務省がサブプライムローン問題で苦境に立っていた米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に公的資金を投入し、救済する方針を発表したのは七日の日曜日だった。

 公的資金の投入には抵抗感が強かった中、思い切った措置ではあったが、金融市場はこれで一段落かと思えば、小康状態を保ったのはわずか二日にすぎず、九日には業績不振が続いていたリーマンの株価が急落した。

 同社は予定を早めて十日、六−八月期決算で純損失が三十九億ドル(約四千二百億円)に上り、二・四半期連続の赤字になる見通しを明らかにした。同時に、商業不動産部門の分離など再建策も示したが、市場は評価せず、株価は数ドル台で低迷している。

 リーマンにとどまらず、十一日には業績が低迷していた別の証券大手メリルリンチの株価も急落した。仮にリーマンが破たんするような事態になれば、他の金融機関に飛び火して、信用不安が一挙に広がる懸念もある。

 問題の根源である住宅市場はなお価格下落が続き、底を打つ気配がない。最近では、ショッピングモールなど商業不動産関連のローン債権まで下落している。

 昨年夏から始まった危機は収まるどころか、盤石とみられた投資銀行の破たん懸念という形で新たな段階に入ったとみるべきだ。

 ファニーメイなど政府系住宅金融二社は、住宅金融市場全体の半分に相当する五兆ドル(約五百三十兆円)の住宅ローン関連証券を保有または保証している。

 同社が発行する証券は日本をはじめ世界中の中央銀行や金融機関が保有しており、破たんすれば世界的な金融危機を招く恐れがあった。米政府が両社を管理下に置いた措置は妥当だ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、リーマンのような投資銀行に対しても資金繰り面で支援できる。すでに別の金融機関がリーマンの買収に動いているとも伝えられるが、米当局も信用不安の連鎖を抑えるために、可能な限り側面支援すべきだ。日本も市場動向から当分、目が離せない。

 

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