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子ども急病電話相談「#8000」利用に大きな地域差

2008年9月13日

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写真当直の女性看護師らに次々と相談の電話がかかる=大阪市、日置康夫撮影

 子どもの急病に備えて、44都道府県が開設している小児救急電話相談窓口「#(シャープ)8000」の相談件数に、大きな地域差があることが朝日新聞の調査でわかった。周知不足に加え、相談を受け付ける看護師や医師が不足し、体制づくりが難しいことが背景にある。(辻外記子、龍沢正之)

 各都道府県の担当部署に07年度の相談状況を聞き取ったところ、開設日の1日当たりの相談件数が最も多かったのは大阪の95.3件で、人口千人あたり3.95件。次いで東京57.3件で、兵庫53.4件、福岡45.8件、埼玉43.5件の順だった。大阪の場合、毎日午後8時〜翌朝8時に受け付けており、件数はここ数年、伸び続けている。

 一方、最も少ないのは秋田の2.0件で、人口千人あたり0.56件だった。平日のみだった相談窓口を昨年9月、毎日午後7時半〜午後10時半に広げたが、件数は横ばいだ。昨年度の事業費は915万円で、相談1件に1万4600円かかった計算。今年度は母子手帳にはるPR用シールを作るなどしている。

 ほかに少ないのは佐賀の2.5件や山梨、島根の2.7件。佐賀はテレビCMのほか、乳児健診時のパンフレット配布などを進めているが、件数は伸びていない。

 高知や奈良など9県は、土曜と休日だけの対応にとどまる。「夜間に対応できる看護師が足りない」(高知)など、スタッフを確保できないのが悩み。代替措置として、専門の民間企業への委託も9県に広がっている。

 未実施は富山、鳥取、沖縄の3県。理由は「電話では正しく助言できない恐れがある。1日数件ではコストも合わない」(沖縄)、「夜間の診療体制が確立しており不要」(富山)などだった。

 厚生労働省医政局指導課は「相談事業はまず始めることに意義があるが、件数が少ない県は利用しやすさなどを工夫する段階に来ている」としている。

     ◇

 「夕方から娘の熱が下がらないのですが」。不安げな母親の電話に、相談員の看護師がメモを取り始めた。「水分は取ってます? 明日の受診でいいと思いますが、様子をしっかり見ていてください」

 平日の深夜、大阪府の小児救急電話相談「#8000」のダイヤルセンターでの光景。待機する2人の看護師が午後8時の受け付け開始と同時に次々と相談に応じていく。朝まで相談を受け付けるのは大阪と福島、長崎、大分の4府県だけだ。

 「シールが鼻の中に入った」「3回吐いた」「発疹が出た」――。受話器を置くとすぐに次の相談が入る。即座に救急病院を勧めるのは全体の1割強。この日の相談員の看護師(29)は「情報が多すぎて、今の親は何を信じていいか分からない。仕事を持つ母親が疲れて考える余裕さえ失っている」と感じている。

 都道府県による「#8000」の考え方を発展させ、市町村独自で成人向けの相談を始める動きもある。兵庫県伊丹市は7月から、大人も24時間利用できる市民向けの無料電話医療相談を始めた。

 97年に4756件だった市内の救急搬送は07年、7685件に急増。市内の医療機関は医師不足や軽症でも病院に駆けつける「コンビニ受診」に苦悩していた。そこで、子どもから高齢者まで電話相談に応じられる東京の民間会社に委託すると、7月の相談は予想を大幅に上回る2122件にのぼった。市地域医療体制整備推進班の後北(うしろきた)桂子主幹は「市民に根づけば患者の不安は解消され、医師の負担も減る」と期待を寄せる。

     ◇

 〈小児救急電話相談事業〉 子どもの急病やけがについて医療機関の受診が必要かどうか、全国共通の番号「#8000」に電話すると、都道府県の窓口につながり、医師や看護師の助言を受けられる。02年に広島県で始まり、国が事業費の2分の1を補助する形で、04年度から各都道府県に設置を求めている。保護者の不安解消や重症患者の早期発見のほか、救急病院に殺到する軽症患者を減らす役割も期待されている。

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