2008年09月09日

商法1の採点結果等

全ての成績入力を終えましたので、データ的な結果のみをとりあえず、公表しておきます。

法学部デイタイム
総受験者数:416名
合格率:56.7%
平均点:58.3点

法学部フレックスタイム
総受験者数:48名
合格率:89.5%
平均点:65点

商学部デイタイム+フレックスタイム
総受験者数:181名(フレックス27名)
合格率:75.1%
平均点:60.8点

という結果になりました。
商学部はデイタイムもフレックスタイムも同じ出題のため、合計で計算しています。

簡単に結果を分析した感想を述べれば、法学部デイタイムの合格率が6割いかなかったことが非常に残念です。
これは大半が六法持込でありながら、条文を確認しなかったことによるミスで得点できなかった解答が多々見られたことが原因と思われます。
たとえば、商法17条4項と記載しながら、弁済が有効となる主観的要件を善意無過失としていたり、民法478条を的確に書けていない受験者(473条とか、438条とかの記載もありました)が多数見られたことからも、裏付けられると思います。
また、名板貸について、「自己の名称・商号の使用を許諾」などと書いてしまって、得点できなかった(現行の14条は商号のみです)受験者、また、いつの文献を見て勉強したのか、擬制商人に民事会社を掲げて得点できなかった(平成17年改正により民事会社に関する規定は削除ないし廃止されています)受験者もいました。
擬制商人の行為に商行為に関する規定を用いるためには503条を間に挟まなければならないことを指摘するのであれば、同時に民事会社に関する準商行為の規定を廃止したため、擬制商人の営業行為自体は民法を適用するほかなくなってしまったという奇妙な立法の不備に気がついてほしかったです。
また、過日指摘したことではありますが、約款論について、あまりにも古い自治法規説や白地商慣習法説などの対立を延々と書いてほとんど得点できなかった(約款のメリット・デメリットを指摘し、その合理性からの拘束力と弊害に対する制限的解釈にふれてはじめて得点となります)受験者もかなりいました。
ましてや、自治法規説を支持する答案については、呆れるしかありませんでした。おそらく今の商法学界で自治法規説を支持する見解は皆無だと思うのですが…。
また、私は講義でできるだけ最高裁判例が確立されているものはそれに基づいて答案は書くように指導してきたつもりですが、商人資格の取得時期について段階説を記載している答案も相当量ありました。それ自体は別にかまわないのですが、段階説をきちんと理解していないまま適当に書いているため、本来、段階説が対抗力について段階を形成していることをまとめきれておらず、結果的に段階説と言いながら、段階説の説明になっていない答案が多く見られました。
あと、叩き台というか、もとにした解答例があるのか、全く同じ文章の答案が数多く見られましたが、大半が不可になっております。明らかに不備が多く、最終回の講義でこれには言及してほしいといったキーワードが述べられておらず、古い議論ばかりが書かれており、特に、営業譲渡の効果として、債権者に対する関係についてはふれていても、譲渡人の債務者に対する関係については全くふれていないなど、何のために最終回でわざわざ解説をしたのか、解らなくなるほど情けない答案ばかりでした。
私は、予備校本や専門学校本を否定したり、積極的に批判するつもりはさらさらなく、要領よくまとめられている箇所については、むしろ答案構成とかに利用するのは、まず形から入って、法律学の論文答案の書き方を学ぶためにもそれなりに有益だと考えています。
しかしながら、商法の中でも、とりわけ商法総則・商行為法については、商法学者の間でも本当に真剣に議論が尽くされてきたとは言い難い分野であり、従前からの古い議論が何の疑問もなく、そのまま受け継がれてきたように思われます。
したがって、予備校本等も所詮それらの焼き写しの域をでておりませんので、全面的に依拠するのはかなり危険だと思います。特に法改正によってさまざまなぎくしゃくした立法になってしまった総則部分については、従来の議論だけでは到底解説できるような代物ではないということだけは、しっかりと頭に入れておいて下さい。これは、商法といえば、会社法か手形法といった分野が主流であり、それができることが商法ができることといった誤解?に基づいた傾向から、これまで総則・商行為などの分野を適当に扱ってきた商法学者の怠慢の結果でもあると思います(あえて毒を吐かせていただきます)。
だからこそ、取引法や商事契約等だけでなく、時効・利率、代理権といった部分に関しても、商法と民法の両方の研究者が対等にわたりあい、研究する場が設けられることをずっと欲しているのです。
もちろん、私がそこに入りたいとは願っておりますが、できれば、私よりも若い世代にどんどんこれまでの古めかしい議論を根底から覆すほどの研究・議論を積み重ねていってほしいと思っています。

とりあえず、たくさん書いたのに不可になったのは納得いかないという受験者は遠慮なく異議を唱えてもらって結構です。誤字・脱字も含めて、徹底的にどこが不合格になったのかを明らかにして、説明します。ただし、自分は合格したが、可ではなく優や良の答案のはずだというような異議は原則としてなされても受け付けません。これについては、採点基準に対する価値観の違いもありますので、受験者がこのくらい書けていたら良くらいくれてもいいではないかというのと、私がこのくらいでは合格にはできても良以上の成績を与えるわけにはいかないというとではどこまでいっても相容れないと思いますから。

