◎金大法科大学院 結果出せる体制づくりを
法科大学院(ロースクール)修了者を対象にした今年の新司法試験で、金大の合格率が
全国平均の33%を大きく下回る9%にとどまったことを大学は深刻に受け止める必要がある。保岡興治法相が法科大学院の統廃合に言及し、中教審の特別委員会も再編を含めた改革案を検討する中、金大が北陸三県で唯一の存在だからといって安閑としていられる状況にはない。学生確保の在り方を含め、結果を出せる体制づくりに真剣に取り組んでもらいたい。
今年で三回目を迎えた新司法試験では、首都圏や従来の司法試験で実績のある大学が着
実に合格者数を増やす一方、まだ合格者が出ていない大学もあり、序列の固定化が鮮明となった。このままでは合格率の高い大学にさらに優秀な学生が集まり、結果を出せないところは法曹志望者から見放され、淘汰される可能性がある。
金大は昨年も全国平均を下回り、今年は受験者四十七人中、合格者数は四人にとどまり
、七十四校中、五十五位となった。これらの結果を見る限り、法曹養成機関としての役割を十分に果たしているとは言い難い。
金大は法科大学院の設立申請段階から執行部の方針が定まらず、準備がもたついて出遅
れ感が否めなかった。北陸三県の弁護士会の後押しを得て教育体制を整えたが、合格率の低迷はスタート時の準備不足と無関係ではあるまい。合格率の高い大学がどんな教育をしているのか謙虚に学ぶ必要があるのではないか。
法科大学院は多様な法曹を育成する目的で二〇〇四年度から創設された。政府は新司法
試験の合格者を二〇一〇年度ごろに年間三千人に増やす目標だが、今年は二千六十五人であり、達成は極めて困難な状況である。合格率が最高の61%から0%と開きが大きいのはやはり問題であり、合格率の低い大学については再編統合や定員の縮小は避けられないだろう。
金大は存続できたとしても、低迷が続けば独立法人化以降の改革の流れに水を差し、大
学全体の評価にも影響しかねない。法科大学院の在り方が今のままでよいのか全学挙げて議論し、見直し策を打ち出してほしい。
◎汚染米の売買廃止 やむを得ない不正防止策
残留農薬やカビ毒などに汚染された輸入米が「三笠フーズ」以外の業者からも食用とし
て不正に転売された問題を受けて、農林水産省は汚染米については輸入米に限らず国産米であっても売買を全面的に廃止する方針を固め、具体策の検討に入った。日本の経済を支える商人精神の劣化を示す問題が相次いで起きた揚げ句に、汚染米をめぐる不正が発覚し、それが病院や高齢者福祉施設の給食にまで回されていたことや、農水省の検査・管理態勢の甘さから長年にわたって見逃されてきたことを考えると、やむを得ない措置だ。
コメ市場開放のため、減反に加え余剰米を抱える日本もウルグアイ・ラウンドの合意に
基づき、最低の義務として年間約八十万トンのコメを中国やベトナム、米国などから輸入している。
問題はほとんどこの輸入米から汚染米が見つかることである。輸出先の国へ返品するこ
とも検討するそうだが、返品するためには汚染米だったとの完全な証拠を付ける必要があるのではないか。相手によっては認めない場合も出てくるなど、そう簡単にはいかないことも予想される。
そのような場合はどうするのか。もったいない話だが、さらにお金をかけて焼却処分に
するのか。そうした点が今一不透明だ。売買の全面的廃止とは別に、入札業者を限定する方法も考えられているといわれる。その場合、信用できる実績のある業者に入札を限定し、それと同時にチェック態勢を厳しくして汚染米が確実に工業用や肥料用に回るようにすることが不可欠だ。
農水省は汚染米が転売を繰り返されながら焼酎、日本酒、和菓子、給食などに化けた流
通経路を明らかにし、責任を問う構えだ。
それはよいとしても、この際、輸入米からどれくらいの割合で汚染米が見つかるのか。
国内米ではどうなのかといったことも調査し、詳しく説明してほしい。問題が起きたら、その原因を徹底的に調べるという責任を農水省には果たしてほしいのである。それは再発防止の出発点だ。