医療介護CBニュース -キャリアブレインが送る最新の医療・介護ニュース-

CBネット |  医療介護CBニュース

政府(厚労省他)


救急搬送の最低基準、国が策定へ

 消防庁の「メディカルコントロール(MC)作業部会」(座長=横田順一朗・市立堺病院副院長)は9月12日、救急搬送や応急処置について国の最低基準をつくり、それを基に都道府県や市町村も基準を定めていく方向で大筋合意した。消防法を改正して現在のMC協議会にてこ入れし、都道府県が搬送や応急処置基準を策定する際に意見を述べる機能を持たせる。作業部会はこの方向性について、19日に開かれる「救急業務高度化推進検討会」に報告する。

【関連記事】
MC協議会の過半数が救急搬送を検証
消防法改正視野に救急問題解決の議論開始
MC協議会の設置根拠を強化へ
救命士の再教育、病院からMC協議会にシフト
国の救急搬送詳細調査、10月から東京都でスタート

 MC協議会は、2001年に出された救急救助課長通知が設置根拠で、全国に47の都道府県MC協議会と248の地域MC協議会がある。資格取得後の救急救命士の病院実習や、救急業務に関するプロトコル作成などの業務がある。
 近年の救急受け入れ不能の問題などを受け、同検討会でもMC協議会を救急搬送の検証の場として活用することを求める報告書がまとめられたが、「設置根拠が課長通知では基盤が弱く、荷が重い」などの指摘があり、地域によって活動に温度差があることも問題視されてきた。こうした状況を受け、増田寛也総務相の指示の下、消防庁はMC協議会にてこ入れするため消防法改正も視野に、作業部会を設置して議論を続けている。

 同検討会の事務局は作業部会に対し、MC協議会について、「応急処置・救急搬送に関する基準などの策定に関して意見を述べる」機能を新しく追加することを提案。国が定めた応急処置や救急搬送に関する「最低基準」に基づいて、都道府県が地域の実情に合わせた基準を策定し、その際に都道府県MC協議会から意見を述べるようにするとした。応急処置に関してはさまざまなプロトコルがあるが、救急搬送業務に関しては特に定められている基準がないため、病院選定も含め、医学的観点から「質」を保証する基準の策定が必要とした。

 作業部会の委員は、救急搬送に関する基準が必要なことや、その最低基準を国が定めていくという方向では意見が一致したものの、細かい部分については異論が多く出た。
 鶴巻良男委員(新潟市消防局救急課長)の代理として出席した伊川章氏(同課長補佐)は、「搬送基準があれば、それに基づいて活動しているということで、救急隊の活動の保障になる」と述べた。
 橋本雄太郎委員(杏林大総合政策学部教授)は、「いわゆる『ブラックリスト』の患者や、ホームレスなら『体を洗ってこないと受け入れない』と言われるなどの問題もある。高齢者施設からCPA状態ということで職員から通報があっても、普段の状態や服用している薬も分からないので、救急隊はどうしていいか分からなくなる。こうした問題が解決しないと、搬送基準をつくっても意味がない」と述べた。

■基準通りに運べなかったときは?
 鈴川正之委員(自治医科大教授)は、「搬送基準があっても、結局運べなかったということが起こったとき、MC協議会がそこに踏み込んで議論をするのか。地域には『救急医療対策協議会』などもあるので、すみ分けも考えていかなければならない」と指摘した。
 平山宏史委員(岐阜県健康福祉部医療整備課長)は「保健医療行政だけでなく、福祉行政の問題もある。ここまでいくとMC協議会には荷が重いので、保険医療行政とのすみ分けが必要」と述べた。
 横田座長は、自治体の保健衛生部局が主管する協議会や医療機関との連携を考え、医療機関側にある問題なども解決しなければ、最前線にいる救急隊や救急医が疲弊する状況が改善されないとした。その上で、「MC協議会が救急医療の問題に対して声を出し、地域の『救急医療対策協議会』などで受け止められるような道筋がないといけない」として、厚生労働省との連携を要望した。

■地域の実情に合わせた制度を
 高橋信行委員(国学院大法学部准教授)は搬送基準の運用について、「都道府県が定めた搬送基準を全市町村が一括して採用するというのはどうか。例えば、千葉県船橋市と市川市ではドクターカーの有無の違いがあり、状況が違う。フレキシブルな制度でないとうまくいかない」と、市町村レベルでは地域の実情に合わせた柔軟な仕組みを求めた。


更新:2008/09/12 21:06   キャリアブレイン


注目の情報

PR

CBニュースからのお知らせ

CBニュースは会員サービスの“より一層の
充実”を図るため、掲載後一定期間経過した
記事の閲覧にログインが必要となりました。

今後ともCBニュースをご愛顧いただけますよう、
よろしくお願い申し上げます。

ログイン-会員登録がお済みの方はこちら-

キャリアブレイン会員になると?

転職支援サービス

専任コンサルタントが転職活動を徹底サポート

スカウトシステム

医療機関からスカウトされる匿名メッセージ機能

医療介護ニュース

独自記者の最新の医療ニュースが手に入る!

キャリアブレインの転職支援サービスが選ばれる理由

【第28回】工藤高さん(株式会社MMオフィス代表) 病院の経営に変化が起きている。以前はベッドがあり、医師がいて、看護師がいれば、誰でも経営できたが、現在は全体で黒字となっている病院はわずか3割にすぎない。病院にも経営努力が求められる時代にあって、生き残りには何が必要とされるのか。病院を経営するとは ...

記事全文を読む

患者に寄り添う看護に重点医療法人社団昌栄会「相武台病院」(神奈川県座間市)24時間保育でママさん支援 厳しい労働実態から離職率が12.3%に達するなど、看護師の確保・定着が看護現場の重要な課題になっている。こうした中、神奈川県座間市の医療法人社団昌栄会相武台病院では、組織を挙げて働きやすい職場づくり ...

記事全文を読む

夏の健康管理に気をつけて!

各地で「猛暑日」となる気温35度を記録するなど、今年の夏も暑い日が続いています。体調を崩さない為に夏の健康対策をどうすればいいか、医師に尋ねました。

>>医療番組はこちら


会社概要 |  プライバシーポリシー |  著作権について |  メルマガ登録・解除 |  スタッフ募集 |  広告に関するお問い合わせ