ただ、デイタイムの受験生の答案には、誤字が相当の割合で発生していたことをあえて強調しておきます。それもここに具体的に書くのは、関大法学部生に対する一般的評価に多大な影響があると思われるため、躊躇われるほどの誤字が多々見られたことを残念に思っております。

どうか、後期はもっと真剣に頑張って下さい。
理解度よりも単位取得さえできればいいのだといった動機の受講生は履修変更されることをお勧めします。
私の採点基準は、あくまでも、理解度および最新の議論をフォローしたものかどうかを答案で判断して合格させるかどうかを決定いたしますので、優・良・可・不可の割合を最初から決めている先生方とは異なったものでありますから、一定基準に達すれば誰でも優〜不可の可能性があります。

その点から言えば、フレックスの法学部生の答案には、素直さと真剣さがかなりうかがえましたので、好感を抱きました。

あと、補足として、全部に解答できてないのに、思わぬ評価になっていたりした受験生は、自分の書いた部分に対する私の評価が、この子は時間さえかければできるというか、一定の理解度が垣間見られるため、その将来性に期待してのものであると思って下さい。
逆に全問、相当書いたのに不可になった受験生は、よほど的を外している、誤字、条文の要件表記ミス、無駄な記述、などがかなり目立つ、あるいは論理矛盾、日本語の文章になっていないといった初歩的な減点箇所が多かったものと反省して下さい。

prof_sasamo at 07:38 │Comments(4)この記事をクリップ! 教育 

この記事へのコメント

1. Posted by kansai-u    2008年09月10日 12:10
お忙しいところ、このような形で試験の詳細にわたり講評をして頂けるのは有り難いことです。できれば、関大の制度として試験後全科目で講評が頂ければなあと思いました。
2. Posted by 法学部生T    2008年09月10日 14:13
試験結果で、自分の答案が思わぬ評価になっていたりした受験生のうちの一人です。
どういうところがどういう風に加点されたのか、今後の笹本先生の講義・試験対策や、今後の法律の勉強のために、できれば採点された答案を見せてもらいたい。
というような要望は不可能なのでしょうか?

勉強したけど記憶が曖昧なところが出たり、ヤマを張った所以外が出て、最悪、問いに答えることだけは意識して、理屈は頼りない記憶を頼りにほぼ勝手にでっち上げたうえで、(特に事例問題では)ひたすら最後のあてはめに字数を割いたような答案でも優評価だったりしたことが、以前から結構あります。
その都度、自分の答案のどういう所がどういう風に採点されたのかが気になって、今まで何人かの先生にはアタックしてみましたが、却下されました。
僕の頼み方・言い方が悪かったため断られたのかもしれませんが、笹本先生はその辺り如何ですか?

法科大学院の既修者試験を目指しているので、法学部の教授達がどういうところを評価するのかというのが、とても気になるんです。

関大の法科大学院の過去問を見ると、半分ぐらいは法学部の教授(法科大学院兼任講師である人も含めて)が問題を作成しているのではないかと思える問題が結構あります。
例えば、2007年のA日程の憲法第2問「なお、念のためとして、判決の傍論で憲法判断を加えることの問題点」の論点なんかは、まさに小泉先生がその当時の憲法4の講義で熱く語っていたところだと思えてなりません。
3. Posted by 法学部生フレで不可になった学生    2008年09月11日 16:11
この先生のブログを読ませていただいて、少し疑問が生じたので質問させてください。
「また、いつの文献を見て勉強したのか、擬制商人に民事会社を掲げて得点できなかった(平成17年改正により民事会社に関する規定は削除ないし廃止されています)受験者もいました。」
これ、多分私の答案ではないかと思います。今、免許合宿中でして、手元に資料が全く無いので、あいまいな書き方になるのを許してください。
たしか、あまりきれいではない、汚い字で「会社の商号は同一地域内では利用できない」みたいな答案だったと思います。この答案は、今年前期に履修してた山名先生の知的財産法の最新のテキストに載っていた記述です。
もし、先生がブログでご指摘された内容
が私の答案のことならば、ぜひ先生のところへお伺いしたいです。
もし、違う学生の答案のことをブログで書かれたのならば、私の勘違いですので許してください。

最短で23日に合宿から帰れるので、教務課に異議申し立てができないのがとっても残念ですが、その問題だけで必死で調べて、覚えて、書いた答案が不可になったとすれば非常に残念ですし、悲しいのです。
前期すべての科目の中で一番努力したのに、唯一この科目だけ不可でした。この悔しさは尋常ではありません。
ぜひ、お返事よろしくお願いします。
また、教習所から自転車で30分くらいの漫画喫茶から書き込んでいるので、先生のお返事を確認できないかもしれません。すごく身勝手な理由を許してください。
4. Posted by 一回生    2008年09月12日 04:29
1 だから葛原に悪口をいわれるんだよ
そろそろ気付けよ

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