医療介護CBニュース -キャリアブレインが送る最新の医療・介護ニュース-

CBネット |  医療介護CBニュース

医療一般


市民病院と医師会の連携で小児科医の負担軽減を

 市民病院の夜間小児救急外来を地域の開業医が診る「小児救急医療連携事業」が、効果を上げている。連携事業を担うのは、埼玉県志木市立市民病院と、志木市を含む4市からなる朝霞地区の医師会。月曜日から土曜日の夜間2時間、市民病院の夜間小児救急外来に医師会所属の開業医が入る。過酷な勤務を強いられる小児科勤務医の負担軽減につながっている。

【関連記事】
医師の過重労働に「緊急停止ボタン」を
医師の7割超が仲間の過労死など経験
心身共に限界−疲れ果てる小児科医(前)
当直は過重労働−疲れ果てる小児科医(後)
医師の過労防止「まず母親の安心を」(前編)―東京の医療を守る会

 朝霞地区の中核病院である志木市立市民病院は、同地区の小児救急搬送の約7割を受け入れるなど、中心的な役割を果たす。一方で、4人しかいない常勤の小児科勤務医に過重な負担を強いる状況になっていた。
 今年4月にスタートした同事業では、小児科を診られる開業医の有志約35人が、1日ずつ順に夜間小児救急外来に入る。勤務時間は月曜日から金曜日の午後8―10時、土曜日の午後7―9時。開業医は1人当たり月に約1回、市民病院で勤務する。患者の容体が重篤である場合は、当直に入っている市民病院の小児科医に回すが、軽症の患者が多く、約8割は開業医が診て帰しているという。
 
 市民病院院長で小児科医の清水久志氏は、開業医による支援について、「非常に助かっている。精神的にかなり楽になる」と話す。
 市民病院の常勤小児科医は4人。うち2人は60歳代だ。非常勤医師もいるが、当直は4人でこなしており、週に2回当直に入らざるを得ない。当直の翌日も勤務するため、当直日は実質36時間連続勤務。小児科病棟の管理、救急搬送患者対応の合間を縫って、小児救急外来の患者に対応するという過酷な業務を強いられていた。
 だが、開業医が夜間の小児救急外来を診ることにより、当直の勤務医の外来対応の負担が減少。直接的な勤務時間の減少にはつながっておらず、開業医から患者が回されることもあるものの、ひっきりなしに患者の対応に追われる状況は改善した。救急搬送患者への対応後、一息つくことができるようになるなど、余裕が生まれたという。

 朝霞地区医師会によると、連携事業がスタートした4月から8月にかけて、開業医の診療時間内に小児救急外来に来た患者の数は、1日平均4.3人。ただ、患者がゼロの日もあれば、12人の日もある。事業に参加する開業医は、「忙しい日に支援することが、病院の小児科医の負担軽減につながり、それが一番大事だと思う」と話している。


■市民病院の窮状「何とかしなければ」/「すぐにできることを」が成功の秘訣

 「小児救急医療連携事業」の旗振り役となった朝霞地区医師会会長の橋本啓一氏は、同事業を計画したきっかけについて、「(市民病院の小児科医が)いつ倒れてもおかしくない状況に危機感を覚え、何とかしないといけないと思った」と話す。市民病院再生計画に取り組む長沼明・志木市長が仲立ちする形で、市民病院と医師会両者の話し合いが「あうん」の呼吸でスタートしたという。一方、医師会所属の開業医にも、「夜間の小児救急を市民病院に任せているのは申し訳ない」との思いがあり、橋本氏は「市民病院の窮状を説明し連携を提案したところ、みんな乗り気で立候補者が多数出た」と言う。

 連携事業実施の決定後、実行に当たっての詰めは、市民病院側、医師会の開業医側のそれぞれ数人のスタッフが中心に行った。開業医向けの小児科救急外来支援マニュアルを作成し、開業医の実地見学、看護師や薬剤師との連携体制の確認などを経て実現に至る。
 連携事業の立ち上げにかかわったある開業医は、「実行に移しやすいよう、なるべく『敷居を低く』することを心がけた」と語る。開業医向けのマニュアルは可能な限り薄くし、さらに概要版を作成した。慣れない病院で小児「救急」患者を診ることになる開業医の不安に配慮。重症患者の専門医への振り分けがきっちりできるよう、「生後何か月未満の子どもの発熱は市民病院の専門医へ回す」など、判断のガイドラインを示し、効率的かつ安全な対応を目指した。

 この開業医は、事業が効果を上げていることについて、「すぐにでもできることを、とりあえずやった結果だ」と話す。さらに、「まず実行しつつ、その中で、これでいいかどうか検証しようと思った。医者はどうしても理想が高くなって、きちっとした形を作ろうとしてしまう傾向があるが、無理をすると続かない」と言う。

 4月にスタートしてから既に約5か月。開業医も業務に慣れ、看護師など病院スタッフとの連携もスムーズだ。市民病院の小児科医が重篤な患者の処置を行うのを見ることができ、開業医にとっても勉強になるなど、意外な効果も生んでいるという。


更新:2008/09/12 15:10   キャリアブレイン


注目の情報

PR

CBニュースからのお知らせ

CBニュースは会員サービスの“より一層の
充実”を図るため、掲載後一定期間経過した
記事の閲覧にログインが必要となりました。

今後ともCBニュースをご愛顧いただけますよう、
よろしくお願い申し上げます。

ログイン-会員登録がお済みの方はこちら-

キャリアブレイン会員になると?

転職支援サービス

専任コンサルタントが転職活動を徹底サポート

スカウトシステム

医療機関からスカウトされる匿名メッセージ機能

医療介護ニュース

独自記者の最新の医療ニュースが手に入る!

キャリアブレインの転職支援サービスが選ばれる理由

【第28回】工藤高さん(株式会社MMオフィス代表) 病院の経営に変化が起きている。以前はベッドがあり、医師がいて、看護師がいれば、誰でも経営できたが、現在は全体で黒字となっている病院はわずか3割にすぎない。病院にも経営努力が求められる時代にあって、生き残りには何が必要とされるのか。病院を経営するとは ...

記事全文を読む

 島根県では現在、県内の医療機関で勤務する即戦力の医師を大々的に募集している。医師確保を担当する健康福祉部医療対策課医師確保対策室が重視しているのは、地域事情などに関してできるだけ詳しく情報提供すること。実際に生活することになる地域についてよく知ってもらった上で、長く勤務してもらうのが狙いだ。同室で ...

記事全文を読む

夏の健康管理に気をつけて!

各地で「猛暑日」となる気温35度を記録するなど、今年の夏も暑い日が続いています。体調を崩さない為に夏の健康対策をどうすればいいか、医師に尋ねました。

>>医療番組はこちら


会社概要 |  プライバシーポリシー |  著作権について |  メルマガ登録・解除 |  スタッフ募集 |  広告に関するお問い合わせ